第195話 今の状態からの脱出


 まさかレンコンを掘るので死にかけるとは思わなかった! でも、HP50%回復のレンコンを3つ手に入れたのですよ! なんか沢山あった周囲のハスが一気に無くなって殺風景になったのは少し寂しいけども……今はそんな事よりも重大な問題がある!


「……この埋まった後ろ脚はどうしましょう?」


 湿原エリアに来たばっかの時に発生した問題、再び発生! 今回は敵に囲まれてないし、後ろ脚だけだからまだマシだけど、それでも困った状態なのは間違いない!


ミツルギ : 後ろ脚だけとか、妙な埋まり方をしたなぁ……。

水無月 : これってどうにかなるのー?

富岳 : 正直に言おう。抜け出すのが不可能という訳ではないが、ライオンでは面倒だ。

ミナト : この状況なら敵を誘導してきて、殺された方が早いかなー?

チャガ : まぁここまでの埋まり方と、残りHPを考えたらその方が早いな。もしくは窒息ダメージでだな。


「えぇ!? そうなるんです!? 富岳さん、参考までに脱出方法を教えてもらえませんか?」


 場合によっては死ぬのも仕方ないのかもしれないけど、それはあくまでも最終手段にしたい! まだマップ解放が出来てないのに、2回目のランダムリスポーンは嫌ー!?


富岳 : ここは底なし沼って訳じゃないから、埋まっている部分の泥を全て排除すれば抜け出せる。さっきのレンコンを掘る要領で後ろ脚を掘り出せばいいだけだ。


「それ、どう考えてももの凄く面倒ですよね!? ライオンの前脚で埋まった後ろ脚を掘るって無茶じゃないです!?」


 手段自体は言葉にすると凄いシンプルだったけど、実際にやれって言われたら滅茶苦茶なやつだったー! 底なし沼じゃないって話だけど、そんな脱出手段なら底なし沼で沈んで死んだ方がマシな気がする!?


いなり寿司 : 大型の種族のライオンが、そもそも湿原エリアに向いてないってのもあるけどなー。

G : 小動物系や昆虫系なら、そもそも埋まるという事がない。

こんにゃく : 植物系なら、水に入らなくても根を伸ばして掘れるもんな。

ケースケ : ほほう、場所によって向き不向きがあるって事か。

水無月 : そういう風になってるんだねー!


 うーん、聞けば聞くほどサクッと諦めてランダムリスポーンにするのが楽な気がする!でも、なんとかしたくもなっちゃうよねー。要は埋まってる部分の泥を何とか退ければいい話!


「……これだとどうなりますかね? 『振り回し』!」


 右の後ろ脚で振り回しを発動! なんか強引に蹴り飛ばすような感じになるんだろうけど……これで埋まった脚の脱出を狙うのさ! いっけー!


咲夜 : あ、そういえば振り回しは後ろ脚でも発動出来たっけ!

ミツルギ : そおういう使い方はあまりしないから、地味に忘れてた。

サツキ : どうなる!? サクラちゃんは、どうなる!?


「おぉ、少し動きました! でも、抜け出せてはないですね……」


 蹴る感じには動いたけど、埋まった状態では上手く力が入ってない感じがする。でも泥が巻き上がって水が少し濁って……さっきまで私が窒息しないように足掻いて濁ったままだから、違いが分かんない!


「むぅ、このままランダムリスポーンで脱出というのも気に入らないので、意地でも抜け出してみせます!」


 もうここは効率なんて関係ないのですよ! 私のただの意地として、自力で脱出してみせる!


ミナト : まぁこれなら回数を繰り返せば、脱出出来そうではあるかな?

富岳 : 『振り回し』のLv上げだと考えれば、それはそれでありか。

サツキ : サクラちゃん、ファイトー!


「はい、頑張ります!」


 ふっふっふ、そうですとも! スキルのLv上げだと思えば、これも決して無駄ではないのさー! それじゃ再使用時間も過ぎたし、もう一度やってみよー!


「せーの! 『振り回し』! おぉ、さっきよりも右後ろ脚が動いた気がしますよ!?」


 今回のはちょっと手応えがあった! それに泥が舞って周囲の水が更に濁ったもんね! これなら、本当に自力での脱出が可能かもしれないよ! 意地でもここから脱出してみせるのさー!


いなり寿司 : ちょっと時間がかかりそうだし、雑談しながらでもやる?

ミツルギ : サクラちゃんがそれでも良ければそれもいいかもなー。


「あ、私も再使用時間を待つ必要もあるので、それもありかもしれないですね! それじゃ私が脱出するまでの間は雑談ありにしましょう!」


 私自身でも後ろ脚への反動と水の濁り方くらいでしか変化が分からないんだから、見た目的な面白さは特にない! 私も濁った水面しか見れてないから、雑談は普通にありなのです!


ミナト : あ、それも良いんだけど、サクラちゃん、看破で周囲の警戒も忘れずにねー!

イガイガ : それと、死にかけてるのも少しは回復させといた方がいいぞー。


「はっ!? そういえばそうでした! 『看破』!」


 危ない、危ない! 埋まってる脚の事を気にしてて、その辺は完全にどこかに消え去っていたよ! えーと、回復は……しばらくここからは動けないんだから、そこまで大きく回復させなくてもいいよね! 果物で2割くらい回復させとけばいいや!


「周囲には敵の姿はなしですねー! それじゃ何か雑談といきましょう!」


水無月 : それじゃちょっと質問! サクラちゃんは『立花サナ』さんとはどういう関係ー?

こんにゃく : あ、直球で聞いちゃうのか。

名無しのカカシ : 確かに気になってたとこではあるけども……。


 ぎゃー!? 水無月さん、直球でなんて事を聞いてくるのー!? えっと、えっと!? これはどう答えたらいいの? 私の姉さんですと言う訳にもいかないし、それは私自身が嫌だもん! 誰か、誰か助けの手をー!

 うぅ、事情を知ってるのはやらかした張本人の姉さんしか……あ、同業のプロの方々も見に来ているんだった。その辺の人達は姉さんが泣きついたって言ってたから、知ってるよねー!?


金金金 : 完全に硬直した狐っ娘アバター。

G : ん? そういえば実況外のプレイでなんか話してたっけ。

いなり寿司 : あー、SNSで目立ちまくってた件か。

サツキ : ねぇ、その質問は止めておかない? ほら、サクラちゃんも困ってるみたいだしさ?

ミツルギ : 確かにサクラちゃんを困らせるのはなー。


 困ってるの、姉さんも一緒だよねー!? 多分、内心では相当慌ててるよね、今!? うぅ、今日の状態で完全な雑談の時間を作るのはこういう可能性があるのは全然気にしてなかったー!?


「えっと、えっと!?」


 わー!? 全然言葉が出てこない!? うぅ、こうなったら落ち着く為に無心で脚を動かそう! 『振り回し』! おぉ、さっきよりも更に手応えあり!


ずっと寝ていたい : 気持ちは分かるけど、その辺は切り分けろー。地味にすごい失礼な事を聞いてるぞ。

水無月 : ……え?

咲夜 : 誰と知り合いだったとしても、サクラちゃんはサクラちゃんだぞ!

富岳 : まぁ誰かの関係者だからって理由で見てはいないからな。

チャガ : 確かにそうだな。

ミナト : サクラちゃん、絶対に答えなきゃいけない義務はないからねー! 水無月さん、もし実際にサクラちゃんが立花サナさんと知り合いだったとして、それでどうするの? サクラちゃん経由で紹介でもしてもらいたいの?

水無月 : えっと、あれ!? どうするも何もただ気になっただけで……そんなに困らせるつもりじゃ!?


 なんかミナトさんは状況を分かった上で言ってるような気がする! うぅ、色々と誤魔化そうと動いてくれてたけど、全員が誤魔化されてはくれなかった!? でも、何人かは姉さんの知名度は関係なく、私を私として尊重してくれてるよね。うん、それは素直に嬉しい。


 なんだか私が変に口出さない方が良い流れみたいな気がするから、ここはもう一度『振り回し』! うん、発声無しでもスキルが使えるのはいいね! それに今は皆さんには様子が見えないから丁度いい! おぉ、かなり右の後ろ脚は動くようになってきた! これは次で脱出出来そうな気がする!


真実とは何か : 宝くじが当たった瞬間に知らない親戚や友人が増えるのがお望みか?

水無月 : え? いきなり何……?

ミツルギ : あー、その手のはよく聞く話だな。

真実とは何か : 友人や家族が有名人になったからその知名度を利用して一緒に目立つのがお望みか? 事件の被害者になってプライバシー無視で報道されるのがお望みか? 汝が求める真実とは何か?

金金金 : 友人の知名度を使いたがる人はいるだろうが、誰もが望む訳じゃないか。

イガイガ : 親子ならどんだけ本人が頑張っても親の七光りとか言われる場合もあるしな。

水無月 : どれも嫌ー!? あ、でも私がした事ってそういう事だー!? サクラちゃん、ごめんなさい! 凄い失礼なことを聞きました!


 なんだか真実さんが水無月さんを凄く追い詰めてた気がする。でも、そうやって他の事に例えてくれたら私の心境は分かってくれたみたい! ……なんだかもう私が『立花サナ』と繋がりがあるって事実として認識されてる気もするけど……まぁ事実なんだけど! まさにそこにいるサツキさんが私の姉さんで『立花サナ』だけど!


「今のは聞かなかった事にするので、それでこの話は終わりにしましょう! それじゃこれで片脚は多分脱出です! 『振り回し』!」


 あ、右の後ろ脚が完全に抜けた! よし、片方が抜けたなら、もう一度沈まないように気を付けながら左の後ろ脚も引っこ抜く! えいや!


「やった! 脱出出来ました!」


 ふっふっふ、なんだかんだで脱出成功! とりあえずいつまでも水の中にいてまた埋まるのは嫌だから、即座に陸地へ脱出! 全然私は雑談にはなってなかったけど、なんか私の複雑な気持ちは理解してもらえたみたいだし、良しとしよう!


水無月 : はい、そうします……。サクラちゃん、本当にごめんなさい!

ミツルギ : 今の話の裏で、シレっと脱出の為に動いてたのがびっくりなんだけど。

咲夜 : まぁそれはそれでいいんじゃね?

ミナト : それもそう……サクラちゃん! 回避して!

富岳 : ちっ! 意識が逸れ過ぎて見落としてたか!


「え、どうしたん――」


<サクラ【巧みなライオン【雷】】が死亡しました>

<死亡した為、ランダムリスポーンとなります>


 ちょっと待って!? 何かお腹の部分に衝撃があったと思ったら、HPが全部消し飛んで死んだよ!? 折角死なずに脱出出来たと思ったのに!?

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