第13話 空気になっていたようです
「……どうしたのよ、そんな変な声出して」
「いや、何でもないです」
「……ほんとにありがと……」
……返答しにくいな、大したことはあまりしてないし……。頼まれたからやっただけであってボランティア精神が特別強いわけでもないしなぁ……。
まあ、とりあえず無難に返しておくか。
「……いえ、私としても当然のことをしたまでなので、そんなに―――」
「いいえ! それほどまでのことをしたのよ!」
沙保先輩が机に乗り上げるほどの勢いで動いたので、胸がぶるんと震えた。
それに否応なしにその部分を見てしまうというものが男の定めというものだ。
「……九十九君……? おっぱいなら私も大きいよ??」
近くでその様子をずっと見ていた佳保先輩がとんでもない爆弾を投下した。
「ふぇ???」
「―――へ? ……ちょっ、佳保!! アンタ何言ってんのよ!!」
佳保先輩のデリカシーのなさに沙保先輩が耳を真っ赤にして抗議しに行った。
「……え? ……おっぱいが大きいと男の子が喜ぶって話じゃないの?」
(シッ!! 声が大きい!! あのね、佳保? そういうのは男子の前で言ったら勘違いするってわからないの?)
「……何を勘違いするの?」
断片的な情報しか聞き取れないので何が勘違いと言っているのかわからないが、俺としてもデリカシーがなかったな―――と今になって反省する。
「なんか、ごめんなさい……」
「いや、九十九君は悪くないから」
「……そうだよ、九十九君は悪くない……もとはと言えばこのでかパイがあんな行動を取った方が悪い」
「はぁ? あんたも同じでしょうよ! どう考えても正常じゃないそのデリカシーのなさを直したらどうよ???」
この時、レンは生徒会のことを詳しく知らない―――正確には生徒会選挙の時に寝ていたため、知る由を得なかったがこの2人はいつもこのような感じではない。
周りの生徒からは、厳しいながらもこの学校のすべてを知り尽くし、学校生活をより豊かにした美少女コンビとして慕われていたため、そのイメージからは絶対に連想できないであろうイメージがレンの頭に植え付けられていた。
「……仲がいいのか、悪いのか……」
顔には笑顔を張り付けながらも、今まさに目の前で行われている罵詈雑言の嵐を前に戦慄した。
しかし、このままでは埒が明かず1限目が始まるまで気づかないんじゃないか? と思った、と言うより心配したの方が正しいか。俺は別に遅刻してもあまり問題視されないだろうし。彼女たちの方が困るんじゃないか??
「―――あのー……」
「「あ」」
どうやら俺の存在が罵詈雑言の嵐とともに消し飛ばされていたようだった。
「ご、ごめんね、存在忘れていたわ、あはは……」
沙保先輩の乾いた笑い。それに対してあっけらかんとした態度の佳保先輩。
「……九十九君かわいそう」
「あんたも謝りなさいよ」
「……ごめんね」
「いや、あの……それはいいんですけど……次の授業大丈夫ですか?」
2人は顔を見合わせる。
「忘れてたわ」「……忘れてた」
時計を確認すると、あと5分で1限目が始まる。
この二人は口論になると周りが見えなくなるタイプなのか? どうやって会長、副会長になったんだよと思ったが、それは口に出さない。
俺たち3人は授業に遅れないようにするために、猛ダッシュで教室まで走ったが―――正確には先輩たちの後についていったのだが―――案外近かった感覚がした。さっきはおそらく遠回りをしていたのだろう。次はもう迷わない……はずだ。そもそも呼ばれることなんてほとんどないだろうし。問題さえ起こさなければ、だけどな。
そして、自教室まで送ってもらった後、俺はいつものヒロたちから質問攻めを浴びせられたことは言うまでもない。
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