100 僕はユンデ!③
同年代の青年にやさしく声をかけられて浮かれるいつものヨワはいなかった。
でもそれはそれで、不思議なことね。
「そいつがいい奴と決めつけるのはまだ早い
ぞ」
「ヨワが信じてくれたんだからいいじゃん。リンは黙ってて」
「初対面の奴に指図される筋合いはねえな。とりあえず離れろ」
リンとユンデはどうやら馬が合わないようだ。ヨワとユンデの間に腕をねじ込んできたリンの顔をユンデが押しやり攻防がはじまった。ヨワは一歩離れてどうしたものかと見守る。リンの片手がふわふわの赤毛を掴み、ユンデの手はリンのあごと耳にかかっていた。
「なんで邪魔するんだよう!」
髪を引っ張られる痛みに耐えかねて頭を振ったユンデの頭突きがリンの鼻に当たった。
「会話するだけなら抱きつく必要はねえだろ、このセクハラ野郎!」
リンの指が勢いあまってユンデの鼻の穴に刺さる。あれは痛そうだ。
「違うもん! コリコ祭りにヨワを誘いに来たんだもん!」
「コリコ祭り?」
首をかしげた拍子に力の抜けたリンとユンデの額がぶつかった。ふたりは同時に痛みを訴えそろって額を押さえた。
「仲いいね」
『どこが!』
重なるふたつの声にヨワは堪えきれなくなって笑った。
コリコ祭りは年に一度、コリコの樹が花をつける五月の中旬に開催する大祭だ。その日、コリコは街も城も草花で飾りつけられ、野外区の町からも港町からもたくさんの人が集まってくる。人々が楽しみにしているのが出店だ。海の向こうから珍しい物を船いっぱいに乗せた商人たちがやって来るのだ。異国のドレスをまとった舞踏会、各国の料理や酒の味比べ、美術品の競り市といった数々の催し物があっちこっちで開かれる。
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