234 23年分の距離を越えて①
このままでは落ち着いて話もできないと思い、ヨワは魔法でソファーセットを引き寄せてみんなにかけるよううながした。だがミギリとススタケは座らなかった。
ミギリは王族を前にして大人しくしているが、ひとりそっぽを向き腕を組んで黙している。ススタケはヨワの前に歩み寄ったかと思うと床にひざをついた。
「ヨワ、本当にすまない」
うろたえたのはヨワのほうだ。王族を見下ろすなんて落ち着かない。慌ててヨワも床に座ろうとしたがススタケに制された。
「ススタケさんは謝ることないよ。だって知らなかったんでしょ?」
「ヨワと出会った時もしやと思わなかったわけじゃない。だがシトネに何度聞いても答えてもらえなかったから確信が持てなかった。正直、シオサイが父親かもしれないと言われた時は複雑な思いを抱くと同時に安心もしていた。ああ、俺じゃなかったんだってな……」
「ススタケさんは王族だもの。不倫なんて世間に知られたら大問題だよね」ヨワは自嘲の笑みを浮かべて言った。
「当たり前だ。大問題どころじゃない。だって俺はヨワの誕生日を二十回以上も逃してるんだぞ!? それに幼稚園入園祝いに小学校入学祝いに中学校、はじめての運動会も学芸会も遠足、水泳大会――」
「あのちょっと待ってください!」
問題視している点にずれが生じている気がしてヨワは慌ててススタケの話を遮った。
「私の存在を迷惑だと思わないの?」
「迷惑? とんでもない! 俺はシオサイに嫉妬してたくらいだ。堂々とヨワは俺の娘だって言い張れない自分が情けなかった」
「本当……?」
ヨワの隣で終始うつむいて話を聞いていたシトネが驚いた顔を起こした。
「俺は家や身分にこだわる男じゃないって知ってるだろ。なんだ。そんなこと気にして教えてくれなかったのか」
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