第98話 ダンジョンの「死」
『核』を壊す事が決定して、誰が壊すかという話になった。
壊して何が起こるか誰にもわからないのだ。
みんな慎重にもなる。
「俺が壊すよ」
ボブが名乗り出た。
「元々、これを発見するきっかけになったのは俺が言い出しっぺだからな。責任は最後まで自分がとるよ。それに何かあった時は走って逃げる。俊敏さには自信があるからな」
「じゃあ、僕も見届ける為に一緒に残ります。僕も俊敏さには自信ありますし」
タウロが、名乗り出た。
B-チームのリーダーが少し考えたが、
「また、オークが沸かないうちに早く終わらせよう。みんなダンジョンの外に出ろ」
一行は走って出入り口に向かう。
エアリスはタウロに「無理しないでね?」と、声をかけるとみんなと一緒に立ち去った。
ボブがみんなが去ったのを確認すると、
「じゃあ、壊すよ?」
と、合図を送ると『核』に剣を振り下ろした。
ガキン
『核』である水晶のような石にひびが入った。
だが、何も起きない。
砕かないといけないようだ。
ボブは何度も剣を振い、『核』は少しずつひびが入るが中々砕けない。
オラ―!
ボブが気合いを入れて剣を振り下ろした。
キン
『核』の硬さに逆にボブの剣が折れてしまった。
「じゃあ、僕がやりますね」
タウロが小剣を抜いた。
「……すまん、頼む」
ボブが申し訳なさそうに、言った。
タウロは台座の上に乗ると、ヒビの入った『核』の隙間に小剣を突き刺してぐりぐりと押し込む。
さらにマジック収納からトンカチを取り出すと小剣をノミの様に打ち込んだ。
何度かトンカチで打ち込んだ瞬間だった。
『核』から、無数の光が溢れ出るとガラスが割れる様な小さい音と共に石は砕け散った。
するとそのタイミングで脳裏に『世界の声』がする。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の一つ<
「タウロ!床や壁の光が消えていくぞ!?」
ボブが警告する。
すぐにタウロは光の精霊魔法『照明』で周囲を照らした。
それと同時に完全に床と壁の光は消えた。
そして、ダンジョンが”死んだ”のがわかった。
さっきまでの艶のあった床や壁がその生命力が失わて、ただの石くれになったのが二人にも伝わったのだ。
想像に反してダンジョンが崩れ落ちるという事は無かった。
「終わったな……」
ボブがホッとしたようにつぶやいた。
「……そうですね……、うん?」
台座の奥に地面が盛り上がった部分があった、『核』が壊される前に何か生み出そうとしたようだ、『真眼』で確認すると「宝箱」と表示された。
ボブがタウロを促して、ここから出ようとしたが、タウロはボブを呼び止めると地面を指さして、
「あそこに何かあるので掘ってみていいですか?」
と、ボブに聞いた。
「うん?そうなのか?手伝おう」
二人で床の石を剥がして土を払うと文字通り宝箱が出てきた。
中身は確認できないがこの場合、
「よくこれに気づいたな」
ボブが呆れたが、開ける様催促した。
「じゃあ、開けます」
宝箱を開けると中に一本の弓が入っていた。
地味で一見、高価なものには見えないが『真眼』で視ると「アルテミスの弓」と表示された。
価値が非表示で、その能力も非表示だった。
こんな事は初めてなので呪いがかかってるタイプかとも思ったが、そんな雰囲気もない。
「弓か、俺は使わないから、タウロが貰っとけ。ほら、さっさとマジック収納に入れてみんなの元に戻ろう、心配してるだろうからな」
タウロは頷くと、宝箱ごとマジック収納に入れると、ついでに台座も迷宮核の欠片も、持って帰る事にした。
外に出ると案の定みんなが様子を伺いに戻ろうとメンバーを編成してる最中だった。
「タウロ、大丈夫だった!?何も起きなかった?」
エアリスがタウロに歩み寄る。
続いてシンとルメヤもタウロを囲んだ。
「とりあえず、ダンジョンは死んだみたいだから、もう、魔物が沸く事はないはずだよ」
「そういう事だ。おかげで俺の剣は駄目になっちまったけどな。ははは!」
ボブが笑ってタウロの頭をポンと叩く。
「そうか、ならばこのクエストは全て解決だな。撤収するぞ」
B-チームのリーダーが言うと、一行は頷き、夕暮れの中、ダンサスの村に戻る事にした。
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