前世靴下

 私はね、昔、靴下になった綿花だったの。要するにまぁ、前世の話ね。


 結局穴が空いてしまって焼却炉行きだったけれど、若苗の頃はまさか私が靴下になるだなんて、夢にも思っていなかった。いつか素敵な花粉を抱いて、種子子供をつくって枯れるのだと信じて疑わなかったわ。けれど、最期はあの炎だった。


 だからあなたは、きっと幸せになってね。そして後悔がないように生きてほしい。ここで私とあなたはお別れだけど、いつだってあなたを想っているわ。

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