第878話 ターフルダ侯爵寄子始末

面倒ごとに巻き込まれたくないサラとしては、目付たちを領都に送り届けるだけと思い、ハリーたちは誰も同行させることなく、≪転移≫だけを行って、領都の手前で別れるつもりであった。

しかしノイハイム伯爵や目付たちから被害者代表として同行を依頼され、領都へ目付たちの部隊とともに入るだけでなく、そのまま中心の侯爵館にまで連れて行かれることになった。


「ターフルダ侯爵、国王及び宰相からの通知がこちらになります」

目付が上座から侯爵に対して通知を渡す会議室において、なぜか目付の後ろにノイハイム伯爵と並んで立たされることにまでなったサラ。

「は、御使者、お疲れ様です。通知、受け取らせていただきました。拝見いたします」

武闘派、軍閥というだけあり、ターフルダ侯爵もノイハイム伯爵やハーフルダ男爵やイトリーザ男爵と同様に引き締まった鍛えられた体格であることが、立派な服を着ていてもうかがい知ることができる。アルメルス神国の幹部たちの丸々太った体型とは大違いであると考えるなど、頭の中は現実放棄をしているサラである。


ターフルダ侯爵は通知書を読み出すとだんだんと顔色が変わっていったが、声は努めて冷静に言う。

「拝見いたしました。これからどのように?」

「書かれています寄子貴族たちをこの場に連れてこられますか?気取られることなく」

「はい、本日もそろって訓練していたところへ急使の前触れがありましたので解散して、一緒に館に戻っております。今は控えの間に居るはずです。おい!」

「は!」

部屋の端に居た侯爵家の執事らしき者が呼びに行ったようでしばらくすると3人の貴族らしい人物たちと共に部屋に戻ってくる。


「ターフルダ侯爵、お呼びでしょうか?」

と1番目に入室した貴族が発言する横で、3番目に入室した貴族が「銀龍・・・」と呟いたのを2番目の貴族が手で制したのが見える。

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