第13話
マーキスと決闘した後、誤解も解けたらマーキスはかなりフレンドリーに俺に接してきた。
話してみると明るくてさっぱりしている。今までの知り合いにいなかったタイプだな。
次の日からマーキスも朝の訓練に参加するようになった。
昨日の敗北が刺激になったらしく、更に高みを目指すと意気込んでいる。
防衛隊の訓練だが、グルガさんに頼んでモルも参加させてもらえるようになった。
グルガさんは町に強い者が増えるならそれにこしたことはないと快諾してくれた。
今のところモルは俺としか訓練していないので、訓練の成果をみせてやりたい。
成長したモルなら防衛隊の中でもかなりの上位に入るはずだ。
それとメルはほとんど普通に動けるようになり、今は家の仕事を手伝っているのでモルは今までより時間が作れるようになったとのことだ。
◇
防衛隊での訓練にモルが参加しているが、最初はなんでこいつがいるんだ?というように見られていたが、模擬戦で連戦連勝すると、周りのモルを見る目も変化していった。
「あいつこんなに強かったのかよ…」
「ロイドさんと毎日訓練してたらしいぜ」
「どんな理由でもあの強さはホンモノだ。認めるしかねぇよ」
そう悔しそうに言うのは以前モルに絡んだ二人だ。
負けを素直に認められるやつは伸びる。二人の今後に期待しよう。
「ロイド!オイラこんなに強くなったッスね!ロイドにはいつも一撃も与えられなかったからあんまり変わってないと思ったッス」
モルは嬉しそうに笑っている。
「それは相手が悪いだけだ。モルはちゃんと成長しているぞ」
するとマーキスが立ち上がりこちらに来た。
「モル!少し見ない間にかなり強くなりやがったな!次は俺が相手になるぜ」
「マーキスか。モルの今の実力を測るには良い相手だな」
そして二人が向かい合い構えを取る。
モルが先に遠距離から火弾を放つ。モルの戦法はヒットアンドアウェイで相手にダメージを与えていくタイプだ。
マーキスは火弾を全てはじき拳を繰り出す。
モルはそれを躱し爪で攻撃をする。
「モル!やるじゃねぇか。」
「マーキスこそさすがッスね!」
そしてまたマーキスが突撃をする。
モルはそれを間一髪で躱し、モルが今の一番威力のある炎の渦をマーキスに当てる。
マーキスはそれを防御に徹して耐え、反撃の跳び蹴りをモルに食らわせる。
これは決まったか。
モルは立ち上がろうとするがダメージが大きく立ち上がれない。
「そこまでだ!ミリア。モルの回復を頼む」
俺は控えていたミリアに声をかける。
「はーい。でもお兄ちゃんとしっかり戦えるなんてすごいですね」
「俺にとっても良い訓練になったぜ!」
マーキスも満足そうだ。たしかに俺にとってもモルの今の実力を見ることが出来た。
すると先ほどから戦いを見ていたヒルダがマーキスに声をかけた。
「兄上!私とも戦って下さい!」
「いいぜ。ヒルダには負けないぞ!」
次はヒルダと戦うようだ。
ヒルダもかなり成長してきたが、まだマーキスには届かないくらいだろうか。
実際戦ってみるとヒルダが序盤は押していたが、ヒルダの動きにすぐに慣れたマーキスに軍配が上がった。
マーキスはヒルダに近づき労いの言葉をかけた。
「ヒルダ!お前も強くなったな!ロイドは人を育てるのが上手なんだな。きっと」
「兄上とここまで戦えるとは思っていなかった。以前はまるで歯が立たなかったのに。これがロイドとの訓練の成果か――」
ヒルダは負けはしたが、成長を実感出来たようで嬉しそうな顔をしている。
「よし。今日はここまでだな。またひとつずつみんなで成長していこう!それとマーキス達兄妹とモルは、俺と一緒にグルガさんのところに来てくれ。俺もまだ内容は聞いていないが何か話があるみたいなんだ」
そして俺たちはグルガさんのところへ向かった。
◇
俺たちを待っていたグルガさんが早速本題を切り出した。
「みんな知っていると思うが最近魔物の動きが活発化している。それは北の山における瘴気が増加しているからだと考えているんだ。今までも並はあったらしいけどそれは現れた魔物を退治することで対処してきたみたいだ」
北の山から魔物が来るのはそういう理由か。
グルガさんは話を続ける。
「マーキスに隣町の魔物退治に行かせたのは、隣町の近くにも瘴気溜まりがありそこはこっちよりは頻度が少ないけど時々魔物が来るからなんだ。」
魔皇国には瘴気溜まりがそれなりの数有って、どの町もその対処には困っていると言うことか。
グルガさんは俺の方を向いて話を進める。今このメンバーにこの話をしたとなると何かしらこの状況を改善させる策があるのだろう。
「そうすると、俺やみんなにして欲しいことは何だ?」
グルガさんは頭をかきながら答える。
「話が早くて助かるよ。ロイド君がここにきて、メルの足を治した話をミリアから詳しく聞いてずっと考えていたんだ。ロイド君なら北の山の瘴気に対してなにかしら出来るんじゃないかと」
なるほどな。王国ではこちらほど魔物は出ない。
だから原因を片付けるというような発想はなかった。
「つまり、その北の山にある瘴気溜まりを見つけそれを何とかして欲しいということか」
グルガさんはうなずき答える。
「何も瘴気をいきなり消滅させて欲しいというわけじゃない。まずはロイド君に調査に行ってもらい、瘴気を緩和させる手がかりになるものを探してきて欲しいんだ」
俺はグルガさんやこの町にかなりお世話になっている。俺に出来ることはやっていきたい。
「分かった。じゃあ調査に行くよ」
「ロイド君ならそう言ってくれると思ったよ。ロイド君がこの町に来るまでは調査にまで回せる人員がいなかった。それに北の山には町には降りてこない強力な魔物もいる。ここにいるモル君やヒルダ、防衛隊のメンバーが成長したことによって今回の調査に行けるんだ。ロイド君には本当に感謝してる」
「こちらも、いきなりよその国から来た俺にこんなに良くしてくれて感謝してる。だから調査で成果を出せるように努力いなきゃな」
「じゃあ、ロイド君の了承も取れたから早速明日調査に向かってもらう。調査に向かってもらうのがロイド君とミリアとモル君で、マーキスとミリアには町の防衛を頼むよ」
その言葉に全員が頷く。
「分かったよ親父。ロイド、こっちは俺たちに任せてそっちの事は任せたぜ」
マーキスはそう言って俺に手を差し出す。
俺はその手を力強く握り返し決意をする。
それでは明日気を引き締めて向かうとしよう。
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