第871話 ノイハイム伯爵寄子

「やっぱりヴィリアン侯爵領とは違って、広大だから全然進まないね」

「仕方ないよね。でも、ドラゴンやワイバーンが森の入り口を数百メートル北上するように焼き払っていたことや、魔物討伐の依頼を無くすどころか、とんでもない量の魔物討伐報告が冒険者ギルドにされたことは、ターフルダ侯爵領でかなりな噂になっているみたいね」

「少なくとも当分は住民への魔物被害が出ないようになったよね。このまま、ターフルダ侯爵一派もドラセム家に手を出すことは諦めてくれると良いのだけど」

「そのことなのですが・・・」

「どうしたの?」

「実はリスチアン・ドラナン騎士爵の女従士へのノイハイム伯爵からの催促の頻度が増えまして。≪簡易契約≫などの効果か、彼女からの情報漏洩は無いままなのですが、焦りが出ているようでして」

「また、ターフルダ侯爵の領軍の訓練も一層激しいものになっているとの報告もあります・・・」

「うーん・・・」



サラ達は夜には王都へ≪転移≫して帰っていたのだが、昼間の不在時間が多かった分、また魔法回復薬やスクロールを製作しての納品、鑑定のためにミケラルド商会へ訪れる。

「いつもながらの貴重品の納品、誠にありがとうございます。ところで・・・」

元ミケラルド商会で、引退した今はドラセム商会の番頭をしているクリストンから聞いたというターフルダ侯爵、ノイハイム伯爵一派のことで情報があるとのこと。

「やはりドラセム家の従士団は犯罪奴隷が多いことが知れ渡っているようで、あまりターゲットになっていないようですが、代官地の職員にしている文官たちが狙われたようです」

「え?文官については特に、ローデット達に追加採用は任せてしまっているから、もう何十人いるのかも分かっていないわ。でも文官だから魔法の話は全く知らないはずよ」

「はい、そうです。我々でもわかります。それでも酒場で酒でも飲ませて聞き出そうしたのかもしれません。もちろん成果はなかったはずですが。で、ご認識のようにドラセム侯爵家の寄子貴族の皆様を更に狙っているとの噂があります。どうかお気を付けくださいませ」

情報へのお礼をしたうえで、神聖騎士団の裏部隊であった第3騎士隊員に寄子貴族とその従士へこっそり護衛するようにさせた。

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