29 お昼ごはん③
「登山に参加する人数はこれで全員なんですか。講義を聞いていた生徒はもう少しいたはずですけど」
ヨワとユカシイは顔を見合せ肩をすくめたりため息をついたりした。
ロハ先生はから笑いをこぼし、サンドイッチを見つめたまま答えた。
「うちは人気がないからねえ。実は正式に所属しているのはヨワとユカシイだけなんだよ。講義は興味のある人なら誰でも受けられるんだ。事務に申し込みさえすれば在学していなくても当日飛び入りでも歓迎さ」
「そうだったんですね。知らなかった」
「六年制の小学校と中学校を卒業すれば義務教育は終了だからね。大学まで進学するのは学者を志す者かマニアくらい。専門職に就きたければ専門学校に行けばいいのだし、大半は中卒で就職か結婚する。あ、つまり大学にいる人たちって興味の分野がものすごく偏っているんだよ」
リンは深くうなずいてヨワとユカシイを見た。不意のことでヨワは口端についたソースを慌てて拭った。
「ヨワとユカシイはなんで大学進学を決めたんだ?」
正直ヨワには答えにくい質問だったが、リンは最初の回答者をヨワに絞ったらしくじっと注視してきた。ユカシイに振ってしまえばそのまま流すかてきとうに「私も同じ理由」と言ってごまかせたのに。ヨワはちらりとロハ先生を見た。
「ロハ先生が、声をかけてくれたから」
「あたしは自分の魔法を完璧にするためよ」
ヨワのあとにすかさず答えてくれたユカシイに感謝した。リンはいぶかしげな視線をヨワに送りつつも注意をユカシイに移した。
「鉱物学でどうやって魔法を完璧にするんだ」
「クリスタルを応用するのよ」
ユカシイの言葉にロハ先生は身を乗り出して飛びついた。
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