第88話 下流へ向かって


 ふっふっふ、敵同士を戦わせるという小技の使い方も分かったし、これからは狙える時に狙っていきたいねー! でも、これをすると経験値が少なくなるみたいだから多用は禁止かも?


「えっと、とりあえずワニの位置まで移動ですかねー!」


 という事で、マップを確認! ふむふむ、赤い印が沢山ある場所だろうから、ここからそれなりにまだ下流の方だね。んー、思ってたより結構距離があるよ。


ミツルギ : というか、この数の敵の中からワニをピンポイントで狙うのは難しそうだな。

咲夜 : あー、言われてみれば確かに……。

チャガ : 深さがある川に飛び込むのはおススメは出来んしな。


「あ、そういえばそうですよね!?」


 あのワニに襲われた場所は脚がつかない深さだし、変に敵を引きつけ過ぎると危険なのは実体験済みだもんね。 ん-、そう考えるとどう戦うのが良いんだろ? 


「まぁ、それは現地に行ってから考えます! 折角解放したんで、これを使っていきますね! 『疾走』!」


 ここで考えてても仕方ないし、とりあえず今は移動だー! さっきは短距離で使っちゃったから問題あったけど、今度は長距離を疾走していくのです!

 それに実況を始めてから1時間は経って、徐々に夕暮れも近付いてきているもんね。出来れば長距離移動は日が暮れる前に済ませておきたい!


「いやっほー!」


 川を眺めながら、全力で駆けていけー! うふふ、この全力疾走、なんだか爽快感! もう少しすれば夕暮れの川岸を走るという状況にもなるから、それも楽しみ!


イガイガ : サクラちゃん、途中で敵が出てきたらどうする?

神奈月 : あ、それは決めておいた方が良いか。


「ワニがいた部分までは出来るだけスルーで行きます! そこまで行けば敵の数は結構いますし、夜も近付いてきてますからね!」


 今日はどう頑張ってもゲーム内の夜までにザリガニを倒すのは厳しそうだから、夜を飛ばす事は無理そうだしね! 多分草原まで戻ってあそこのエリアボスを倒せば飛ばせるだろうけど、夜は夜で活動してみたい!


「夜はまだ一度も活動してないですから、その辺も楽しみなんですよねー!」


ミツルギ : あ、そういやまだ1回も夜にまともに活動してないのか。

咲夜 : 1回目の夜は思いっきり寝たもんな!

金金金 : オフライン版の夜がどういうものか、楽しみだ。

ミナト : あはは、確かにそれなら今のうちに移動の方が良いかもね。

神奈月 : 夜は足元が見えにくくなって、変に敵を踏みつけたりすることもあるからなー。


「あ、そうなんですね!」


 何となく想像してたけど、やっぱり夜の暗さはそれなりに危険な部分はあるんだ。うん、その辺は気を付けていこう!


イガイガ : サクラちゃん、前ー!


「おっと、ネズミですね! でも、今回はスルーです!」


 という事で、真正面から突っ込んできていたネズミを飛び越えてそのまま走っていくのさー! ふっふっふ、ライオンの全力疾走にネズミ如きが追いつけまい!


 おぉ、マップを見たら今のネズミが追いかけてきてるっぽいけど、どんどん引き離してる! いぇーい! これこそ『疾走』の効果! いいね、これ!

 まぁ疾走の使用中には攻撃スキルが使えないから、こうするしかないんだけどね! ゲージを使い切るまで止まれないのもどうかと思うんですよ!


「うーん、疾走中にはまともに攻撃が出来ないのが痛いとこですねー。さっきのネズミも倒せるなら倒したいんですけど……」


ミツルギ : あー、サクラちゃん、別に攻撃が出来ない訳じゃないぞ?

イガイガ : お、カンニングのアドバイスか?

ミツルギ : 普通のアドバイスだよ!

富岳 : あくまで使えないのは攻撃スキルだけであって、それ以外の攻撃手段……つまり、通常攻撃なら問題なく使えるぞ。


「え、そうなんですか!? それならさっきのネズミには、正面衝突で体当たりをしてしまった方が良かったって事です!?」


 ぐぬぬ、確かに攻撃用のスキルは使えなくとも、スキルを使わない攻撃なら制限なんかないよね。……なんか勿体ない事をした気分。

 さっきのネズミは全身に白い模様があったから、明確に成長体だよね……。


富岳 : あー、移動が最優先ならさっきのはあれで良いぞ。敵がスキルを使ってたら押し負ける可能性もあるし、そうでなくても成長体相手じゃ1撃で倒せるわけじゃないからな。

咲夜 : その手段は、スキルじゃなくてステータスの解放をしまくって強化した場合だよな。

チャガ : そうなるな。今のサクラちゃん向きの手段ではない。

富岳 : まぁ、そういう事だ。今やったら、何度も行ったり来たりでぶつかり続ける必要が出てくるしな。


「あ、そっか。要するにスキル頼りじゃない戦闘スタイルでの戦い方になるんですね」


 ふむふむ、そういう事なら割と納得。スキルツリーにはステータスの強化を重点的にしているルートがあるもんね。スキルではなく、通常攻撃を主力にする戦い方でのやり方なんだ。


「何種族かやってから、そういう育成方法もやってみたいですね!」


 今のライオンではそんな戦い方は無理だと思うけど、慣れてきたらやってみたいとこではある! んー、そういう育成の違い方で戦い方が変わるのも醍醐味なのかもねー!


ミナト : お、サクラちゃんのスキルを使わない戦い方ってのも気になるねー?

金金金 : 確かにそれは興味深い。

ミツルギ : あ、サクラちゃん、足元……って、遅かったか。

神奈月 : 一般生物のヘビか。

いなり寿司 : 思いっきり踏み殺されたな。


「あれ!? 気付かないうちに踏み殺してました!?」


 言われなきゃ気付かなかった気もするけど、一般生物のヘビが進行方向の途中にいたみたい。うん、踏み殺しちゃったけど、そういう事もあるさー! ……HP回復用に食べちゃいたかったなー。


「あ、こういうのもありです? えいや!」


 少し先にカエルの姿が見えたから、通りすがりに噛みついてみる! ……むぅ、失敗したー!?


「疾走しながら噛みつくの、難しいですね!?」


 あ、でも、今すれ違った時に気付いたけど、足周りに白い模様があったから外れて良かったのかも? 今のカエルは成長体だったかもしれないよね。


イガイガ : まぁ、そりゃ難しいわ。

咲夜 : 体当たりならともかく、噛みつきは普通に難易度が高いやつ。

神奈月 : その辺は慣れだしなー。


「これは要練習ですねー。よーし、そうしてる間にワニがいる周辺まで到着です!」


 疾走のゲージも丁度使い切ったし、もの凄く良いタイミング! さーて、それじゃワニを……の前に、ちょっとだけ気になったから、聞いてみよう!


「参考までに聞きたいんですが、ミナトさん、今の移動中に成長体ってどのくらいいました?」


ミナト : ん? えっと、川の中は除いて、私が気付いた範囲で15体くらいかな?

咲夜 : え、そんなにいた!? 俺、5体くらいしか見つけられなかったんだけど!?

チャガ : 草花が4体、木が2体、小動物系が4体くらいは気付いたが……。

富岳 : 遠くに3体ほど鳥はいたが……。

イガイガ : ……よく見つけられるもんだ。

いなり寿司 : 観察力すげぇな!?

ミナト : 草花と木と鳥はその数だね。小動物は草むらに隠れてるのがもう2体いたよ。


「そんなにいたんですか!?」


 うわー! 予想以上に多かったし、全然私は見つけられてなかったー!? 私の視界が実況画面になってるんだから、私にも見つけられたはずだよね!? そんなに見落としてたの、私……。


ミツルギ : サクラちゃん、実際に操作しながらと、外野から見てるのじゃ違いが出るのは仕方ないから気にすんな!

咲夜 : 少なくともミナトさんは別格というか、参考例にしてはダメなやつだから……。

イガイガ : 富岳さんとチャガさんも、どっちかというと参考にしたら駄目な方の人だよな。

いなり寿司 : それは確かに……。


「確かにそれもそうですね! その辺は気にしない事にしましょうー!」


 皆さんが見つけられるのは慣れという部分もあるだろうし、そこは気にし過ぎても仕方ないのさー! 咲夜さんでも5体の発見だったんだから、慣れててもそれくらいが普通なはず!


富岳 : ま、俺やチャガさんもだが、ミナトさんは基準にしない方がいいな。

チャガ : それは間違いないな。

ミナト : え、手本にしてくれても良いんだよー?

神奈月 : 実力派のサファリ系プレイヤーは、ほんと別格だからなぁ……。

ミツルギ : その辺はいいとして、ワニを倒していこうぜ、サクラちゃん!


「はい、そうですね!」


 移動途中にどれだけ成長体がいたのかを確認したのは私だけど、ミナトさんの規格外さをより実感しただけだったしね!

 それじゃ川にいるワニをピンポイントで狙っていく方法を考えて……。


「って、思いっきりワニが川岸に上がってきてるじゃないですか!?」


 うぅ、最悪の場合はワニを引き当てるまで片っ端からマップの赤い印の敵を倒していくつもりだったのに、あっさり発見し過ぎだー! 


「なんか見つけ方が釈然としませんけど、とりあえずワニはここで倒します!」


 マップを見た限り、このワニは襲ってきた2体のワニの片方なのは確定! このチャンスを逃す理由はない! ワニ討伐の開始です!

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