第793話 孤児院互恵

ティアーヌたちが精霊魔法の習熟をしている間に、サラ自身も闇精霊ヴアルに貰った魔導書にあった王級魔法≪影縫い≫を練習している。

これは敵の影を使って動きを止める、もしくは敵が強い場合には遅くするという魔法であり、使いどころは難しいがかなり有用な魔法である。もし曇りである、闇夜である、建物の陰である等の場合には、光魔法で灯りを作ることで影を作らせる応用も考えられる。


最近はアルメルス神国関係の騒動でドタバタしていたが、新たな魔法の習得も出来ていなかったので、6精霊全てとの≪契約≫≪召喚≫達成も含めて非常に機嫌が良くなっているのが周りにも伝わる。

「サラ様、御機嫌ですね。ハリー様と上手く行っているの?」

地頭が良くませている割に空気を読めない孤児に、忘れようとしていたことを指摘されて、サラ本人と周りの大人たちが凍り付く。


そこは気を取り直して、家宰ローデット達をつれて、王都の神殿エリアに向かう。

今年8歳になり孤児院を卒業した8人のかわりに、新たな孤児を引き取るためである。神国での騒動でドタバタしていたが、既に恒例のように思ってくれている神殿エリアの孤児院でも準備がされていた。食事量が増えて経費も増えてくる年長の子供たちのうち、地頭の良い子がドラセム家の孤児院に行くことの期待である。

嫌な話であるが顔のつくりが整っていると引き取り手は多い。整っていなくても、地頭や性格が良ければ引き取り先ができたのである。後天的に対応できることである。

さらにドラセム家の孤児院に行くと卒業後は、今話題のドラセム侯爵家の騎士団、魔術師団、従業員や商会などにそのまま雇用される実績が伝わっている。王都に暮らす子供たちはいくら孤児院に居てもそのような噂に敏感である。孤児院を運営している神殿メンバも、将来に絶望している孤児たちに希望を持たせることができるため、ドラセム家の孤児院への期待が大きい。


サラにしてみると、不相応な年金を国家に貰うようになった思いがあり、ミーナなど孤児の悲惨さを知ったことから社会貢献の一環の想いであるのと、奴隷以外に家臣団を充実させられる方法である実利があるのが孤児院の運営である。

互恵関係にあるため、今回も男女3人ずつ5歳児を引き取る話はすんなりと進む。

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