59 クリスタル観察③
バナードはしゃがみ込み、多くの野菜を育ててきた手でクリスタルの実をなでた。きっと自然を尊び愛する〈ナチュラル〉としても同じ思いだろう。
ロハ先生に助手にならないかと誘われた時、正直ヨワは鉱物学に興味を持っていなかった。ただ行くあてがなかったからうなずいた。
だがクリスタルの存在を知ってから、その面白さに気づいた。ユカシイが大学へ進学することを決めたのも、クリスタルが目当てだ。
この石は多くの人を惹きつける。今も、リンはすっかり目を輝かせてクリスタルを見つめている。本当に、この場所が盗賊に荒らされなくてよかったとヨワは息をついた。
「ヨワ。実の数を確認して、大きさを測って。あと彩度もね」
「俺も手伝うよ」
ロハ先生の指示に従い、ヨワはリンとともにクリスタルの実の観察をはじめた。
取り払った布に縫ってある番号を確認し、リンがメジャーで直径を測る。ヨワはノートに番号をふって、大きさと色と艶、透明度を五段階で評価し、気づいたことを書き込んだ。
布で隠してあるクリスタルの実がどこに埋まっているか探すのは簡単だ。ちょっと魔力を実に流せばいい。
すると青白い光が根を伝って無数に伸びていく。その時、一際大きく強く光ったところがクリスタルの実だ。
リンはヨワが指さした布を取って首をかしげた。
「あれ。これなんか汚いぞ」
その声に、細かな根を数えるのに苦戦していたロハ先生が勢いよく顔を上げた。
「もしかして腐ってるのか。いやでも鉱物なんだっけ」
「ちょっとリンどいて!」
駆け寄ってきたロハ先生はリンを突き飛ばして、濁るクリスタルの実にかじりついた。リンの尻は強打される前にヨワの魔法で助けられた。その瞬間、ロハ先生から絶叫が上がる。ヨワとユカシイは思わず肩が跳ねた。
「ヨワ、もう一回魔法やって! ちょっと強めに範囲広く!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます