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魔法の土壁が消滅すると同時に、俺は残った敵を視界内に収める。…アド



『視界内の敵プレイヤー6名の位置情報を認識…捕捉しました』



…よし。



「ふざけるな!ぶっ殺してやる!!」



6人の男達が、それぞれの武器を手に距離を詰めてくる。



「…【サンダーフォール】」



俺は魔法を発動。上空に巨大な光の魔法陣が出現。



「な、なんだ!?」



慌てて警戒する男達。…もう遅い。


魔法陣から稲妻が走り、男達を穿つ!!



「「「ぐわあああぁぁぁぁああああ!!!」」」



小さな雷に撃たれ、男達は消滅。…上出来だ、アド。


【サンダーフォール】…上空から同時に最大十数発の雷撃を放つ、上級魔導士のスキル。威力、攻撃範囲共になかなかの性能だが、扱いが難しい。本来であれば、使用者自身が攻撃対象及び攻撃位置を決定し放つ魔法だ。


そのため、動き回る敵に正確に雷撃を当てるのは至難の業。敵の数が多ければ多い程、その難易度も上がる。放てる雷撃の数は多くても、正確に攻撃対象に狙って当てる事が出来る数は、せいぜい2,3体程度だろう。


だが、その攻撃対象の補足作業をアドに任せれば…複数の敵の動きをアドが追い、攻撃の照準を合わせる。後は御覧の通り…同時に6人の敵を、正確無比に撃ち抜くことも可能!


アドがいれば、スキルの性能を十二分に引き出して行使できる。もしかしなくても、とんでもないスキルなんじゃないか?【管理者アドミニスタ】…



『お褒めに預かり光栄です、マスター』



あぁ、頼りにしてるよ、アド。



「おいおい…とんでもないな。ホントに二人で10人以上倒しちまいやがった…」



ザイが感嘆の声を漏らすが、その表情にはまだ余裕の笑みが張り付いている。気に入らないな…



「いい加減降りて来たらどうだ?…」


「いつまでもヘラヘラ笑いやがって、ぶちのめしてやるよ!」



俺とマイルは振り返り、屋根の上のザイを睨みつける。



「…あ~、まぁ確かに下の連中じゃお前等は手に負えねぇな……ファニ、ゴルト」


「「!!」」



黒装束に身を包むファニがマイルを猛襲!

二本の短剣でマイルに連撃を放つ!!



「なっ!!!」



マイルが大剣でそれを凌ぐが、全ては防ぎきれず、徐々にダメージを受けている!



「マイル!!」



俺はマイルのフォローに回ろうとするが…



ズドォォォン――


「くっ!!?」



衝撃音と共に、全身を甲冑に包んだ大男、ゴルトが跳び下りてきて俺の前に立ち塞がる!



「フーッ…フーッ…」



フルフェイスメイルで素顔は見えないが、荒い呼吸を漏らしながら、ゴルトが大斧を振り上げる!



「っ!!!」


咄嗟に横へ跳んで斧を回避!

振り下ろされた大斧は地を砕き、圧倒的な破壊力を誇示する。一撃の威力は高いが…そう速くはない。



「【フレアボム】!」



俺は距離を取りつつ、掌から火球を放つ!



「なっ!?」



ゴルトは火球を回避するどころか、俺に向かって直進!

魔法がゴルトに着弾し、小さな爆発を起こすが、意にも介さず突っ込んでくる!



「【異能転化オーバーライト】!!」



俺は機動力に優れた【夜の徘徊者ナイトレイダー】にスタイルチェンジし、さらに後退!続けてスキルを発動する!



「【拡散速射ラピッドショット】!!」



無数の矢をゴルトに向けて放つ…だが!



「オオォォォオオ!!!」


「って!!」



ゴルトはその攻撃さえも、気にも留めずに猛進!大斧を横薙ぎにフルスイング!!


ゴリ押しかよ!!?



「【補速逃走クイックラン】!!」



俺は敏捷性上昇のスキルを発動し、退避!…何とか難を逃れる。


…だが、厄介だな。



「フーッ…フーッ…」



一応それなりに攻撃を受けているはずだが、ゴルトのダメージは微々たるもの…。機動力ではこちらがまさってはいるが…敵は圧倒的なタフさを盾に、こちらの牽制攻撃など気にもせずに最短距離で突っ込んでくる…。


重剛戦士へビィクリーガー】…ランクBは伊達じゃない、か。



「くっそ!!…速ぇ!!」



マイルも素早く動き回るファニを相手に苦戦を強いられている…マズイな、マイルとの距離を離されてしまったのも面倒だ…。しかも…おそらくリーダー格であろう男、ザイは未だ高みの見物…いつ攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。



「ウガアアァァァ!」


「おわっと!!!」



ゴルトが唸りを上げて振り下ろしてきた斧を避け、バックステップで再び距離を取る。くそ…邪魔だな。



「仕方ない…」



をやるぞ、アド。



『了解』



まずはこのデカブツを黙らせる!!

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