愛奇譚

ポチョムキン卿

ウーパールーパーの夜

  

I|千絵

 千絵ちえがちょっとしたいさかいから夫と別れたのは3年前のことだった。

 子供は男と女で二人。

 中学生になったばかりのたけしと小学四年生の愛那あいな

 もとの夫の名康生やすおと言った。


 千絵は最初の結婚で半年もしない内に実家に戻ってしまった。


 もともと実家はアパート経営をしていて経済的には裕福であったけどそれも父がいたときまでで、父に愛されて育った千絵は謂わばお嬢様だった。

 でもその父が無くなると、父の財産は取り敢えずあたしが全部管理するからねと全部母親名義にされてしまった。

 そしてそのアパートの一室で、千絵は生活していた。

 親の家なのに母親は家賃を要求した。

 今思えば母は全く持って毒親に近い。



II|最初の結婚

 千絵の最初の男と付き合ってるうちに、何度かいいムードになって性行為をした感じになっていたが、じっさいに性行為が行われたのか実感はなかった。

 それでも体を愛撫され、股を開かれ薔薇の花回りを男の舌が這いずり回ると、痺れるような刺激が膣から上がって体がビクビクと小刻みに震えた。尻がベッドから突き上がるように浮いては沈む。

 男の舌が薔薇の花芯を開いて入ってくる。

 花芯の入り口で動き回る舌の刺激は千絵の人間としての感覚をなくし、千絵は体全体が子宮だけになったかのような喜びに打ち震えていた。

 子宮口でうねる舌により、次から次へと押し寄せてくる官能が全神経が繋がり、やがて千絵の世界は子宮に向かって収縮を始め、千絵の感覚は子宮から届く信号を貪るかのように収斂していく。

 千絵の花園のバラの花は男の唾液でてらてら光リ、薔薇の花芯からも愛液が滴る。千絵の花芯はぽっちゃりと充血膨張で膨らんでピンク色となって男を受け入れる準備が整っていた。花芯は開き、花園の奥の薄ピンク色の襞が愛液溜まっててらてらと光り蠢いている。


 卑猥ひわいな図であるが男と女、誰しもの愛欲の図である。


 千絵の体が小刻みに震え皮膚は薄っすらと汗をかいて濡れている。

 

 そのまま男が入ってくると思ったが男は千絵の汗で濡れた体の腰に手を当て腰を掴むようした。そして吹き出した千絵の汗は男の手が肌を撫ぜながら上に行き乳房に達するときの潤滑油となっての皮膚の刺激も千絵にはアクメとなって子宮に届く。


 乳房をつかんだ男の手は乳房を優しく揉みしだき、そして男の唇が吸い付き、やがて乳首を甘噛するように噛みずらすと千絵は「あっ」と声を放った。


 千絵は噴水のごとくにお小水を拭き上げてしまっていた。


 千絵はその男と籍を入れた。



 家族はほとんどがもう少し考えろと言った。

 父親だけがいつでも帰ってきて構わないと言ってくれた。



III|千絵の離婚

 半年もしないうちに千絵は実家に帰った。


 男との結婚は千絵にとって失敗だった。


 千絵に性の喜びを与えてくれかけた男は、結婚してから千絵の体にはほとんど触れてこなかった。

 寝る時は二人一緒に寝て男が抱きつき乳首をもんだり、千絵の花園に触れて指を入れたりすることはあったがそれだけだった。

 日々不完全燃焼で体の芯でおきが燃え残ったままくすぶっていた。

 千絵は女として男に突き突かれたかった。


 結婚して千絵の性に対する期待はより膨らんでいたが、夫である男は千絵の中に入ってこようとはしないのだ。軽く体に触れて期待をさせて寝てしまう。どうやら男の一物は男としての機能をしないみたいだ。



 千絵の体は不完全燃焼に膨らんで外見的には色気に溢れて見えたことだろう。

 そしてそれは夫婦仲が良い証拠だからと思われていたのかもしれない。


 半年が経って千絵は実家に帰っていた。


 男が結婚したのは社会的対面のために夫婦になりたかっただけのようであった。

 離婚しても、男はそれで結婚していたという事実があるだけでよいみたいで離婚はすんなりと成立した。




IV|二度目の結婚

 夫は康夫やすおといった。

 付き合って初めて千絵は女になった。

 康生との結婚で性生活に不満はなかった。


 康生との性交渉では千絵の薔薇の花芯は初めての男にされたような刺激こそ受けることがなかったが、結婚して最初の内はお互いの若さで相手の秘密をまさぐりあうばかりに時間があればお互い交わりあった。


 共に果てるまで相手を犯し続けた。

 性交渉に男だからも女だからもない。

 ただ相手の肉を喰らい飲みこむのだ。


 性交によって内なる湧き上がるエネルギーをぶつけて戦わせるのだ。

 常習性のある薬物のような性衝動である。

 常習性のある薬物のような性衝動もマンネリ化し、ある時を境にお互いのその性衝動が消えたかのようになる。


 康生との間には子供も二人もうけた。


 二人目の愛那が生まれてから千絵は夫との交渉を避けるようになった。

 千絵は子供を産んでから何度か夫の誘いを「疲れているの」「眠いから」と無意識的に避けたことによって、お互いを知り尽くすと夫も本来は淡白だったのか、いつしらか夫からの求めもなくなった。


 康生は子供が育つにつれて女の不機嫌を取り直して性交渉に持っていくのもめんどくさくなると、いつの間にか家族という名の同居人となってしまっている。


 それは千絵にとっても同じだ。

 いつしか、子供と同じように飯だ風呂だと人一倍世話がかかる他人なのに家族なのに同居人という一人の邪魔者が出来上がる。

 その邪魔者は夫という名の存在である。

 千絵は二人の子供は自分が生んだ実感で親子家族だが、康生はよく考えたらただの他人だ。なぜただの他人の面倒を見なければいけないのかとすら千絵は思う。


 あれほどお互いの肉を貪ったというのに、今では嫌悪感さえ康生に覚えてしまう自分がいて、千絵自信がそのことで驚いている。




V|二度目の離婚

 そんな時知り合いのスナックのママが病気になり、千絵に代りに店のママになってくれと言われて、新しい世界を見てみたい気持ちもあって引き受けた。

 スナックの仕事を初めて半年ほどして、家庭のことが疎かになりかけたころ、夫との諍いが絶えなくなった。

 当然揉めにもめて、双方の親も出てきて親権を争い最後は家庭裁判所で離婚調停までしたのであるが、スナック営業で夜不在であるということから二人の子供の親権は康生がわに持って行かれた。


 そう決まれば千絵は子供の親権が康生に行くことに頓着しなかった。

 スナックではチエママとしての客もついてきて可愛がられ店も順調に経営できていた。それよりも何より、自分の住んでいる世界と違う世界に惹かれた。カラオケもデュエットを繰り返すうちにだんだんとうまくなり、中森明菜の難破船が自分の持ち歌になっていた。夜になると少しばかりきらびやかな世界で店に来る客は自分の方を向いてくれる。そのことが何よりうれしかった。


 そして早く言えば家族という名の康生の世話と子供二人の世話から開放され、スナックに集中できるようになることが返って良いことだと思った。千絵は、自分も母と同じである意味毒親なのかとも思った。


 子供と離れ離れになるけど、子供が18歳になれば子供の意志で親を選択することもできるようになる。なんだかんだと言っても母親は強いからと思っていた。

 いつでも会えると思っていた。


 三年が過ぎた。

 いつしかスナックのママが本業となってしまっていた。

 病後が思わしくないというママから店を譲り受けた。

 そして2020年新型コロナウィルスだ。

 まる三ヶ月間店を閉めた。

 東京都から給付金が200万円支給されたのはありがたかった。



VI|ウーパールーパーの夜

 お客と接していてにぎやかにスナックで時を過ごしていた。

 客と言えばほとんどが中年を過ぎた感じだった。

 若い客も来ないではないが非常に少なかった。


 暇なときはスマホでSNSを見ている。

 SNSにポストすることは少なく人それぞれの投稿を楽しんでいた。

 SNSでは猫を飼っている人も多い。

 室内で飼える手軽さが良いのだろう。

 ある時たまたま通りかかったペットショップで小さ妖精を見つけた。

 人の肌のようなピンク色でひょうきんな顔につぶらな目が可愛い。


 ウーパールーパーという。


 メキシコのサンショウウオの仲間で幼体のまま生育するのだ。


 まさに妖精そのものだった。


 白っぽいピンクの皮膚がに血管が透けて見えて美しかった。


 最初は10センチほどのサイズだったけど死ぬこともなく成長してくれて大きくなったので、ネットで水槽や濾過槽に照明を注文して、ウーパールーパーのために飼育槽を広くしてやった。

 水槽を広くするとさらにウーパールーパーは大きくなって、ピンク色の肌もより艶やかになったみたいだ。


 9月に入って感染防止対策をし営業時間を短縮して店を再開した。

 週3日だけ店を開けるようにした。

 以前営業していたときのように客が戻ってきてくれるだろうと思ったけど、客がほとんど来なくなった。


 1ヶ月2ヶ月と時は流れても客は一日一人日二人だ。

 以前のようにやや年配の方たちはまったく来なくなってしまった。

 千絵は客が戻らないのは新型コロナウィルスが怖いからだろうと思っていた。

 しかしながら年配の客たちは自主自粛ですっかり出歩くことを止めてしまったみたいだった。年齢が上がるほど動かなくなればより身体がより動かなくなる。そんなことも理由だったのだろう。


 つまり団塊の世代前後の客が新型コロナウィルスの影響で、ごっそりと夜の街から撤退したままの状態になってしまっている。


 町のスナックなんて中年以降の客と高齢者の比率で言えば、3対7ぐらいの割合で高齢者のほうが多い感じだったのに、その高齢者たちが夜の街から引き上げてしまった。これは気持ち共にじっさいに体も夜遊び出来にくくなってしまっている。

 そんな夜の街は以前とくらべ暇になってしまった。


 比較的若者向けの飲み屋であればそれでも客が来ている。

 と言っても客は少ない。

 千絵の店に来る客からも高齢者の姿が消えた。


 千絵はカウンターで客待ちをしている間に、カウンターで寝てしまうこともある。寝ていても客が来ないでそのまま終わる日も多くはないがある。


 客が入ってきてびっくりして目を覚ますなんてことも度々あった。

 そのうち客が「今日は、寝てねえだろうな」ななんて言いながら入ってくることもあった。


 これではいけないと千絵は思うのだが最近は寝付きが悪くなって眠れない日々もある。店の売り上げも少ないし、毒母親からはをどこどこに連れて行けだの、買い物をしてくれだの頼まれる。そんなことで自分の先行きを考えたりして夜に眠れない日々もある。そんなせいもあってか店のカウンターでは時々涎を垂らして寝ていることもあった。




 その夜、千絵は客を送り出し、客が飲ませてくれたアルコールで少し寄ってしまったようでソファに腰を下ろしたらそのまま寝入ってしまった。家では鍵をかけずに寝るなんてことはしないのに、店だと鍵もかけないで眠ることが度々あった。


 千絵は程よい温度の空調で後頭部が痺れるような睡魔に襲われ落ちていった。

 この睡魔の誘惑に一人では逆らうすべはないが、店を閉めてなんとか家に帰ってベッドに横になった。


 青白い水槽の明かりを受けて、ウーパールーパーが空気を吸いに長い尾を揺らして泳いでいく。ベッドに横になった千絵は幻想的だなと思いつつ寝入ってしまった。


 夢の中で千絵の体を求める手が千絵の体を弄る。

 ひやりと少し冷たい手が千絵の火照った体に触れると千絵の体はピクとする。

 ヒヤリとした冷たい手は嫌いじゃない。


 ヒヤリとした冷たい手が千絵の体の温度で温まっていく感じも心地が良い。千絵の体温で温まり少し熱気をおびたその手が千絵の花園にまで伸びてくる。

 千絵の花園の花芯を広げ指が入ってくる。

 熱い温かい指が千絵の中で動く。

 思わず千絵は腰を動かし指を飲み込んでいく。


 男の指が二本入ってきた。

 膣の中がいっぱいになり膣の襞が喜びに震え、その喜びを電気信号に変えて子宮をふ震わせ歓喜に脳髄が震える。


 千絵の体が男を包む。

 いない相手が実体化したように感じさせるリアルな夢。

 そんな夢は最初の結婚で何度か経験がある。

 それは決まって夫が出張に出ているときのことだった。


 実体化したようなリアルな夢でも、男を迎え入れようと千絵の花芯がぬめぬめと濡れて花開くといつの間にか実態は消えてしまい、なんともリアルな夢だったのかと気が付き心冷える。

 同じ夢だわ。

 千絵は夢を楽しんだ。

 思うに任せ花芯を開いた。

 男が入ってくる。

 ああ、こんな素敵な夢ないわ。

 千絵は男を受け入れる。


 男のものが膣内ではちきれんばかりに膨れ上がる。

 千絵の膣は愛液をだして男の一物を包む。

 男の腰が突き立てて前後に激しく動かす。

 千絵も腰を突き立てて男を迎え入れる。

 お互いが腰を突きたて恥骨がぶつかる。


 男が入れたまま激しく腰前後左右に腰をもどかしく動かし、さらに奥に奥にと入り込んでくる。男はこのまま子宮内に入り込んで千絵の子供にでもなろうというのだろうかというぐらい千絵の中に入ってくる。


 そんな男の一物を逃すまいと膣の襞が絡みつく。

 男はもどかしげに何かを吐き出したいがごとくに、腰をスライディングするように回しながらぐいぐいと押し込んでくる。

 子宮のおちょぼ口が亀頭と口づけをする。

 亀頭は子宮のおちょぼ口を開きさらに中に入ろうとするかのごとくに突き上げてくる。千絵の子宮の中だけに収縮して喜びに打ち震え子宮の中まで男を迎え入れ自分の子供にしたかった。


 変だなと思った時に知恵は思い切りお小水を拭き上げてしまった。

 千絵は寝小便をしてしまった。

 誰もいない一人暮らしの千絵。

 ウーパールーパーが千絵を見つめていた。

 ウーパールーパーと千絵は目があった。


 現の中、店のドアが少し音を立てて開いた感じがした。

 千絵が無意識に目をやると、脱色した髪の毛が少し伸びて髪の毛の黒い色が混じって茶髪風になっていて、ややくせ毛のある髪の男がドアから姿を消したような気がした。

 翌朝ベッドで目覚めた千絵は裸のまま起き上がり、窓辺のカーテンを少し開けて外を見た。良い天気のようである。



VII|今日は日曜日

 元夫の康生に許可をもらって子供二人と食事に行く約束になっている。

 体はなんとなく軽い感じがした。


 そうか、店のソファー汚しちゃったのかなと、千絵は恥ずかしそうな顔をした。

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