11 追加
第一話 次の目的
ハルルエスタート王国を出発したアリエスたちが向かったのは、北西方面にある毒蟲の森と呼ばれる場所に面したエントーマ王国だった。
用があるのはエントーマ王国なので、毒蟲の森に寄るかはアリエスの気分次第である。
アリーたんは前世で虫を素手で触ったりは出来なかったが、黒光りするヤツをスパーンっ!と殺れるくらいには平気だった。
ちなみに前世での兄貴、康一は全くダメだった。彼から見れば妹になる茉莉花に黒光りするヤツを始末してもらっていたのだが、彼女はガーデニングが趣味なので虫は平気なのだ。ただ、害虫に慈悲はない。そこに優しさ100%は適用されないのである。
エントーマ王国にもダンジョンがあるのだが、そのダンジョンは王都の真ん中に塔のようにしてそびえ立っている。
そのダンジョンに出てくるのは、キラーアントと呼ばれる
王都の真ん中にダンジョンがあるのは危険なのではないかと、他国の者は思うかもしれないが、エントーマ王国の人たちからすれば、きちんと駆除に入っていれば氾濫することもないのだから、それならば近くに拠点を置いて、頻繁に赴ける方が楽でいいということだった。
そのような話をアリエスは、ディメンションルーム内にあるコテージのリビングでロッシュから聞いていた。首に胴長ムーちゃんを巻いてベアトリクスの背中にうつ伏せになりながらという、行儀の悪い姿勢で。
「こーら、アリー。聞く気があるならちゃんと起きないか」
「良いのですよ、ハインリッヒ。寝物語のつもりでお話しておりますから」
「まあ、それならいいんだが。ていうか、本当に寝ちまってねぇか?」
寝かせるつもりで話していたロッシュによって、まんまと寝かされたアリーたん。
そんな彼女の身体が冷えないようにテレーゼがブランケットを差し出し、それをロッシュがそっと掛けてやるのだった。
30分ほどベアトリクスの上でお昼寝をしたアリエスは、スッキリした気分で起きたのだが、何故にロッシュによって寝かされたかといえば夜更かしをしていたからである。
総魔力量が更に増えたことによってディメンションルームが拡張され、コテージの他に3軒ほど家が建てられるほどになったため、砂場を併設したアスレチック広場を考えていたのである。
アスレチックで遊ぶのはベアトリクスとサスケ、あとは強制ダイエットのためにムーちゃんも参加させられ、砂場はジャオが潜るためのものなので決して猫用トイレではない。ムーちゃんのトイレは自身で出入りできる専用トイレがあり、アドリアが頻繁に掃除してくれているので、とても清潔なのだ。
ちなみにアスレチックのサイズはムーちゃんに合わせた大きさで考えているため、ベアトリクスが遊ぶときは子猫サイズになる必要があるのだが、彼女が遊ぶのはムーちゃんのダイエットのためである。
最近は、さすがにムーちゃんのコロコロ具合いにベアトリクスも思うところがあったのか、ご飯の時間になると、はむっとムーちゃんを
そうするとご飯を食べたいムーちゃんは頑張ってコテージまで歩くので、多少は散歩になるだろうというベアトリクスなりの気遣いなのだが、ムーちゃんにとっては迷惑な話なので連行されるときはちょっと暴れている。
そんな様子を頻繁に目にするアドリアは「ちょっと不憫というか可哀想なところはあるわね」と苦笑気味に語った。
ベアトリクスは魔力によって糧を得ているので食事は嗜好品であり、食べ過ぎたからといって体重が増えたりはしない。ましてや身体の大きさを変えられるのだから、太るという機能を持っていないのだ。
そして、サスケは暇さえあればキャットタワーやバルトが作ってくれた芝生に置かれている障害物で、タイムアタックをして遊んでいるため、運動量に対して食べる量が追いついていない。
だから、身体のわりにたくさん食べているにもかかわらず、細マッチョなのである。
その2匹と同じ感覚で食べたいだけ食べていれば、ほとんど動かない上に、ただの獣であるムーちゃんは太るに決まっているのだが、ムーちゃんにだけ食べるのを我慢しろというのは可哀想かもしれない、ということだった。
そのため、その話を聞いたテレーゼが、「エントーマ王国王都にあるダンジョンではダイエット食材が手に入るそうですので、そちらも予定に入れてはどうでしょうか?」と提案してくれたのだ。
コンニャクや寒天のようなヘルシーでお腹がふくれる食材なのだが、ムーちゃんのような獣が食べても問題はない。
それを入手さえすれば、テレーゼがムーちゃんでも美味しく食べられるように料理してくれるだろう。
女体化(完全版)に必要な素材の中に、エントーマ王国王都のダンジョンで入手が確認されているものがあるので、ムーちゃんの食材はついでである。
首に巻いたムーちゃんが最近は首コルセットのようになってきてしまったので、アリエスも危機感を覚えたようだが、気付くのが遅すぎであった。
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