第182話 チーム解散か?

 我が家に到着すると、案の定、そこにはあの二人組の女性が住み込んでいた。


「何あんた達?また、言いがかりつけに来たわけ?」


「言いがかりも何もここは僕達の家ですよ」


 エアリスが激高する前に、タウロが代弁した。


「はぁ?ここは、ルメヤ君から借りてるのよ、あんた達の家なわけないじゃない」


 レンという盗賊職の女が馬鹿にした様に鼻で笑った。


「いえ、それは、間違いです。ここの家賃は元々、僕達が払ってます。シンとルメヤには留守の間の管理を任せていただけです。なので、出て行って貰っていいですか?」


「ちょっと何言ってるかわからないわ。文句があるなら、ルメヤ君に言いなさいよ。それが本当ならの話だけど?」


 そこに、連れである治癒士のユウが家から出てきた。


「また、あんた達?しつこいガキね」


 呆れたという風にユウは首を振って大袈裟にリアクションした。


「この二人が、今度は、ここが自分達の家だって言い出したのよ。本当、さっきから言いがかりばっかりで嫌になっちゃうわ」


 レンもユウに賛同だと言わんばかりに相槌を打った。


「あんた達いい加減にしなさいよ!ここは私とタウロがお金を出して借りてるの!改築だって二人でやったんだから!」


 エアリスがタウロに止められていたが、我慢の限界とばかりに前に出た。


 そこに、大きな声を上げながらシンとルメヤが走ってきた。


「おーい!タウロ、エアリス!久しぶりー!」


 女二人組と、タウロとエアリスはそっちに振り向く。


 タウロとエアリスにとって久しぶりの仲間の姿だが、今回は複雑な状況だ。

 素直に喜ぶには最悪のタイミングであった。


「ちょっと、この二人組、どうにかしなさいよ!」


 エアリスが、真っ直ぐにシンとルメヤに怒りをぶちまけた。


「ルメヤ君、シン君!このガ……子供達がさっきから私達に言いがかりをつけてくるのよ!助けて!」


「そうよそうよ!」


 レンとユウは、猫を被った様にルメヤとシンに助けを求める。


「ただいま、シン、ルメヤ。この状況を見ればわかると思うけど、僕達の家、この二人に貸してたのね?」


 タウロは、静かに言うとニッコリと黒い笑みを浮かべる。


「「二人ともすまん!」」


 シンとルメヤは開口一番、タウロとエアリスに謝るのだった。


「ちょ、ちょっと!何で謝るのよ、二人とも!言いがかりつけてきたのはこのガキどもよ!」


 レンとユウが動揺する。


「ささっと荷物まとめろ。この家の住人が帰ってくるまでって前にも言っただろ?」


 ルメヤが、二人組の側に立つ事なく言い切った。


「え?あれ、私達に貸す為のただの口実でしょ?もう、何か月もそんな話してなかったじゃない!」


「だから違うって!押しの強さに言いにくくなってたけど…、この家はこの二人のものなんだよ!そして、タウロは『黒金の翼』のリーダーだ!エアリスもそのメンバーだから!」


「「え?」」


 レンとユウの動揺は続く。


「シンにルメヤ。この二人組、『黒金の翼』のマークを背中に付けてるんだけど、理由説明してくれる?」


 今度はエアリスが、静かにニッコリと黒い笑みを浮かべて聞いた。


「そ、それは……、せがまれて……。でも、チームに入れたつもりは全然ないから!あくまでもタウロ達が戻って来るまでの急造チームだったんだ!」


「そう!意気投合してチームを組んでいるだけで、この二人が勝手に『黒金の翼』を名乗りだして背中に刺繍も入れたからいつ注意しようかと困ってたんだ!」


 シンとルメヤは必死で言い訳をする。


「でも、彼女なんでしょ?」


 エアリスの追撃は止まらない。


「……はい。そこはノリと勢いで交際に発展しまして……」


「……俺も、タイプだったのでそういう関係になった……なりました」


 シンとルメヤは冷や汗をダラダラ流しながら、敬語で言い訳をした。


「……それがあって、言いづらくなったっと?」


 タウロが助け舟のつもりでフォローした。


「「はい……、そうです。ごめんなさい……!」」


 シンとルメヤは、大きいからだを縮こまらせて土下座した。


 この光景に、完全に悪役扱いされた格好のレンとユウが面白いはずがない。


「ちょっと、二人とも!私達の彼氏なんだから、私達を庇いなさいよ!そもそも、こんなガキ二人に、頭下げて恥ずかしくないの!?」


「うるさい!話がややこしくなるから、ちょっと黙ってろって!」


 ルメヤが、レンの発言に怒った。


 どうやら、最初に危惧した通りではなかった様だが、男女の痴話喧嘩で問題は済みそうだった。


 とりあえず、この二人をとっとと追い出して、家でゆっくりしたい。


 タウロとエアリスはやっと真相がわかって、疲れが一気に押し寄せてくるのであった。

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