第25話 洋館アパート さくら館
ウツロ、
かつては旧・
旧財閥の持ち物だっただけに敷地は広く、
「お」
彼らがやっと入り口の付近にさしかかると、
「488スパイダーかよ、すげえな」
南柾樹はうおっと
「スパイダー?」
真田龍子がキョトンとして聞き返した。
「フェラーリだよ、龍子」
ウツロはさらりとそれに答えた。
「あんな車、乗ってみたいもんだぜ」
「がんばって買えばいいよ、柾樹」
「あのな、簡単に言うなよ。
「ほしいもののために努力する、いいことじゃないか」
「ちぇ、
「俺も少しは丸くなったんだ。概念と人間、そのバランスのいいところを保てば大丈夫だと思うよ」
「ああ、そうですか」
こんな感じで、二人がなかよくケンカをしはじめたものだから、真田龍子は合わせて笑っているしかなかった。
しかしウツロが、『人間の世界』なじんできているのを
車はスモーク・ガラスになっていて、中に人がいるのかどうかすらわからない。
「お客さんかな?」
真田龍子は場にそぐわない
「少なくとも、俺らの知ってる特生対のスタッフの車じゃねえな。かといってあんな高級車、ただもんってことはねえと思うけど」
南柾樹も同様に
「謎の組織」
そうつぶやいたウツロに、二人はギョッとした。
「
彼のセリフはナイフのように二人の胸を
「そんな、ウツロ……」
「いや、ウツロの言うとおりかもしれねえ。そんなにやべえ組織だっていうんなら、可能性としてはじゅうぶんにある」
信じられないとうい気持ちを南柾樹にさえぎられ、真田龍子は強い不安を感じた。
「おめえら、念のため、アルトラを出す準備はしとけよ。日本を支配してる組織だっていうんなら、それこそ俺らの想像もつかねえアルトラ使いを、山のようにかかえてるだろうからな」
「ああ、わかってる、柾樹。龍子、もしも敵が
彼女はにわかにこわくなってきて、体が
「……っ」
真田龍子の手を、ウツロが
「大丈夫だ、龍子。君は俺が、絶対に守る……!」
そのまっすぐで
見つめる彼の顔に、彼女は
そうだ、何もこわくない……
ウツロが、柾樹がついている。
「よっしゃ、いっちょドンパチやらかしますか」
笑う南柾樹に、二人はやはりうなずいてみせた。
こうして三人はブルーのフェラーリを
(『第26話 さくら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます