第115話 12歳になって
タウロ達チーム『黒金の翼』は、E-ランクからEランクに昇格した。
シンとルメヤは大いに喜び、このまま順調に行けば、Dランク帯もすぐだな!と、盛り上がるのだったが、タウロは二度目だったので比較的に冷静だった。
エアリスも冷静だったが、彼女の場合、
「私達の実力はこんなものじゃないもの。まだ、通過点よ!」
と言うくらいの自信があったからだった。
仲間が色んな形で喜ぶ中、実のところ、実力的にはもっと早く上がっていたのでは?とタウロは推察していた。
だが、支部長のクロエは多分、タウロとエアリスの年齢を考えて慎重に上げていると見ていた。
クロエにしたら、この支部の未来を背負う地元期待の新星チームだ。
慎重に育てていこうとしていてもおかしな事ではない。
タウロにしても、この三人には才能を感じているので今は地力をつけて慢心する事なく確実な道を歩んで欲しいところだ。
親の様な心境で仲間を見守るタウロだったが、本人的にはこの世界を満喫してのんびり過ごせればよかったのであまり先の事は考えていないのだった。
タウロはEランク昇格と共に十二歳になった。
この世界では誕生日を祝う風習はほとんど無いので何か起きるわけでもなく、いつも通りクエストに出かけてクリアし、ギルドに完了報告をして家に帰ってきた。
家に帰るとうちの前に商人のマーチェスが待っていた。
「こんにちは。どうしました?マーチェスさん」
「お帰りなさいタウロ君。実は冷蔵庫の大量注文が入りまして!注文先が王都に次ぐ大都市オサーカスの街なんですよ!」
マーチェスが一人興奮気味に報告してきた。
「それは良かったですね。製造は間に合いそうですか?」
タウロも嬉しい事だが落ち着いて受け答えする。
「はい!タウロ君の以前のアドバイス通りあらかじめ在庫は作り続けていたので丁度、数日中には数は揃います。そこで、提案なんですが……」
「はい?」
「タウロ君のチームに私の護衛と運搬をお任せできないかと!」
なるほど。
タウロはすぐに納得した。
自分は開発者本人だし、マジック収納持ちなので何台もの荷馬車いらず、さらに冒険者、そして、まだ、Eランク帯なので依頼料も安上がり、オサーカスの街まで距離はあるが、一見、荷物の無い商人一人の護衛ならEランク冒険者チームで十分だろう。
それでいて、『黒金の翼』は実力派腕利きチームだからさらに安心である。
マーチェスはまだ、新興の商会なので資金も心許ない。
ここで、オサーカスの街のルートが開拓できるのは、大きい。
これはチャンスであり、モノにしたい。
となると冷蔵庫の開発者であり、商会のスポンサーであり、頼れる知恵者のタウロにすがりたい。
色んな思いがあっての直接の依頼だった。
「わかりました。一応、メンバーのシンとルメヤに話を通しますが、多分、OKしてくれると思います、ですが念の為。あ、ギルドにも話通しておいて下さいね?こちらは直接仕事を受けるわけにはいかないですから」
「も、もちろんですよ!早速、今からギルドに行ってきます!ありがとうタウロ君!」
マーチェスは、タウロに感謝を述べると、すぐ、ギルドの方向に走っていくのだった。
「オサーカスの街はここから一週間くらいかしら?」
エアリスが日程を思い浮かべて逆算してみた。
「そうなの?どういうところかな?」
「海に面した港町よ。国の貿易の中心地になってるところね。私は行った事ないけど」
「へー、そうなんだ。あ、シンとルメヤにも話に行かないと」
そう言うと、タウロはお隣であるシンとルメヤの少し離れた家に向かうのだった。
シンとルメヤに護衛の依頼内容を話すと即答で快諾だった。
二人は大きな街は行った事が無いのでそれが国で二番目の大都市と聞いて断るわけがなかった。
「やったぜ、噂に聞く都会ってやつを見てみたかったんだよな」
ルメヤが嬉しそうに言う。
「ダレーダーの街より大きい街は想像できないなぁ」
シンも楽しみでしょうがないとばかりに想像を膨らませようとしたが失敗した。
こうして、全員納得の元、タウロ達は護衛クエストを引き受ける事になるのだった。
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