第5話 暴かれた素性
ゴロゴロと、小気味いい音が響く。
静かな草原の中、一本の舗装路を一台の馬車が進んでいた。
荷台に使われた木材は年季が入り、ところどころ節が浮き出ている。
車輪が小石を踏むたび、ギィ、と軋んだ音を立てた。
積まれた木箱や、布で包まれた棒状の荷も互いにぶつかり合い、一定のリズムで鳴っている。
そんな揺れる荷台の片隅に、男女が二人、並んで腰を下ろしていた。
「へぇ〜、最近山から降りてきたんだ」黄色の瞳の魔法使い――レヴィは言った。
「そうなんですよ。だからこの辺のことは何もわからなくて」
将斗は頭をかきながら、隣で座っているレヴィに答えた。
今行われているのは自己紹介。素性がバレないように山から降りてきた設定だ。
「村の皆はグラディア王国に行けば何とかなるって言ってたので、ひたすら走ってたんですけど、全然辿り着かなくて」
「オルグラントは広いからね。少しでも街道を外れたら右も左もわからなくなるよ」
「オルグラント?」と思わず口に出す将斗。
レヴィによるとこの草原の名前らしい。
――異世界感ある〜!
改めて転生した実感を噛み締めつつ、将斗の心臓は早打ちしていた。
どんどん変な設定が追加されてしまう前に、早く話題を変えたい。
しかし、彼女のマシンガントークには隙がない。
ローブ姿の寡黙そうな印象とは裏腹に、彼女はよく喋る。
冗談を交えつつ次から次へと話が途切れないおかげで、不意に訪れる沈黙など一切なく、気まずさが生じない。
しかし、相手はこちらの命を狙った敵だ。時折、こちらを覗く黄色の瞳に、心の奥まで見透かされる気がして身がすくむ。
ふと目線を外すと、先ほど目指していた城壁に囲まれた街が視界に入る。
だが、馬車はその街から徐々に離れつつあった。
「あれ? この馬車グラディアに行くんじゃ?」
「行くよ? あんたの見てるあれはセイリウム。グラディアはここから――おじさーん! あとどのくらいだっけ〜?」レヴィは運転手に語りかけた。
「んぁ? あと半日くれぇだな」ぶっきらぼうに答えながら、運転手のおじさんは首に巻いた布でひたいの汗を拭っていた。
「半日だってさ」
「クソボケ神がよ……」将斗は小声で呟いた。
考えなしのポンコツ女神に、少し憤りを覚える。
このただ広く何もない草原のど真ん中に落とされた意味――どういう意図だったのか、将斗には到底理解できない。
その理由についてずっと考えていたのだが、ましてや一番近い街がグラディアではないとは思ってもいなかった。
本当に何のつもりであんな原っぱに放り出したのか。
しかし、いろんな神からスキルを借りた結果、ピンチ真っ最中の彼女だ、多分何も考えていないだろう。
「どーした、将斗?」
「い、いえ。ちょっとね……」
『ランダム』で出たスキルが『超強化』で、本当に良かった。
でなければ、草原を駆け抜けることも、この出会いもなかっただろう。
辿り着いた先で「グラディアはここから半日かかる」と告げられた日には、膝から崩れ落ちていただろう。
自分の運の良さには感謝するしかない。
神は恨む。
「ねぇ、村ってもしかしてカドネール?」
「カドネールってのは……なんですか」
「山の名前。あれあれ」レヴィは遠くの山を指差した。
その指は遠くの灰色の山を刺していた。周りの山脈は緑が生い茂っている分、目立っている。
「……あぁー、そうかもしれないです。そういえばあの灰色の山を降りてきたような気がするような〜」
そう答えながら、将斗は内心で焦っていた。背中を汗が伝い、ワイシャツが張り付く。先刻の戦闘で草むらを転がった時に付いた土と混ざり、不快感が増している。
「そ、じゃあさ――」
「とっところで!」
「うわ、何?」
将斗は心の中で「今だ…!」と小さく呟き、無理やり気持ちを奮い立たせる。会話の主導権を握るチャンスを逃すまいと、全神経を集中させた。
「さっき俺に撃ってきた、火とか氷って……なんですか」
「魔法……だけど」
レヴィは不思議そうな顔をしていた。この世界では魔法は知っていて当然のことなのだろうか。将斗は不利な話題を出したかもしれないと、少し焦る。
「魔法、知らない?」
レヴィが問いかける。ここで嘘を重ねるのは危険だと将斗は判断した。
「知らないわけでは……でも、見たのは初めてです」
ふーん、とレヴィは頷き、珍しく口を閉じた。将斗は、この答えは少し不自然に響いたかもしれないと考える。
「やってみる?」
「え?」
話題転換のつもりだったが、思ってもみない提案が来た。
目を丸くしてる将斗にレヴィが再び問いかけてくる。
「だから、やってみる?」
「やりたい! やりたいです! できるんですか?!」
間髪入れずに答える。魔法が使えるなんて言われたら、食いつかない理由がない。
何度一人暮らしの部屋で呪文を唱えただろう。ある日突然力に目覚めることを夢見ていたが、結局スマホで死ぬまでそんな奇跡は訪れなかった。
しかし今その機会が――
「待って待って。まだ使えるかはわかんないから」
「え……」
「すっご、さっき追い詰められた時よりすごい顔してるよ」
レヴィが心配そうに覗き込む。
「だって使えないこともあるんですよね。もし使えないってなったら……」
「うわ、卑屈〜」レヴィは呆れたように目を細める。
「やってみないとわかんないでしょ」
そう言って彼女は将斗の正面に座り直した。ローブの裾がふわりと揺れる。
「魔法を使うには、体の中の『魔力』を操らなきゃいけないの。それができるか、まず見てみよっか」
「どうすれば?」
「手、出して」
レヴィが両手を差し出した。
白く整った指先。指輪に嵌められた赤い宝石が、陽の光を受けてかすかに瞬く。
将斗は恐る恐る手を上げた。
レヴィが「ん?」と顎を動かして促す。だが、女性に触れたのは中学の体育以来――そんな自分に、この距離感は刺激が強すぎた。
突然始まるふれあいイベント。
頭の中が真っ白になる。
将斗の葛藤など知らぬ顔で、レヴィは自ら彼の手を取った。
「アッ……ちょ、そ、そ――」
「じっとして」
言われるまでもなく、将斗の体は岩のように固まっていた。
目の前で、レヴィがゆっくりと瞼を閉じる。
整った顔立ち。どこか幼さを残しつつ、艶やかな大人の色気もある。目尻のほくろが、それを際立たせていた。
視線を下げた瞬間、胸元の隙間が目に入り――心臓が跳ねた。
咄嗟に目を閉じる。
「目閉じて」
「すいません、閉じてます!」
「……?」
なぜ謝られたのか、レヴィには理解できない。
気まずさを誤魔化すように、将斗は慌てて口を開いた。
「あの、魔法使える人って……どのくらいいるんですか?」
目を瞑ったまま将斗は聞いた。
「1000人くらいいたら1人かな」
「狭き門だな……」
「感覚さえ掴めば皆できるんだけど、こればっかりは向き不向きがあるみたいだから」
「なんか俺の中にも魔力があるみたいな言い方ですね」
「そこから?! 常識だよ?!」
「村の皆教えてくれなかった……」
「一回皆で降りてきた方がいいよ。ほんとに……」
瞼の向こうで、レヴィが心底呆れているのが伝わってくる。
彼女の手は、温かかった。
指先からじわりと何かが流れ込んでくるような――そんな錯覚がする。
静かにレヴィが続けた。
「魔力は生き物すべての体を流れてるの。筋肉を動かしたり、息をしたり……そういった動きに微量に消費されてる。でも、それを操って魔法として使えるのは一部の人間だけ」
将斗はごくりと唾を飲み込んだ。
魔法を『使える人』と『使えない人』。その境界に今自分は立っているのだ。
「だから今から、あんたの魔力を無理やり動かす。あんたはその感覚を追いかけて、自分のものにして」
「すげぇ難しいこと言う……」
レヴィは小さく息を吐き、指先に力を込める。
その赤い宝石が、淡く光った。
「じゃあ、やるよ」
「よ、よろしくお願いします」
将斗は息を呑む。
手のひらから伝わる微かな震えが、まるで心臓の鼓動と共鳴するように感じられた。
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「……」
「ねぇ」
「……」将斗は目を瞑ったまま集中を解かない。
「ねぇ」
「……」
「ねーぇ」
レヴィが頬を突いてきたので、将斗は思い口を開いた。
「なんですか」
「そろそろやめない?」
「今いいとこなんで! 喉のこの辺まで出かかってるんで!」
「もう何も出ないでしょ」
「出る! 絶対出すんで!」
レヴィとの触れ合いイベントを経て、将斗が得たものは、体の奥で、あたたかいものが流れているという感覚だけだった。
それはレヴィの手から流れ込み、腕を伝い、胸を経て、頭の奥を抜け、反対の腕へと流れていく。
足には届かない。けれど逆にそれが流れの存在をはっきりと感じさせた。
今は、意識を集中すれば足にもそれが通っているのがわかる。
筋肉を動かすたびに、微かに脈打ち、全身を巡っている。
胸の中心──心臓のすぐ近くに、それが“湧く”場所がある。
そこまでは追える。
けれど、操ることはできない。
掴もうとすると逃げ、光の粒のように散っていく。
「もうずっとそうしてるじゃーん」
「なんか流れてるものがあるのは掴めてるんで!」
「……それ、血じゃない?」
……そんなはずない。
まさかそんな。
「……魔力ですよ! 絶対魔力! 全身流れてるし!」
言葉に勢いはあったが、その声は震えていた。
「血じゃない?」
「胸のとこから湧いてる感じもするんで!」
「血じゃない? 心臓なんじゃない?」
「うああああああああああああ……」
将斗はのけぞり、そのまま荷台の角に頭を打ちつけた。
ゴン、という鈍い音が響く。
頭を押さえ、縮こまる将斗。
その頭に、レヴィの手がそっと伸びた。
「私、傷を癒す魔法は使えないんだよね」
撫でる手つきは不思議と優しい。
「向き不向きってあるからね、諦め――」
「嫌だ! 魔法使いたいんですよ! なんかないんですかレヴィえもん!」
「誰それ!? こればっかりはどうしようもないの! 諦めな!」
「嫌だぁぁぁぁぁ!」
将斗は床に倒れ込んだ。
信じたくなかった。念願の異世界転生で、魔法が使えないなんて。
――近頃の異世界転生で魔法が使えない者などいない(渡将斗調べ)。
よりによって自分が、その例外になるとは。
感覚は掴んでいたはずなのに、血と言われれば確かに血のようにも思える。
はぁ、とレヴィはため息をつき、のそりと立ち上がる。
「おじさーん、また停まってもらっていーい?」
「またかい? じゃああの辺に停まるかねぇ」
そんなやり取りのあと、数分もせずに馬車が止まった。
「そろそろ起きなよー」
レヴィの声とともに、軽い足音が荷台を離れていく。
将斗はゆっくりと上体を起こした。
長時間座り続けていたせいで、足が痺れてうまく立てない。
びり、と電流が走るような痛みに顔をしかめながら、どうにか馬車の外に出る。
停車した場所は林のそば。並木の陰が心地よく、馬も休んでいる。
近くにレヴィの姿はなく、運転手のおじさんが馬の首をブラッシングしていた。
「すいません」
「お、おう、どうした」
将斗の声かけに、おじさんは少し肩を揺らした。
驚いたように振り向くが、どこか気まずそうに目を逸らす。
その反応に将斗は小さく首をかしげた。何か失礼なことでも言っただろうか。
レヴィの行き先を聞こうとしただけなのに――
「あのな」おじさんの方から切り出してきた。
「すまんな兄ちゃん。あの姉ちゃんに魔法を使わせたのは、俺なんだ」
「えっ? そ、そうなんですか」
意外な言葉に、将斗は思わず目を丸くした。
「すげぇ速さで近づいてくるもんだから、盗賊かなんかだと思ってよ」
――そういうことか。
ようやく合点がいった。
レヴィとは気さくに話す運転手だが、将斗には視線を合わせようとしなかった。それが「警戒」だったのだとわかる。
レヴィの方も話してみれば悪い人ではない。
だからこそ、あの突然の攻撃には納得がいかなかった。
単なる気持ちのすれ違い――それだけのことだったのだ。
こっちは馬車にただ近づきたかっただけで、おじさんは逃げたかっただけなのだ。
「最近この辺りじゃ盗賊が出るっていうからよ。姉ちゃんに乗せてく代わりに、護衛をお願いしてんだ、すまねぇな」
「いえ、俺も考えなしに突っ込んでったのが悪いですし」
「ただな……思ってたより本気でやってくれてな。あんな全力でやるとは……ほんと死んじまったかと思ったよ」
「それはマジでそう」
将斗自身、なぜ生きているのか不思議なくらいだった。
一歩間違えれば、丸焼きか、潰れているか、真っ二つになっていたはずだ。
「にしてもあの姉ちゃん、もしかしたらすげぇ魔法使いかもしれねぇな」
「そうなんですか」
「そらそうだろ。よくは知らねぇが、ありゃ中級か上級魔法だ。あの距離であれだけの威力を出せる奴なんて、そうはいねぇ。しかも属性を三つも使ってたろ?」
――属性。
その言葉に、将斗の異世界モノセンサーが反応する。
「あんたらの話ちょっと聞いてたが、やっぱ兄ちゃん魔法に詳しくねぇんだな。教えてやるよ」
おじさんは得意げに胸を張った。
「魔法にはな、五つの属性があるんだ」
「おぉ、異世界っぽい」
「まず火。それに水、風、あと光と闇だ」
「雷と土が無い系だ……!」
目を輝かせる将斗に、おじさんは「聞け聞け」と言わんばかりに手を振る。
「普通はな、一人一属性しか使わねぇ。ひとつの属性を極める――それが基本中の基本だ。二つも三つも広げようとしたら、どれも下級止まりでちっとも強くなれねぇ」
「その下級ってのは、強さのランクみたいなもんですか?」
「ああ。魔法の強さには上・中・下の三段階があってな。下級なら、火属性で灯りをともすとか、草をちょっと燃やす程度なんだが……姉ちゃんのあれは中、いや上級かもしれんな」
おじさんが感心した様子で言葉を続ける。
将斗は曖昧に相槌を打つ。
実際のところ、魔法の格付けなんてまるで分からない。
ただ納得はできる。あの魔法の威力で下級だったら上級はとんでもないことになるだろう。
「前聞いた話だが、魔法使いは毎日一つの属性を練習して、火が出る、風が出るって感覚を頭に覚えさせるんだ。そういう鍛錬を繰り返して中級の魔法が使えるようになるのが姉ちゃんくらいの歳なんだってよ。でも姉ちゃんは3属性使ってるしよ。しかも氷ってのは初めて見た、ありゃ水属性の上級魔法なんじゃねぇかな」
「結構すごいんですね……」
「結構ってレベルじゃねぇな。ありゃどっかの王国専属の魔法使いでもおかしくねぇ」
王国専属という言葉に将斗は聞き馴染みはないが、国に選ばれるという意味ではただものではないということは伝わった。
「ところでレヴィさんはどこに?」
「ああ、今は星を見る?時間らしい」
「星?」
「ああ、なんか星の位置で占いやってるらしくてな、ちょくちょくこうやって停まるたびに離れたとこでなんかぶつぶつ言いながらやってんだよ」
小難しくて何してんのか分からねぇけどな、と言いながらおじさんは馬の方を見て手を止めた。
「あー、なんか星占術師ってやつですか」
「そのセイなんちゃら〜は聞き馴染みねぇな……。興味あんなら兄ちゃんよ」
おじさんは軽く笑いながら、馬の装備に結びつけていた紐を解き始めた。
「見てくるついでに伝言頼んでいいか? ここんとこにガタが来ててな。交換するから、ちょっと時間かかりそうだって伝えてきてくれ」
そう言って顎をしゃくる先を見ると、荷台と馬を繋いでいる金具にひびが入っていた。紐がいくつも通されていて、素人目にも厄介そうな作りをしている。
「わかりました」
将斗はうなずくと、おじさんにレヴィの向かった方向を教えてもらい、草の生い茂る木立の間を縫うように歩き出した。
この世界の木々は将斗の世界と変わりない。ゴツゴツした木肌と緑色の葉、なんの変哲もない普通の木だ。
しかし、異世界にいるからだろうか、枝々の間から差し込む光が幻想的に感じられる。
その光で照らされた地面に踏みつけられた枝や草木が見える。レヴィはここを通って行ったようだ。
「――ってこと―――……より―――――……でしょ」
木々を抜けた先、少し開けた草原の上でレヴィが何かを口にしていた。
風に乗って断片的に届く声は、呪文とも、誰かとの会話ともつかない。
その表情は真剣で、まるで見えない相手と語り合っているようだった。
将斗は思わず足を止めた。
興味に駆られて一歩踏み出す――が、乾いた枝が小さく折れる音が森に響いた。
その瞬間、レヴィの視線がこちらを正確に捉える。
「――……どうしたの、将斗」
耳のあたりに挙げていた右手を下ろし、レヴィは静かに振り返った。
その頭上には、淡く揺らめく靄のような光が漂っている。
「星を見てるって聞いたのと、おじさんから伝言です。馬車の修理で、ちょっと時間がかかるって」
「そ、ありがと」
レヴィは軽く息をつき、埃を払うように手を振った。
その仕草に合わせるように、靄はふっと消え、草原の風の中へ消えて行った。
「ねぇ将斗、そんな畏まらなくてもいいよ? 言葉習ったばっかの人みたい」
「え?」
「敬語はいいよってこと。歳、そんなに変わらないでしょ」
レヴィなりに歩み寄ってきてくれたのだろう。
タメ口でいいよという優しさ。
けれど将斗の体は、ぎこちなく強張った。
なぜなら――
「そ、そうで……そうか、そう……なんだ、気をつけ……るわ」
我ながらひどい。
いざ距離が縮まると、どう話せばいいのか全くわからない。
口の中で言葉がバウンドして、変なところで止まる。
「ブフッ!」
レヴィが腹を抱えて吹き出した。
「へっ、下手すぎっ! さては経験ないな?!」
「う、うるさいっ! しょうがないだろ、山から降りてきたばっかなんだから!」
「それにしてもだよ、アッハハハハハハハ!」
「痛っ?! 笑いすぎだって!」
レヴィの笑い声が森の奥に響く。
将斗は頬を赤らめながらも、なぜかその声を心地よく感じていた。
レヴィは面倒見があるというか、姉がいたらこんな感じかと思わせる。話しているとどこか安心感があるのだ。
初めこそあのような出会いだったが、異世界で最初に出会ったのが彼女でよかった。
「ってかレヴィ、星は? 星で占ってんじゃないの?」
「ごめん、今日はもう終わっちゃった」
「そうか……」
「そう残念だらないで、未経験くん」
「おい」
爆笑し続けるレヴィに、将斗は小さく舌打ちした。
友達すらいない俺がどう経験を積むと言うのだろうか。
「あのレヴィさん……じゃなくて、レヴィ、星ってどうやって見てんの? 真昼間だけど」
「んー……魔力を飛ばしてちょちょいって感じ」
レヴィは軽く手を振りながら適当に答え、将斗の横をすり抜けて元来た道へ戻り始めた。
「え、戻んの? まだ修理中って」
「荷台でゆっくりしてたらいいでしょ。行くよー」
レヴィは軽い足取りで歩き続ける。
風が髪を揺らし、木漏れ日が肩を照らした。
マイペースな人だなと、将斗はその背中を追いかけようとして――ふと足を止めた。
何か、引っかかる。
さっきレヴィの頭上に見えた靄の残像が、まだ目の奥に焼きついていた。
あれはいったい何だったのか。
(魔力飛ばしてちょちょいって感じ――)
星を見るには魔力が必要らしい。
魔力がどう作用しているのかはわからないが、もしかして飛ばした魔力というのは、先ほどレヴィの頭上に浮かんでいた靄のことだろうか。
(前聞いた話だが、毎日一つの属性を練習して、火が出る、風が出るって感覚を頭に覚えさせるんだ)
将斗の脳裏におじさんの言葉が蘇る。この世界の魔法使いの基本だ。
魔力を操り、火を出す、風を出す。属性は一つに絞り、ひたすら感覚を覚えさせる。
将斗は魔力を扱う時、ただひたすら魔力の動きを追っていた。追いかけて掴もうとしていた。しかし、漠然と掴もうとしていただけで、明確な方法は考えていなかった。
魔力を火や風に変えることを『操る』と言っていたのではないだろうか。
「行くよー?」レヴィの声が聞こえたが、将斗は動かなかった。
目を閉じ、再び体内を巡る魔力らしき感覚を思い出す。
まだ何かが体を巡っている。間違いない、レヴィの腕から流れ込んできたものと同じ感覚だ。
これは血ではない、間違いなく魔力のはず。
これを操り――
「……違うか」
操るのではない。将斗には魔力を自由に操る技術はない。馬車の荷台でできないことはわかっている。
「とりあえず火だ。火ぃつけよう」
将斗は特別な人間ではない。
そこで魔法使いの基本にならい、一つの属性に絞った。
「――えっと……」
将斗は今まで聞いた言葉を思い出す。何かがヒントになるはずだと。
感覚は掴んでいる。できるはずだ。――と思うのは将斗の願望でしかないが。
(魔力は生き物すべての体を流れてるの。筋肉を動かしたり、息をしたり……そういった動きに微量に消費されてる)
消費という表現はまるで食品のカロリーのようだ。
筋肉を動かす燃料として魔力は『消費』されている。
では今までその『消費』を意識していたか――いや、していない。
「魔力を使って摩擦を起こして火を出すって考えてたけど……違うか……魔力を使うのは別に意識しなくてもいいんじゃないか」
将斗は頭を振った。
「だから――」
目を開き、右手を見つめた。
「火は出るものって考えれば、勝手に後から魔力が消費されるんじゃ……」
「何してん――」レヴィが将斗の肩越しに右手を見た。その瞬間――
パチッ。手のひらで火花が散った。
それは線香花火の火花のひとつ程度の大きさだったが、間違いなく火が出た。
着火するようなものは手のひらの上にはない。
だが確実に今、小さな音と共に火花が散ったはずだ。
「……ちょ、これ」将斗は振り向く。
後ろでレヴィが目を見開いていた。
「見たよな!」
「見た……」
「なあこれ、今さぁ! 手! 火!」
「……」
レヴィは唖然としていた。
将斗が手から火花を散らしたことが、予想外だったのだろう。
魔法の師として感動するのかと思ったが、彼女の反応は違った。「はぁぁ……」とため息をつく。
「ねぇ、『
「ファイア? 火……じゃね? なんで英語?」
するとレヴィは将斗の腕を掴み、前方斜め下に向ける。
「手から火の玉が出ることを考えて、『
「え? 火の玉を?――」
将斗は言われた通り、手のひらから火の玉が出る場面を想像する。
「『
その瞬間、手のひらから火の玉が放たれ、草原の一部を焼いてゆっくりと消えた。
***********************************
日が傾き、あと数刻もすれば空は夕焼けに染まる。
草原を走る馬車の荷台から、ポン、ポンと小さな火の玉が転がり落ちていった。
「見てレヴィ! まだ出る! 『
「どんだけ嬉しいのよ……って、ちょっと?! 火事になるってば!」
レヴィは耳を抑えながら手を伸ばし、馬車の後方へ向ける。
その掌から勢いよく水が放たれ、将斗の火の玉を一つひとつ正確に打ち消していった。
「……ごめん」
「そんなに撃ったら魔力無くなるよ? 見てみたら?」
レヴィが軽く指を振る。ステータスウィンドウのことを言っているらしい。
将斗だけが使える特別なものだと思っていたが、そうではないと知って肩を落とす。
立てた指で空に二度、円を描くと――
薄紫の四角い板が空中に浮かび上がった。
画面の中、謎の青い棒が半分以下に減っている。
初めは満タンだったことから、それが魔力の残量であることは明らかだった。
「どう?」
「半分以下だった」
そう答えながら、将斗はウィンドウの角を軽く叩いた。
ウィンドウはくるりと回転し、レヴィの方を向く。
「ちょっ――!」
レヴィは反射的に目を逸らした。
「何してんの! 大事な情報、簡単に見せちゃダメでしょ! 変態!」
「変態?! そこまで言う?!」
気軽に見る分にはいいが、どうやら人に見せるのはマナー違反らしい。
大した情報は載っていないはずだが、この世界特有の文化だろうか。
「半分以下か……まぁ、まだ数発しか撃ってないしね」
「これ上限増えたりする?」
「うん。使ってるうちに少しずつ増えてくよ」
どうやら魔力量には個人差があるようだ。
将斗はその後、休憩を終えて再び走り出した馬車の荷台で、ひたすら火の玉を撃ち続けていた。
まるで初めて鉄砲のおもちゃをもらった子供のように。
火の玉といっても、地面に着弾すれば一瞬で消える程度。
レヴィの放った魔法と比べれば、まさに天と地の差だった。
威力が弱ければ消費魔力も少ない――とはいえ、撃ち続ければ青いゲージは着実に減っていく。
減っている感覚はないが、尽きた時に何が起こるかもわからない。
もし戦いに使うような場面があるなら、こまめにステータスを確認する必要がありそうだ。
――もっとも、今の威力では『戦い』なんて到底無理だが。
「しっかし、急に使えるようになったんだよな……」
将斗は手のひらをじっと見つめる。
「私が聞きたいけど……魔法を使う感覚を理解したから、としか言えないかな」
「感覚か……俺は、『火は出るもので、魔力が後から消費されるもの』ってイメージしたんだ。火は出るのが当たり前、みたいな」
「ふーん。でも間違ってはいないかも」
「ほら、筋肉を動かすときって魔力の消費なんて意識しないだろ? だから――」
将斗は自分が魔法が使えるようになるまでの思考プロセスを語り始めたその時、レヴィがふと馬車の前方を見た。
「あ」
「ねぇ、見えてきたよ」
その声に従い、将斗も馬車の前方を見た。
舗装された道の先、街が見える。城壁に囲まれたその中で、白く高くそびえる城がひときわ目立つ。
セイリウムの街より城壁も広く、規模の大きさが一目でわかった。
「もしかして、あれが?」
「そう、グラディア王国。あと数刻で着くかな。日が落ちる前に到着できそう」
将斗の目的地、グラディア王国が目の前に迫っていた。
本来の目的は、
あの街のどこかに、彼はいるはずだ。
特に目を引くのは、一番大きな塔。城壁は質素だが、塔だけは豪華に作られており、その存在感は圧倒的だった。
「あのでっかい塔は何?」
「――城だよ。王様の城」
王様の城。2年前、王になることを宣言した雄矢が今いるとしたら、あそこに違いない。
塔を見たレヴィの雰囲気が、ほんの少し変わったように感じたのは気のせいだろうか。
――いや、変わったのは将斗が初めて魔法を使ったあの時からだった。あの瞬間以降、レヴィの口数は少しずつ減り、荷台に流れる沈黙も増えていたのだ。
今もレヴィは馬車の外を黙って眺めている。
将斗も気まずさから目を逸らし、馬車の外を見た。
遠く、別の馬車が見える。荷物を運ぶ人の姿もある。
街道は将斗が通ってきた一本だけではなかったらしい。
辿っていくと、グラディア王国の近くで複数の街道が合流し、一つに収束。そのまま王国の正面、人の何倍もありそうな巨大な門へと繋がっていた。
その途中、四人組の姿が目に入る。
腰に剣を携える者、聖職者のような服装の者、鎧を着た者、杖を手にした者彼らは並んで歩いている――将斗の異世界センサーが強く反応した。
「レヴィ、あの四人組は何?」
「んー……冒険者」
「すげぇ! いいなぁ!」
こういうのでいいんだよこういうのでと、将斗は思わず頷いた。
「いいもんじゃないよ。稼ぐためには依頼がなきゃダメだけど、何件もこなさないとまともに生活できない」
「いいなぁ!」
「魔王が倒された今、一番稼げた魔獣討伐の依頼も減ってるらしいし」
「いいなぁ!!」
「装備は自分で揃えないといけないけど、そのためにはお金が必要で、お金を稼ぐためには依頼をこなさないといけない。でも依頼をこなすには装備が欲しい。皆どこかを切り詰めたりしてギリギリでやってる」
「いいなぁ!!!」
「今するなら商人の方がもっと稼げるんだよ」
「いいなぁ!!!!」
「なんか伝わってなくない……?」
伝わっている。将斗の「いいなぁ!」は、彼女の話のリアルさへの感動だった。
物語の向こうの存在が、目の前で息をしている。苦労もあるだろう、でも確かに、生きている。
レヴィと一緒にいることで、将斗はその現実を肌で感じることができた。
「最っ高……」
「どこがよ……?」レヴィにはその良さがわからないらしい。
「レヴィも冒険者?」
「私……まぁ、そんなところかな……」
「おじさんがレヴィは結構すごい魔法使いって言ってたぞ。王国専属の魔法使いかもって」
「まぁ、そんな時もあったね」
「マジ? やっぱすごいのか」
「全然。私はまだ弱い」
レヴィはずっと外を見つめていた。
そして静かに言った。
「上には上がいるの」
それだけを残し、何も語らなかった。
やはり頭の中では何かを考えているらしい。
将斗もこれ以上話すのは控え、馬車の床を見つめていた。
「上には……上がね――」
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グラディア王国の近くで、馬車は止まった。
城門前では検問のせいか行列ができており、馬車はその最後尾に並ぶことになる。
近くで見れば、城壁は想像以上に高い。元の世界の電柱よりも軽く大きく、15メートルはありそうだ。
行列には牛車や馬車、先ほど見かけた4人組の姿もあり、皆口々に話して騒がしい。
荷台にいる将斗の周りは、そんな喧騒とは対照的に静かだった。
「……将斗は」長く続いた沈黙を、レヴィが破る。
「この街に何しに来たの」
「それは――」
突然の問いに将斗は一瞬答えに悩んだ。
「出稼ぎ……というか」
「その山から降りて来たっていう設定の方はもういいよ」
その一言に、将斗は思わず硬直する。
自分が作り上げた山から降りてきたという説明は全部見抜かれていたのか。口には出さなくても、心臓が小さく跳ねる。
内心では焦りと同時に、軽い戦慄もあった。レヴィの観察力の鋭さを、甘く見ていた自分を後悔する。
「せ、設定ってなんだよ……」
誤魔化そうと小さな声が思わず漏れる。
頭の中はごちゃごちゃと混乱していた。
将斗は自分の視線を一瞬床に落とし、何とか平静を装おうとしたが、胸の奥のもやもやは簡単には消えない。
「あんたが降りて来た山はカドネールって言ったよね」
「そうだけど、それがどうしたんだ?」
「カドネールは『死の山』って意味があるの」
一瞬で全身が冷たくなるのを感じた。
「数百年前に噴火した後からずっと植物も育たないし、立ち入ったら最期、帰ってくる者がいない。だから『死の山』」
将斗の胸が、急にざわつき始めた。
会話の流れに合わせて、カドネールから来たことにしていた。
レヴィが人が来るとしたらカドネールだと、そう言うからそれに乗っただけだった。かまをかけられていたらしい。
彼女の鋭い視線が、まるで自分の内面を透かしているかのように感じられ、思わず息を呑む。
自分の軽率さを後悔する感覚と、同時に背筋を冷たいものが走る。
山の名前を口にしただけだが、ここまで危険な意味を持つとは思わなかった。
「……騙した、ってこと?」
「それはお互い様じゃない? でもこれであんたが嘘をついてたってのがはっきりしたね」
「なんでそんな……」
「周り見なよ、この『世界』に黒髪に黒目の人間はそういない」
行列に並ぶ人々の髪は、茶色や金色、赤や青と多彩だった。瞳の色もまた同じ。レヴィの言う通り、黒髪に黒目の者は一人も見当たらない。
「探せばいるかもね。でも、どんな文献を見ても、話を聞いても、黒髪黒目は二つ隣の大陸にしかいない。それにその大陸は外交を絶ってるから、ここにいるのはかなり珍しい」
そして、レヴィは将斗の服装に目をやる。
「それで、その服装……私が何を言いたいかわかる?」
そう言って彼女は立ち上がった。
将斗も馬鹿ではない。彼女の言いたいことはわかる。シャツとジーパン。合成繊維で作られた現代的な服装は、この世界にはない珍しいものだと言いたいのだろう。
おそらく彼女は、将斗が異世界から来た人間だということを見抜いている。
レヴィは手のひらを将斗に向け、警告するように差し出した。
まるで銃口を向けられているかのようで、将斗は身動き一つできなかった。
「『ここ』に何しに来たの」
「――?!」
レヴィの目が鋭く光った――そんな気がした。その瞬間、体中にぞわりとした感覚が走る。胸の奥から頭の先まで、嫌な予感が浸透していく。覚えがある、あの嫌な感覚――あの時と同じだ。
「お、俺は……っ?!」
言葉が、理性とは別に口からこぼれ落ちる。
頭の周りにかかる靄のような感覚が脳内をかき回し、思考をまともに保てなくしていた。
「このグラディア王国にいる――」
それは魔力の仕業だった。レヴィの手から流れ込む魔力が脳へ直結し、知らず知らずのうちに口を動かしている。
魔力は、こんなふうに意識を操ることもできるらしい。
体は硬直し、視界の端がかすみ、意識の輪郭がぼやけていく。このままでは、自分でも知らぬうちに全てを話してしまうかもしれない。
――なんで……これまで馬車の中で、楽しく喋ったりしただろうが
手を伸ばせば触れられる距離にいて、魔法のことだけではない、互いに冗談を言い合っていたのに――それがもう、遠い出来事のように思える。
問いただしたい気持ちが胸を締めつけるが、体は動かず、口も思うように動かない。
頭の中で靄のようにかき回される感覚が、意識の隅々まで侵食してくる。
今、この場で理性を失えば、すべてを吐き出してしまうかもしれない――その恐怖だけが、はっきりと肌に突き刺さっていた。
「――っ」
魔力の流れに意識を向けると、頭に流れ込むはずの魔力が、まるで堰き止められているかのように首の辺りで動いていない。
その代わりに、レヴィからの魔力が頭を覆っていた。
これがこの魔法の仕組みだろうか。あの時わからなかった現象も、魔力を感じ取れるようになった今なら少し紐解ける。
ならば――頭に自分の魔力を流し込み、レヴィの魔力を押し返せば、この催眠術めいた魔法から逃れられるかもしれない。
「何してんの? 無理でしょ、あんたは魔力を操れない」
将斗の抵抗を察したのか、レヴィは淡々と告げる。無駄だと言いたげな口調だ。
意識が朧げになりそうな中、将斗は必死に考えを巡らせる。魔力を自在に操れなくても、集めることはできる――何度も魔法を撃った経験で、手に魔力が勝手に集まってくることを覚えていた。
拳に力を込め、頭で魔法を使うイメージを描く。
魔力が勝手に体のあちこちから頭へと渦を巻くように集まり始める。
「鈴木雄矢から――」
――パチッ 頭のあたりで火花が散った。
「っあ、解けたぁ……」
緊張がいきなりほどけ、将斗は荷台の縁にもたれかかる。
かかっていた靄は跡形もなく消え、頭の中が鮮明に冴えていく。
顔を上げると、レヴィは手を下ろし、ただ静かに将斗を見つめていた。驚く様子はなく、まるでこの結末も予測済みであったかのようだ。
「その魔法、めっちゃ怖いからやめて欲しいんだけど」
突然の催眠のような体験にまだ心臓が高鳴っていたが、将斗の心の奥底には、少し前の馬車での気楽な関係に戻りたいという気持ちがあった。
久々に友達という関係を持てた気がしていたから。
だから、無理にでも冗談めかした口調で、レヴィに声をかける。
「なんか、すっごいぞわってすんだよ」
「私も嫌い」
レヴィの声は淡々としている。将斗と違い、一線を引いているような印象。
「なんのつもりなんだ。普通に聞いてくれれば――」
「普通に聞いたら、本当のことは言わないでしょ」
短い沈黙の後、レヴィは口を開いた。
「最初はね、ただ早く動けるだけ、『
「間違ってない。別に俺はそんな警戒されるような大した人間じゃない」
「普通の人なら、魔法を半日そこらで使えるわけない」
「……! でも現に使えて――」
「あんたが只者じゃないのは分かった。きっとこの『世界』の人間じゃないんでしょ。もうお互いに正体を明かさない?」
「別に俺は……そんな……」
警戒されるほどの人間じゃないと言いたかった。
しかし、彼女の目はこちらを警戒していた。
魔法が半日ちょっとでは使えないことなど、将斗は知らない。
魔法はただ使えただけだ。使えた理由もなんとなく、自分なりに考えて導いた方法がうまくぴたりと嵌まっただけだ。
目的の『
『超強化』は将斗の身体能力を飛躍的に向上させたが、レヴィからは逃げきれなかったし、『
「答え次第によっては容赦しない。私はこの国を脅かすものを許さない。王宮魔法使いとして」
その言葉には、威厳と責務が込められていた。将斗の視線は、ただ立ち尽くす彼女の背筋に自然と引き寄せられる。グラディア王国の王宮魔法使い――その称号だけで、並外れた力と地位を想像させる。
「私はグラディア王国 王宮魔法使いレヴィ・ウィンダリア」
息を呑む間もなく、レヴィはさらに口を開いた。
「勇者『
その瞬間、将斗の全身が震え上がった。足先から頭のてっぺんまで、背筋に冷たい電流が走るような感覚。
鈴木雄矢には三人の仲間がいる。
ともに魔王と戦った仲間が。
彼女はその一人――レヴィ・ウィンダリア。
血の気が引いていくのがわかった。
よりにもよって、敵の懐に自ら踏み込んでいたのか。
息をするたび、胸の奥が冷たく締めつけられる。
「――正直に応えて。雄矢の何を狙ってるの?」
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