15 思い出した!
私は先生に抱かれた。
初めてで怖かったけれども、先生は優しくリードしてくれた。
何よりも、気持ち良かった。
私は先生の隣でぐっすり眠った。
そして…、私は全てを思い出した。
きっかけは先生に抱かれた事だと思う。
私は交通事故で死亡し、何故か男性看護師に転生していたということ。外から見たら男性だが、内面は女性だったこと。
上村先生と出会い、内面を見抜かれていた事。
先生を抱いた事。
私は朝まで眠った。
起きると、頭がスッキリとし、すがすがしい朝だった。
「おはよう。起きた?」
先生はキッチンから寝室にやってきた。
「朝はパンと目玉焼きにするね。簡単だし」
私はベッドから起きて、先生のすぐ近くへ寄った。
「え…、何?」
「私は、全てを思い出しました!」
「えっ?吉田さんだったときの事も?」
「はい、全てです」
「………とりあえず、朝ご飯を食べましょう」
先生と私は向かい合って静かに食事をとる。
何から話そう?
切り出したのは先生からだった。
「思い出してくれてうれしいよ。でもね、疑問があるの」
「これでめでたし、めでたしじゃないんですか?」
「あなたは、男性の吉田さんだった時のほうが生きている時間が長い?それとも、女性の原嶋さんである今の方が生きている時間が長い?」
私は考える間もなく、条件反射的に言った。
「男性の吉田さんの中では、内面は女性の私でした。だから、女性の私がほとんどの私の時間を占めています」
「逆に先生、先生は男性である吉田さんのほうが良かったですか?それとも、今の私の方が…、」
「吉田さんの内面のあなたが好きだし、今のあなたが好き。今のあなただから好きなの。吉田さんの内面が女性じゃなくて男性に戻った時には衝撃を受けたのよ。私はずっとあなたを探していたのよ。」
先生は優しい声で話し、ニコニコと微笑んでいた。
「つまりね、あなたが言う、めでたしめでたしというわけ」
こうして二人の不安が解消した。
そして、お互いに不安だった愛を確信した。
国家試験が終わって看護大学を卒業してから、先生の家で開いている部屋を借りた。いわゆる同棲というものだろうか。
私は上村先生とは違う病院に就職し、3年の月日が過ぎた。
夕食の時に、先生は私にこう言った。
「私はね、勤務医を辞めて開業したいと思っているの」
「それはどういう?」
「クリニックで、内科・呼吸器科という感じかな。あなた、勤めて3年経って自信ついたでしょう?」
「もしかして…、」
「あなたを雇いたいのよ。正社員として。もう一人はパートを雇おうと思ってね」
「ありがとう御座います」
「そうしたらずっと一緒にいられるでしょう?今まではすれ違いの生活だったけれども」
先生は私に激しいキスをした。
「変な虫がつかないうちに」
先生は勘が良い。
上村先生には言っていないけれども、他の医師からアプローチされたことがあった。男性も女性も。
しかし…、これってもしかしてプロポーズ??
(完)
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