第41話 高いお買い物
タウロとミーナはある目的の場所に着いた。
目の前には王都の魔道具通りで大きい老舗ブランド店があった。
前回、店員の態度にカチンときたので嫌がらせで見るだけ見て何も買わずに帰ったお店だ。
今日は二人は前回以上に堂々としている、今回はれっきとした”お客様”だからだ。
店内に入ると、「いらっしゃいませ」という言葉と共に「あっ」という声が店員の一人から漏れ出た。
「い、いらっしゃいまーせ。今日も何か見ていかれまーすか?」
前回の事で、精いっぱいの皮肉だろう、店員にもメンツがある。
タウロとミーナは視線を合わせて不敵に笑うと、
「じゃあ、これを下さい」
と、あの商品を指さした。
「お、お客さま、こちらの商品は前回もご紹介した通り、この『マジック収納(大)リュック型』は白金貨十枚で……」
「はい、これを下さい」
やり取りを窺っていた他の店員に緊張が走る。
買うと言って防犯魔法を解除した直後に盗みを働く者がいるのだ、この店のマニュアルに従って、お店の扉に店員の一人が近づくと鍵を閉める。
「ちゃんと払いますよ、ほら」
タウロはお金の入った革袋から白金貨十枚を出して、店員の手に乗せた。
店員全員が、それを見て大いに驚いた。
「あと、以前見せて貰った小さいポシェット型のマジック収納(小)も欲しいのでまけて下さい」
今度はミーナが驚いた。
「タウロ、それ、買う予定になかったわよ」
「ミーナさんへの臨時報酬の一部です」
「だって、それ、白金貨一枚だよ?さすがにそれは……」
「何言ってるんですか、この一か月、依頼主の急な変更で大変な心労をおかけしましたからこれぐらいは出させて下さい。」
本当はミーナが今回の報酬とこれまで貯めていたお金で買う予定だった品である、嬉しくないわけがない。
「……ありがとう、じゃあ、遠慮なく報酬として頂きます」
この後、タウロは後から現れた店長から直接値切り、ポシェットタイプを三割まけさせる事に成功するのであった。
その直後。
「特殊スキル【&%$#】の発動条件の1つ<金にものを言わせる者(マジック収納)>を確認。[マジック収納(極)]を取得しました」
また、意外なところでの『世界の声』に驚くタウロ。
それも、支払いを済ませた直後に覚えるとか……、能力で覚えた以上、白金貨十枚のリュックは無用の長物になってしまった。
ため息をつくタウロを見て、
「やっぱり、止めとく?」
と、勘違いしたミーナが声をかけてきた。
「あ、違いますよ、このため息は……」
ミーナの耳元に近づくと耳打ちした。
「ここだけの話、今、『世界の声』がして、マジック収納の能力を得たんです」
「あ……」
二人は苦笑いするのであった。
この後も二人は買い物をして回った。
何しろマジック収納があるのだ、お金が続く限り、何でも沢山買いたい放題だ。
マジック収納内は時間が止まっている、なので、生ものも傷む事が無い。
ミーナは王都の珍しいお菓子や、食べ物を家族に買っていた。
ずっと、食べさせたかったそうだ。
タウロも、香辛料や砂糖、サイーシの街にない、食材を大量に買っていく。
店頭から商品が無くなるお店が続出した。
タウロとミーナは防具屋にも寄った。
ミーナはポシェットに使うはずだったお金が丸々残っている、装備を整える事にしたのだ。
タウロはそもそも、防具を持っていなかった、薬草採取中心の冒険者だったので必要性がなかったのだ。
だが、王都に来る前にE-ランクに上がった以上、魔物討伐クエストも受けなくてはいけなくなる、当然の買い物だった。
防具はミーナに見て貰った。
タウロには防具の価値はわかっても、自分に向いてるか不向きかはよくわからない、ここは先輩冒険者に選んで貰うに限った。
ミーナは、まだ子供で成長期なので高い物を選ばず、革製の動きやすい物を選んでくれた、確かにすぐ着れなくなる可能性があったので納得だった。
ミーナは上位の魔物の革から作られた鎧を選んでいた、軽くて丈夫、火耐性があるらしい、中々の値段だったが冒険者は装備への投資を怠ったら死に直結する職業なのでミーナは惜しげも無く大金を支払っていた。
こうして二人は一日、買い物で時間を過ごしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます