第9話 いざ、戦闘開始!


 さぁ、移動をしながら方向転換をしながら走る事をやっていこー! ……そういえば、なんで私は走る事に躓いているんだろう?


「今更なんですけど、なんで私ってゲームで走るだけの事にこんなに手間取ってるんです? このゲームの操作、ややこしくないです?」


ミツルギ : それはそうだけど、一番の原因はチュートリアルを飛ばしたからだー!

イガイガ : まぁそうだよな。普通にチュートリアルをしてたら、初戦までは普通にあるし……。

咲夜 : 多分普通にチュートリアルをしてたら、俺らとのやり取りがこんなに多くなくてもう終わってる。


「あ、原因、私だった!?」


 というか、普通にチュートリアルをやってたらもう普通にゲーム進められてたの!? うぅ、なんであの時にチュートリアルを飛ばしたの、私ー!? 馬鹿なのー!?


咲夜 : うん、これでこそサクラちゃんって感じ。

神奈月 : 見てるこっちとしてもここまで進まないとは思ってなかったし。

真実とは何か : やはりドジっ子……。


「……ぐぬぬ!」


 言い返したいけど、言い返せる自信がない! えぇい、ならば言い返す必要などないのさ! ほら、まだ初配信だし……って、あれー!? いつの間にか視聴者さんの人数が10人まで増えてる!? あ、更に2人増えたよ!?


チャガ : 話題になってたドジっ子配信ってここか。

ミナト : 配信時間30分超えてるけど、今どんなとこー? 早かったら初進化済んじゃった?


「チャガさん、ミナトさん、ようこそー! って、ドジっ子配信ってなんですか!?」


 いくらゲームの配信をして目立って投げ銭を稼いでしまおうと目論んでた私でも、流石に初回からこの状況は想定外だよ!? なに、ドジっ子配信って!?


ミツルギ : まだチュートリアル中……で良いのか? 内容的に?

チャガ : あぁ、ドジっ子配信ってのはそこのミツルギがSNSに書き込んでたのを見てな。『配信初心者のドジっ子がオフライン版のモンエボを初見プレイしようとしてた』って内容で、それなりに広まってるぜ。あれだ、消されたアーカイブのやつ。

ミツルギ : 黙れ、チャガ!

イガイガ : そういやそんなの流れてきてたな。拡散しといたぜ!

ミツルギ : 貴様もか、イガイガ!


「ほほう、犯人はミツルギさんですかー?」


 なるほど、なるほど。初めの配信ミスでアーカイブを残しちゃったアレを、ミツルギさんがSNSで拡散しちゃったんだー。

 SNSってどこのかなー? 後でミツルギさんのアカウント探して監視しとこー!


ミツルギ : ちょっと待って! ライオンの表情が獲物を狙う目つきになってて怖い!? 狐っ娘のアバターでも睨んでて二重に怖い!?

イガイガ : おー、表情の操作って意外と難しいのに、やるな、サクラちゃん。

真実とは何か : 真の想いこそ、困難を可能とする。

咲夜 : という感じで脱線しまくって、殆ど進んでないのが現状だ。ミナトさん、これで状況説明はいいか?

ミナト : 咲夜さん、ありがとうございますー! うん、大体状況は把握。

神奈月 : 全然何も知らないのにチュートリアルをすっ飛ばしたとも言っておこう。

ミナト : いきなり凄い事するね!? これはあれかー。モンエボの実況プレイの皮を被った、実況主とコメント欄とのコント会場だね!


「コント会場じゃないですから!?」


 うぅ、何がどうしてこうなったー!? ドジっ子と呼ばれ、コント会場と言われ、ゲームは中々先に進まない……。

 確かにミツルギさんとかイガイガさんとか金金金さんはコントと呼ばれても仕方ないと思いますけど、私は違ーう!


「もう好きに呼んでくださいよ! うー! がぁー!」


 もうこの何とも言えない気分を、ライオンの動きに乗せて走り出せー! ライオンの私よ、全力で何もかもを吹っ飛ばしながら走るのだー!


金金金 : あれ? 普通に走れてる?

咲夜 : あー、変に考えずに激情のままの走り回って……暴走してるね。

ミツルギ : ちょ、暴走!? サクラちゃん、方向転換出来てる!?


 方向転換? そんなものは知った事じゃないー! 今は鬱憤を晴らす為にひたすら走って風になれー!

 あ、走っていった先に群れから逸れたっぽいシマウマがいる。でも、そんなもん知るかー! シマウマを吹っ飛ばせー、ライオンの私! あ、逃げるなー!


「あのシマウマをミツルギさんだと思って、ぶっ飛ばーす! 逃すかー!」


 ふふん、ライオンでの走り方は分かった! そっか、走るという意識は薄いけど、シマウマを追いかけるというイメージでも走っていくんだ。目的意識をちゃんと持ちさえすれば、それをキャラの動作に変換して最適な動きをしてくれるのが、このゲームの思考操作なんだ。

 

イガイガ : あ、そういう動機。

ミツルギ : えぇ!? そりゃSNSで紹介したけど、そんなにキレる事か……?

チャガ : ドジっ子配信って宣伝されて喜ぶのは、そういう意図を持って演出してるだけだと思うぞ?

金金金 : まぁそれに釣られてやってきている俺らが言う事でもない。

神奈月 : 言ってる人に納得はいかないが、言ってる事自体はそうなんだよなぁ。


 ふっふっふ、ならば攻撃は攻撃をするというイメージでやれば良いとみた! どんどんシマウマまで距離を詰めて……くたばれ、ミツルギさんに見立てたシマウマ! 

 おぉ、追いついたと思ったら飛びかかって爪で引っ掻いて、シマウマの首筋に盛大に噛みついたー! 攻撃の方法とか全然考えてなかったけど、それでシマウマのHPが無くなったー!

 それに攻撃に移った後は移動の事を一切考えてなかったから、ちゃんと止まれてる! やった、ちゃんと操作が出来てる!


「ミツルギさんを仕留めたぞー!」


<サクラ【ライオン】が幼生体:Lv2に上がりました>

<基礎ステータスが上昇します>

<進化ポイントを1獲得しました>


「あ、Lvが上がりましたよ! ミツルギさんの犠牲のお陰です!」


 それに進化ポイント?とやらも手に入ったけど、これは何に使うんだろ? あ、そういえば種族の選択画面に進化ポイントってあったから、アンロックに必要なポイントかな?


イガイガ : ミツルギ、死す……。お前のことは、明日までは覚えておこう。

金金金 : 俺よりも早くに消えるとは……。俺も明日までは覚えとくぜ。

ミツルギ : 勝手に殺すな!? サクラちゃんも、俺を勝手に殺さないで!?


「やだなー。冗談ですよ、冗談。ほら、ミツルギさんだって、私の事をドジっ子って広めたのは冗談……ですよね?」


 いやー、冗談じゃないなら、本当に冗談で済ませられなくなっちゃうじゃないですかー。人の事をドジっ子って広めたら、そりゃねぇ? 私も怒る時は怒るんですよー?


ミナト : あらま、アバターの方の目が笑ってるようで笑ってないね?

咲夜 : これ、怒らせたらダメなやつー!

ミツルギ : お、おう、それはもちろん冗談だぜ……? ちょっと悪ふざけが過ぎたし、ちょっとあれは消してくるわ。

イガイガ : あ、逃げた。

神奈月 : まぁ逃げたくなる気持ちは分かる。

真実とは何か : 真実は……人を傷つける事もある。


 うふふ、これで私のドジっ子疑惑も解消ですね! なんだか勢いだけでシマウマを倒せたし、もうこれは私の無双戦闘の始まりでは!? 


「さぁ、次々と敵を倒していきますよー!」


イガイガ : あー、ちょい待った。さっきの戦闘は勢いで出来てたみたいだけど、ちゃんと説明しといたほうが良いよな?

咲夜 :それは同感。

チャガ : ん? これって、コメントで教えながら進めていく感じか?


 あー、皆さん、普通にここから先も教えてくれる気でいるみたいだねー。でも、私は出来るだけ前情報や攻略方法は知らないでやりたいんだよねー!

 さっきのは必須なチュートリアルをすっ飛ばしてしまってどうしようもなくなったから皆さんの知識を借りたけど、それを把握した今はもう必要はなーい!


「皆さん、教えてくれようとするのはありがたいんですけど、ここからは自力でやってみます! どうしても詰まった時以外は、基本的にネタバレ無しの方向で!」


金金金 : 了解だ。

咲夜 : そういや元々はそういう方針だったな。

ミナト : そなの? それじゃ見守らせてもらおっかなー。

神奈月 : これからどうなるか、期待。

チャガ : ま、そもそもまだどういうのか分かってねぇし、大人しく見とくか。

ミツルギ : おし、消してきた!

イガイガ : お、お役御免だぞ、チュートリアル・ミツルギ!

ミツルギ : その呼び方は止めろ! ……うん、さっきのサクラちゃんの気持ちが少し分かった。って、お役御免? あぁ、ここからは俺らは口出しなしか。


 あ、ミツルギさんがSNSでの書き込みを消して戻ってきたみたいだねー。うんうん、私の複雑な心境を理解してくれて何よりですよ!


 さーて、それじゃどんどん敵を倒してLvを上げていこー! そういえば具体的な攻撃の使い分けの方法が不明なままだけど、まぁやってれば何とかなるよね!

 ライオンだから、噛みついたり、爪で引っ掻いたりすれば何とかなるさー!

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