人形好きの男
クラットス
前編
橙の空に響くカラスの声は、学校の下校時間を教える。
「もう、こんな時間か」
その日は、学校のテスト期間であり、春斗は帰る支度をすまして、帰路に入っていた。
「はぁ、家まで遠いな」
春斗はそう呟いきながら。家から学校がそこそこ遠いことをぼやいていた。
普段は、自転車で登下校していたが、昨日パンクしてしまい、そのため、朝は母親に車で送迎されたが学校終わりは都合が悪く歩いて帰ることになっていた。
(自転車で帰っていたけど、家まで遠いな。 こんなことなら母親の迎えが出きるまで学校で自習してればよかったな)
そんな事を内心思っていると、いつもなら自転車ですぐに、通りすぎていた公園が目の前に見えていた、
(あそこで飲み物、買って休憩しよう)
春斗はそのまま歩みを止め、自販機から黒色の炭酸を購入したのち、そのまま公園に入った。
飲み物を買い、公園のブランコで休憩し始めると、視界の中に小汚ない男が気色悪い人形を抱きながらこちらをじっと見ていた。
(見られてる、せっかく休憩し始めたけどすぐに出よ)
先程、買った飲み物を一気に飲み干したのちすぐに、公園から出た。
(ヤバイ、後ろについてきている……)
数分前から、公園にいた男が春斗の後ろを
ついてきていた。
「あっ、あの何ですか後ろをついてきて!」
春斗は、振り向いて男に向かって声を張り上げてそう言うと。
男は怯えた目でこちらを見つめ、体が震え始めそこから足を止めてしまった。
「もう、ついてこないでください!」
そう言って、春斗は家に向かってまた歩き始めた。
しかし、後ろから足音がし、ついてきているのがわかっていた。
(もう一回いってやろうか今度は強く)
イラつき始めた春斗は、振り向いて男に向かって「ついてくんなって言ってるだろ!」 と言ったが、ついてきていた気配はあったもののそこに人は居なかった、その代わり、人形がそこに置かれていた。
人形は、スポーツ刈りで学生服を来ていた、その姿は、どことなく見たことあるような風貌をしていた、
(なんだろ、この人形……)
そう思いながら、男がどこにいったのか首だけで探し始めた。
すると、「おい」と後ろから声を掛けられた、その声に驚いた春斗は首だけを後ろに振り向いた。
そこにいたのは先程の男であった、しかし先程怯えていた印象がなくなっていた、そう感じていると男が口を開いた、
「返せ」
そう、低く、人形を指を差していた。
「あっ、はい」
男の、気配に圧倒され春斗は素直に人形を返した。
「よかった~返ってきてくれた~」
今度は、子供のような高い声を出し始めた。
その姿を見た春斗は、関わりたくないと思い立ち去ろうと走り出した瞬間、
『すぐに君と、お話ができるようにしてあげるね』
聞こえないぐらいの声で男は発して、春斗をそのまま流し目で走っていく姿を見ていた。
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