C型かふん症
犬屋小烏本部
第1話今年もこの季節がやって来た
―本日未明、○○県××市内住宅地より男女の死体が発見されました。
市内警察は何らかの感染症の可能性が高いと―
さみー。
ねみー。
だるー。
明日もバイトだ。嫌だなー。
と、いつものようにぐだぐだした考えが頭の中を巡る。
季節は暦の上では春。
フリーターという名前の自由人を気取っている自分は、まだ20代も始めということもあって「明日やればいいや」「明日もあるし」と先伸ばしにする癖が未だ抜けないでいる。
独り暮らしのアパートの外からは、春休みに入って元気と暇を持て余した学生たちが騒いでいる。
自分もあんな時期があったっけ。
くしゅん!ずびーーー…
くしゃみが勢いよく飛び出してきた。それも鼻水と一緒に。
自分は昔から花粉症であった。
何も珍しくない。学生時代からクラスの半分以上は花粉症であったし、国内を見ても花粉症ではない人を探す方が困難だというほどだ。
ただ
ただ、今年はいつもより花粉が強い。
喉がイガイガする。
鼻水が出すぎて、なんだか鼻が痛い。
くしゃみが頻繁に出るので、マスクは外せない。
目が痒くて、つい擦ってしまう。見てはいないが、恐らく眼球が赤くなっている。
耳の中が痒くて痒くて、既に痛い。
いつもはこんなに酷くはないのだが…
流石に1度病院へ行った方がいいか?
いや、でも、もっと酷いやつもいるし…
もうちょっと様子を見るか。
そう思ったのがいけなかった。
数日後、自分の症状は異常に悪化していた。
眼も、鼻も、耳も、喉も。
痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
病院へは未だに行けていない。
身体中がギシギシする。
そして、更に数日後。
まさか自分がこんなことになるとは思ってもいなかった。
とうとう身体が動かなくなったのだ。
痛い、痛い?痒い、痒い?
もうなにがなんだかわからない。
動かない体からは、感覚も薄くなっていったようだ。
そして
がさ…
がさガサがさ…
痛い!痛い痛い痛い!!
なんだ!?なにが起こっているんだ!?
体から
くしゅん!くしゅん!
ぶしゃっ
ぼとっ
え?
血?くしゃみで血って出るもんなの?
鼻?口?どっちから?りょうほう
がさガサがさガサがさガサがさガサ
痛い痒い痛い痒い痛い痒い
体から
からだから、樹が、きがはえてきている
からだは もう うごかない
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