第20話 初代炎の剣の使い手、タケル

「…江内さん。」「ん…?」「左江内さん。」「…あ。」


カーテンの外は明るい。

どうやら、『初体験』を済ませたまま、2人で爆睡してしまった様だ。携帯で時刻を確認すると、朝の9時時過ぎ。


「何だか、恥ずかしいですね。」「は、はい…」


あんだけベロベロに酔っていたのに激しかった…。

若いとこうも体力の違いに差が出るのか?

そして、ちゃんと覚えてるさちさんも凄い。


「ちゃんと覚えてくれてるんですね。」「だって、本当は酔ってませんでしたもん(笑)」「えぇっ!?」「騙してごめんね(笑)大好きです!!」


おでこにキスをされ、歯痒いような情けない様な。

そんな事よりも、大事なのはタケルさんに連絡を取ってもらい、会えるセッティングを用意して貰わなければ…

俺は床に脱ぎ捨てられてあった服をこっそり取りながらさちさんに言った。


「さちさん、昨日の話なんですけど…」「お兄ちゃんですよね?もう連絡しました。」「はやっ!!」「実家に行く前に寄ってくれるみたいなので、もうすぐ来るんじゃ…」


『ピンポーン』


来ちゃったよ。

こんな淫らな状態で来ちゃったよ。


『はーい。上がってー。』


いやいやいやいや。さちさんも服着ようよ。下着でお出迎えなんて『いかにも』じゃないか。

俺は慌ててスーツを羽織り、さちさんには私服に着替えるようお願いした。


「さちー?…あ。」「あ、あのさちさんは今っ…!!」


『タケル』。

あの時見た写真立てに写ってる顔と同じだ。

優しそうで笑顔が素敵で…あのタケルさんがここにいる。


「さちの…彼氏ですか?」「あ、はい!左江内と申します。」「初めまして。さちの兄のタケルです。」


俺に向けられた爽やかな笑顔。第一印象も清潔で文句ひとつない。


「あの、さちは?」「あ、さちさんは今着替えに…」


今がチャンスじゃないか?さちさんがいない今なら、VRの話を出来る。


「あ、あの、タケルさん。」「はい?」「ユキナさんを知ってますか?」


『ユキナ』


この名前を出した途端にタケルさんの表情が強ばった。


「あなた…もしかして…」「そうです。今は俺がタケルさんの代わりに剣の使い手をして異世界に飛んでます。」「ユキナはっ!?ユキナは生きてるんですか!?」「ユキナさんは、あなたを待ってずっと闘い続けてます。今も…」「ユキナっ…!!」


膝ま付いて泣き出すタケルさん。

今でもユキナさんへの想いが心にあるのだと確信した。

そして、必ずや『逢わせてあげたい。』そう思う気持ちがより一層強くなった。


「タケルさん、VRはそこにあります。」「でも、俺は結婚してしまってっ…」「せめて、ユキナさんに挨拶だけでもしてあげて下さい。ずっと…あなたを待ってるんです。」「俺を…ずっと?」「そうです。」


『何の話してたの?』


ユキナさんの着替えが終了し、俺達の話も一旦中断。しかし、何処かタケルさんの様子がソワソワしていて気が気でない様子。


「さち、ごめん。コンビニでタバコ買ってきてくれないか?」「え?今!?」「悪い。頼む。」


『分かったよ。』


渋々さちさんはコンビニへと出かけ…俺はタケルさんにVRを渡した。



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