13.別れ際が寂しい…

それ以降、私は上村先生との別れ際、非常に寂しくなる。

先生は私のおでこにキスをしたり。

あるときは私の頬にキスをしたり。ただ、それ以上は何もしない挨拶みたいなものだった。


「上村先生、先生との別れ際がとても寂しいんです。」

「そう…。」

上村先生はそう言って、何故かクスクスと笑った。

「何故笑うんですか?」

「いや、可愛いなと思って」


そう言って、私をに車から降りるように催促する。


「待ってください…」


私は先生を引き止めた。


先生は驚いた顔をして、車のサイドブレーキを引いた。


「どうして?」


私は涙を流していた。


「以前の記憶はないんでしょう?」


「はい。でも、上村先生の帰り際が悲しいんです」


「わかった。来週はに旅行に行こうか。そうしたら別れ際の寂しさ紛れるかもしれないわね」





一泊二日の温泉旅行。

車で来て、二人は温泉三昧。

宿の夕食。

その後もお風呂。

そして仲居さんに布団を敷いてもらって、二人は浴衣になる。

電気を暗くする。

たわいもない話をしていた。やがて、先生は私の髪に触れながらまるでうっとりしたかのような顔をしていた。

私は先生の耳を触る。その指がやがて耳の内側へ。しばらく触り続ける。


「先生はなんて美人なんだろう」


しばらくすると、先生は私の近くへ体を寄せた。

そして…。


先生は私を優しく抱きしめた。

私も先生を抱きしめ。

二人は抱き合って寝た。私は心地よくてすぐ眠ってしまった。先生がどんな気持ちか知らずに。



翌朝、車で帰る。

しばらく無言

先生の目には大きなクマがある。


先生は私の自宅近くへ車を停める。


「先生、わかれたくない。寂しい、寂しい…。」


「今日はもう帰りなさい」


「何でですか?昨日あれだけ優しかったのに、今日は凄く冷たい。」


上村先生は私の顔をじっと見た。


「私の方が何するかわからないからよ。あなたのためなのよ。傷つけたくないの」



「先生…。例え前の記憶とやらがなくても、私は先生に…。だから先生、本当は凄く怖いけれども、私を…。」


先生はため息をついて、冷静に話しをした。


「前に私があなたの頬を触って抱きしめようとした時、あなたは激しい拒絶反応をしたわよね。あれが起こってもおかしくないのよ」


先生は私の心を見透かしたかのように話した。


「それは…。」


その続きがあると思うと、私は怖い。凄く怖い。

でも、このままだと先生は私から離れてしまうのではないだろうか。それの方がよほど怖かった。












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