第936話 侯爵領運営開始

街や村への行脚が終わったところで、サラたちは本格的な領地の運営を開始する。


まずはローデットから方針でも言われていた住民台帳管理である。

もちろんターフルダ侯爵家が領主のときからある程度の精度の物は存在しても、特に貧民街などの整備が甘かった。そこで過去のものを参考にはしつつ新規に台帳、身分証を管理することにした。

代官地のときと同じつくりで、まずは昔からの家臣団、旧ターフルダ侯爵時代からの文官・武官本人とその家族、そして貧民街からの孤児や元怪我人などを対象にした。また、新領主であるドラセム家とのつながりを重視する神官や商会も率先して申請してきた。

また、領都や街のように門で通行を確認できるところでは新しい身分証の発行を推奨して少しずつ普及を促す。

村でも治療魔法等の恩恵を受けた者などから順次申請がされていくようである。

今後はドラセム家のマントを着た近衛騎士団を文官とセットにした巡回、住戸訪問による精度向上も考えていく。


「なぁこれって、門を通らない地下道とかの裏道があればチェックできないってことだよな」

「確かに、代官地は魔の森を開拓して新たに作った土地だし、城壁も魔法で頑丈なものを作ったから地下道を作るのは難しいだろうけど、この領都や街は昔々からの土地だし、城壁も甘くて堀も形ばかりだったりするよね」

「そうなのね、いっそのこと、領内の領都と街の壁も作り直しちゃおうか」

冷静なリリーが王都に居ることを良いことに、ハリーやサラがミーナたちと悪乗りしていく。ローデットにしても治安や安全面を考えると城壁や堀が良い物になるのは歓迎であるので見て見ぬふりをする。


「よし、早速やるか」

と、領都と5つの街において、今の城壁の周りに土地があるところはそこに頑丈で上を歩ける幅の城壁を新規に構築していく。すでにサラをはじめとしたドラセム家の魔術師団にとっては慣れたものである。余地がないところでは周りに被害が出ないように≪結界≫でカバーしたうえで既存の城壁を取り崩して同様の新規城壁を構築していく。そのうえで周りには十分な幅と深さを持たせた堀を作成し、川等が近くにあれば水も流すようにした。もちろん城門の横には、ストーンゴーレムにしたトロール石像を配置することを忘れていない。

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