第6話 戸惑う独特な操作


 初めて操作する種族がライオンになったのは良いけど、全然扱い方が分かんないんですけどー!? あいたた、盛大に転んだなぁ……。まぁ痛覚はないから痛くはないけど、びっくりしたー。


「あはは、地面から顔に突っ込んじゃいました!」


咲夜 : いや、逆逆!

ミツルギ : 地面からは突っ込んでこないから!

神奈月 : というか、顔面から突っ込んで、勢い余って仰向けになってんじゃん!?


「あ、そういえばそうでした!?」


 うー、らしくもなく盛大に転んだから、少し気が動転してしまったのかもしれない。転んだのなんて、春に階段から落ちた時以来だもん。久しぶりだし、そこは仕方ないよね。


イガイガ : それにしても見事な転び方だな。逆にどう操作したらああいう挙動になるのかが知りたい。

咲夜 : というか、アバターも連動して転ぶのは初めて知った。仰向けになるのな、このアバターも。

金金金 : ちっ!


「金金金さん、なんで舌打ちなんです!?」


 え、私が転んだのってそんなに舌打ちしたくなるような事だったの!? ちょっと待って、ライオンで立ち上がってちゃんとやるから! 私を見捨てないでー!


ミツルギ : ……サクラちゃん、出来るだけ早く起き上がってくれ。その、なんだ……。

金金金 : 黙っていろ、ミツルギ!

咲夜 : あー、なるほど、そういう事。

神奈月 : サクラちゃん、あの、アバターだから気にしないかもしれないけど、アバターも転んでるから、色々と見えかけてるぞ……?

金金金 : 神奈月、貴様も敵か! なぜ教える!?


「えっ!? きゃー!」


 嘘っ!? 私の狐っ娘のアバターって今そんなことになってるの!? あ、本当……ぎゃー!? なんか変な光で隠されてるって事は、それが無かったらアバターの下着が丸見えだー!?

 ま、いっか。生身じゃなくてアバターだし、見えないところも無駄に作り込んだしね! これで視聴者数が増えるなら、いくらでも見ると良い! 減るもんじゃないし、むしろこれを使って色々増やす! 


 でもわざとらしいと意味はないから早く起き上がるとして……どうやって起き上がればいいのかな? さっきから起き上がろうとしても、バランスが保てなくて、何度も立ち上がるのに失敗するんだけどー!


「立ーてーなーいー! なに、この操作性! 金金金さん、良い思いをしたんだから代わりにチュートリアルをお願いします!」


金金金 : 断る!

ミツルギ : すげぇ、この状況で断言しやがった。

イガイガ : スケベ野郎か……。

咲夜 : これ、金金金さんは通報しといた方がいいやつ?

神奈月 : よし、しておこう。


 うん、私もここで盛大に断られるとは思わなかった。アバターの姿だからあんまり気にはしないけど、私だってリアルでは女子高生をやっている。……流石にここまで堂々とセクハラみたいな事をされると、ちょっと引きますよ?


金金金 : いや、待て待て待て!

真実とは何か : 今の発言には他の真実がある、そう言いたいのか?

金金金 : そうとも! よく言ってくれた、真実さん!

神奈月 : 一応言い訳を聞こうか。

咲夜 : 通報ボタンには手はかけてあるからな。

金金金 : 怖いよ、お前ら……。理由はシンプル! 俺はオフライン版はやってないからそのチュートリアルは知らんし、オンライン版でも四足歩行の種族は使ったことがない! そもそも教えられる環境にはいない!


「あ、なるほど、そういう事ですか!」


 そういえば金金金さんはオフライン版はやっていないと言っていたもんね。オンライン版がどんなのかは知らないけど、そっちでもライオンみたいなのを操作した事がないから私には教えられないという訳なんだね。うん、それは仕方ない。


ミツルギ : あー、まぁ一応筋は通るか。

真実とは何か : その言葉が、真実であればだがな。

金金金 : もうこれ以上は何も言わねぇ。信じられないというなら、殺れ!

神奈月 : ……どうする?

咲夜 : 判断し切れないな。だがまぁ、やっちゃう?


「あのー、これ、私の配信なので、メインコンテンツを持っていくのは遠慮してもらえませんかー?」


 ライオンは立ち上がれず仰向けになってる状態だけど、ライオンだから良いとして、狐っ娘のアバターは仰向けになった状態で服がはだけちゃってるからねー!?


イガイガ : とりあえずサクラちゃんの現状の放置はまずい。開始早々、公序良俗に反するって事で配信停止にされかねない。

ミツルギ : だな。金金金の処罰は後で考えよう。


「配信停止!? それは困ります!?」


 まだ1円も投げ銭をもらってないし、今回のが配信初回だよ!? そんなゲーム内でキャラの操作をちゃんと出来なくて、それに配信用のアバターの動きが連動して卑猥な配信判定になって、配信停止は絶対に嫌ー!


ミツルギ : とにかくライオンの操作方法のコツは教えるから、一旦アバターの方に切り替えてくれ。それで一応この絵面は解消できる。

神奈月 : あ、その手があったか。

イガイガ : よし、その方向性で行こう。


「はい、わかりました!」


 そっか、そっか。今はゲーム内のライオンの動きに連動してるからおかしな事になってるけど、狐っ娘のアバターでなら普通に立てるし、歩けるよ! ふっふっふ、それくらい、私にとっては朝飯前なのさ!

 という事で、狐っ娘に切り替えー! ふー、とりあえず立ち上がって、服を整えてっと。うん、これでとりあえずは大丈夫。


金金金 : …………くっ。

神奈月 : やっぱり通報しといた方がいいんじゃ?

咲夜 : そうかもなー。

金金金 : ……サクラちゃん、これを。【5,000】

ミツルギ : 賄賂かよ!

イガイガ : ちょ、それってあり!?


 おぉ!? 金金金さんが投げ銭をくれた! それも5000円! よーし、そういう事なら、私はさっきの事は不問にしようじゃないですか。


「さぁ、皆さん、移動方法を教えてください!」


イガイガ : サクラちゃん!?

ミツルギ : え、スルーなの!?


「いえいえ、普通に移動したいだけですしね! それに配信停止にさえならなければ、本当に気にしてませんからね!」


 減るもんじゃないし、増えたし、文句はありませんとも! これがリアルなら流石に無しだし、普通に許しませんけど! だけど、配信停止にならないなら問題なし決まってるじゃないですか!


「まぁゲームをしていきたいので、大真面目にご指導お願いします!」


神奈月 : なんか強引に押し切った気もするけど、まぁ良いか。

咲夜 : まぁ確かに先に進まないしな。よし、チュートリアル・ミツルギ、頼んだぞ。

ミツルギ : おう、任せとけ! って、俺をチュートリアルにすんな!

イガイガ : そんなことを言いつつ、ちゃんと教えるんだよなー。

真実とは何か : それが真実であろう。

ミツルギ : あー、そうだよ、そうですとも! ともかく、先に教えるから、サクラちゃんはそれを聞いてからライオンに戻して動かしてみてくれ。


「はい、わかりました!」


 うふふ、なんだかんだでミツルギさんも他に人も良い人だなー。私1人だったら、ここでプレイをやめていたかもしれないしね。

 チュートリアルを飛ばしたらいけないなら、飛ばせないようにしておいて下さい! 不親切ですよ、そういうとこ! まともに歩けもしないなんて思わないじゃないですか!


ミツルギ : まぁサクラちゃんみたいに、序盤にキャラ操作がちゃんと出来ない人っているにはいるんだよ。だから、一応コツってものは確立はしている。

イガイガ : あー、そういやそんなのもあったな。


「ほうほう、そんなのがあるんですね!」


 なんだ、私みたいに操作できない人もいるんじゃないですか! 開発さん、ちゃんとそこら辺は対処しましょうね!


咲夜 : ……それがあのチュートリアルじゃなかったっけ? あれ、発売後に大幅にアップデートされたとこだよな。ただ、飛ばせないのもそれはそれで鬱陶しいって苦情でそっちにも配慮したやつ。

神奈月 : あ、そういやそうだったな。最初期はもっと簡素で、操作が上手くできない人から、開発陣に抗議はあったっけ。


 あれー!? 開発さん、ちゃんと対処してたっぽい!? これ、チュートリアルをすっ飛ばした私が全面的に悪いやつだー! 開発さん、すみませんでしたー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る