第197話 クエストでの途中にて
新たな『黒金の翼』として、毒の沼地調査のクエストに向かう事になった。
片道二日の行程はお互いが知り合う為の会話の時間に費やされた。
途中、六体のコボルトとに遭遇したので腕慣らしに討伐する事にしたのだが、相手が弱すぎて連携の必要も無くあっさりと勝負がついた。
ラグーネが一掃し、逃げるコボルトは、タウロが弓で仕留めた。
「タウロは弓術も優れているのだな。前衛職の立ち回りが上手いからそちらを専門にしていると思ったぞ」
ラグーネがタウロの腕に感心して褒めた。
「ラグーネも、槍の腕も相当だよね。剣使いかと思ってた」
「うむ。『竜騎士』は槍が得手の者が多い。私もその一人だ。ただ、周囲に障害物があったりすると槍は振り回せないから剣を使用する事もある。私の場合、マジック収納を持っていると使い分けが簡単だからそうしているのだ」
不器用そうなラグーネだが、意外に器用だ。
薬草の知識もそれなりにあるし、勉強している。
薬草採取時に行っていた三人での立ち回りについての話し合いも理解が早く、説明が楽だった。
今の三人での役割は、攻撃、盾役のラグーネ、同じく攻撃と盾役、後衛との間も取り持つタウロ、そして、魔法と回復、サポートのエアリスの後衛だ。
タウロの弓は、接敵までの間では使用するが、今は、ラグーネと前衛二枚で立ち回る形にした。
敵の数にもよるが、ラグーネ一人に攻撃と守り、どちらも負担させるのは荷が重い。
前衛はやはり二枚はいないと、厳しいと思ったタウロの判断だった。
だが、盾で身を守り槍で隙きを突く攻防一体のラグーネのスタイルなら、意外に攻撃力はそんなに落ちないかもしれない。
自分も剣と盾、弓との使い分けを戦いの中で上手くできれば、面白いかもしれない。
タウロはその事を二人に伝えると、ラグーネは頷き、それならば、自分が盾で敵を引き付けて守りに徹し、その時は剣を得物にした方が上手く立ち回れそうだと思うのだが?と修正案を出してきた。
エアリスも、じゃあ、私もその時は支援系魔法でラグーネの耐久力を上げた方がいいわよね?と提案する。
三人とも道を並んで歩きながら、尽きる事無く話が弾むのであった。
夕方になり、野営する事になった。
思ったより、早く進んできた為、途中に泊まる予定だった村を通り過ぎてしまったのだ。
「ごめん、話に夢中になって、見過ごしちゃった……」
「それは私も同じだ」
「そうね、予定より進み過ぎた事を指摘できなかった私も悪いわ」
三人とも苦笑いすると野営の準備を始めた。
早速、タウロは魔道具『ランタン』を出して、周囲を明るくする。
ラグーネは油のランタンをマジック収納から出そうとしていたので、これには驚いた。
「タウロ、なんだそれは!?そんな明るく照らすランタンを見た事が無いぞ!?」
こうなるとエアリスが、魔道具『ランタン』について説明を始める。
ラグーネはその説明に、
「タウロは失われた魔法陣の研究家でもあったのか……。竜人族の村でも、あまり研究が進んでいないからこれがいかに凄いかよくわかるぞ!」
と、ひとしきり感心した。
「研究と言っても、その研究のほとんどは役に立たないものばかりだったんだけどね。でも、一部でこういう役に立つ物が作れたのは嬉しいかな」
タウロは控えめに喜びを見せた。
タウロはさらに、テントを出して、簡単に組み立てると、ラグーネはこれもまた見て感心する。
極めつけは料理だった。
家で前もって大量に作ってマジック収納に保存してある物をラグーネに出すと、感動して食べてくれた。
特に、とんかつが気に入った様で、
「こんな食べ物、食べた事が無い!」
と、言うのでタウロも沢山出して上げるとぺろりと完食してしまうのだった。
「一応、ダンサスの村の小人の宿屋の名物料理になっているから、村にいる時はそこで食べられるよ」
と、教えて上げるとラグーネは後日から「小人の宿屋」の揚げ物料理の常連客になるのだが、それはまた別の話。
そんなやり取りをしつつ、三人はクエストに向かうまでの行程で一層三人の距離を縮める事が出来たのであった。
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