聖女が戻ってきてと懇願してくるがもう遅い※ざまぁ回

「ジル様」


「なんだ?」


「お客様のようです」


 不死城にいた俺にエリザが声をかけてくる。


「お客様? 誰だそいつは?」


「それが……なんとも申し上げ辛い方なのです」


「申し上げ辛い方? 誰だ? 言わないとわからない」


「それが……」


 エリザは俺に耳打ちをしてきた。


「な、なんだと!」


 俺は耳を疑った。


「それは本当か!?」


「はい。雑用をしているスケルトンからはそのような報告だったそうです。どうしましょうか」


「なんなんだ……」


 追い返すか。いや。なんか理由があるのか。確かめるより他にないか。


「不死城に通せ」


「はい。わかりました」


 俺はこうして、俺がこの状況におかれた張本人と面会する事になる。


 ◆◆◆


「何の用だ? 聖女アリシア」


 俺は不死国の玉座にて、その人物を待ち受ける。最初俺は襲撃か何かをしかけてくるのかと思った。だが、奇襲ならもっと虚をつくだろう。その事から何となく、アリシアに策がない事を理解していた。


 目の前にいるアリシアという人物にはかつてのような邪気がない。俺の知っているアリシアはもっと邪な人間だ。今目の前にいる女性には毒気というものがなかった。何となく疲れている様子だった。


「恥を承知で言うわ! ジル! 王国に戻ってきて!」


 何を言っているんだ、こいつは。俺を追い出した張本人は間違いなく、こいつだというのに。一瞬、聞き間違いかと思った。言葉の内容が理解できない。


「何を言っているのか、理解できない。もっと詳しく説明してくれないか?」


「ジル。あなたの言っている事がよく理解できたの。人間ってなんなの! あいつ等ただの屑じゃない! 自分の事しか考えていないし! 人の事は裏切るし! 私利私欲で勝手に動く! 怪我をすれば働けなくなるし! すぐに休んだりサボりたがるし! もう最悪で私は人間不信になったのよ! この通りよ」


 聖女は額を床につけるような恰好をして頼み込んでくる。


「……そうか」


「何を言っているんですか! 聖女さん! あなたが私のジルを追い出したんじゃないですかーーーーー! ぷんぷんですよ! もう!」


 隣にいるミトラは怒っていた。


「『私の』という部分を除き概ね俺も同意見だ」


「そうよね。国王暗殺の濡れ衣を着せたのは私よね……そんな、虫が良い事はわかっているわ」


「そうだな……だが、お前には感謝している」


「え?」


「お前が俺を追い出してくれたおかげで、俺は俺の居場所を知る事ができた。お前には感謝しているんだ」


「そう……あなたの居場所はここなのね」


 アリシアは寂しそうにつぶやいていた。


「ああ……そうだ」


「ジル様……このお方は」

 

 エリザが聞いてくる。殺すのは容易い。捕らえるのも容易い。虫が火の中に飛んできたようなものだ。逆にいえばその事を理解できない程、アリシアは追い詰められていたという事。


「放っておけ。別にこいつには何もできやしない」


「はい。わかりました」


 アリシアはとぼとぼと王国に帰っていた。


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