今日から俺は転校生ってことで
@iwashipasuta
はじまり
君と出会い君と行くお嬢様
私の一日はまず乾布摩擦から始まる。朝5時、鶏の声とともにゆっくりと起き、雨戸を開け上半身裸になり手拭いで背中をこすりあげるのだ。東雲とも黎明とも言える一時、澄んだ空気を吸い込みまるでこの世界に私一人取り残されたのではないかとさえ思う。三十分かけて体を温めた後は木刀による素振りである。7時、許嫁が朝食を作り終わるまでこれは続く。
無心で降り続け木刀と一体になったかと思った所で味噌汁と何とも言えない釜炊きの白飯の香りが空腹を自覚させた。好きでやっていることだからと言われているが申し訳ないと毎度思う。軽く井戸水で手拭いを濡らし汗を拭いた後居間へ向かう。素朴だが愛嬌のある許嫁から茶碗を受け取る。味噌汁、茄子とキャベツの浅漬け、昨日の肉じゃが。味が染みいいごはん受けとなるだろう。いただきます、と手を合わせまず茄子の浅漬け。やさしくも程よい塩気で飯が進む。味噌汁も食感のいいわかめが嬉しい、肉じゃがは煮崩れしつつも無類の味で順調に満腹中枢を刺激させてくれる。米一粒残さずごちそうさま。風呂に向かい今一度気分を引き締め今日も慌ただしい一日が始まるのだ。
でも今日は忙しかったからプリコネのログインだけしといて学校にダッシュした。
旅の始まりというものは何時も期待と不安が入り混じるものである。父の失踪、母の失踪、妹の失踪に姉貴の失踪という多種多様かつ複雑な理由によりだだっ広い平屋にただ一人残された俺は今後のことについて悩んでいた。
通っていた高校は学費が止まり退学、雀の涙程の預金で毎日命をつなぐようにサバ缶を買って食べていたがプリコネ(プリプリコネコネットストーリーズ、全世界アクティブユーザー300人の世紀末大人気ソシャゲ)に押しの限定キャラである『タイ焼きをくわえつつ逆立ち放尿するラン○・リー』SSR星5が登場したため超全力全開プリンセスストライクした次第である。14万突っ込んで出たはいいものの明日のサバ缶すら買えない状況であった。ヤバいですね☆
気分はどん底である。流星に股がって急降下するのは通帳の数字だけだった。古い平屋なので多分雨漏りするし『ザーッ!!』なんで今降って来るんだろう、いつからこのマンホームは音声認識のディストピアになったんだ。やはり俺が令和のリーディングシュタイナーだと言うのか…?じゃなくて先ずはお金である。お金は全てを解決する、おじいちゃんの知り合いの博徒の子分のお馬さんが大好きな兄ちゃんも血眼で言っていたから間違いない。仕方ない。ここは特『ガラガラ』技であり趣味である『相手の乳首(女性限定)を舐る事によって朝食の献立を33%当てる特技』を道端でしてお金をあt「なに唸っているんですか?」
「ウヒャア!すいませんすいません!退学直前の高校で憂さ晴らしに食堂の麦茶タンクの中身全部めんつゆにしたのは謝りますから!」
「まだ何も言ってないですけど…」
気がつけば藍色の小袖を身に纏った高校一年生位の、美少女とまではいかないが素朴で安心感を抱かせる可愛らしい娘g
「って二の腕!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「は?」
純白の穢れを知らない雪原を切り取ったが如く完璧な二の腕がそこにはあった。ぴったりとしたハリがあ「あのですね」りつつも水が飛べばしっとりと「実は…」馴染み、絶妙なカーブを描きつつ滴り落ち最後は朝露の「から許嫁になれと…」乗った薔薇のように香りを放つであろう…今まで妹の二の腕は山に例えるなら「資金援助も当家が…」ばK2だったがこれは世界3位に下方修正する他あるまい。正に聖遺物。令和のイチイバルと化した「あのー、聞いてます?」今まさに目の前でその発達途中の肉付きを口いっぱいに頬張ばろうと…
「滅!」
「ギャア!」
涙骨を指で穿たれ目が覚める。ここは一体今まで俺はどこで何を。
「全く…こんな変態とは思っていませんでしたよ…着物の隙間ジーっと見て、なんなんですか?へんたいふしんしゃさんですか?」
「は?」
なんだこいつ…いきなり出てきてキ○ウカたんの名言を奪いやがって…あの陶器のような二の腕はお前には10年遅いわタコ。ちょっといい二の腕してるからって負けるものかよ、ハロウィン衣装天井まで出ない呪いをかけてやる。
「ま、そういうことなんでよろしくお願いしますね。不本意ですけド」
「ハイハイ」
生意気なメスガキに与える108の辱しめを考えているとまた何やら言って来たが適当に返事してやった。こんな奴初歩の初歩の初歩。爆裂魔法で消し飛ばしてやる。17年間童貞が貯めた虚無の魔力を侮るなよ。エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…
「ぶつぶつうるさいですよ、ホラ、お夕食まだでしょう?材料少しは持ってきたので作ってあげますよ…あと私の名前、
「ワーイ!ミナミママー!お腹すいたー!!!」
空腹には勝てないものである。
「ごちそうさまでした」
フウ、食った食った。
「お粗末様でした。フフッ、何時も変な顔してるのにご飯食べてる時はおとなしくてちょっと可愛かったですよ?」
な、なんだこの女は。俺を誘っているのか?くそう余裕そうな顔で微笑みやがって。ぜひ足袋で踏まれながらもてあそばれたい。64マリオよろしくケツで逃げまだゆっくり食べているミナミの様子を伺う、相変わらず素朴な顔だ。マリオと言えばどうでもいいけどRPG3良いよな…ラスボス戦がめちゃくちゃ熱いんだ。知らない人はぜひやるか動画でも見て欲しい。
「また変な事考えてますね、まったく…所で蟲毒苦郎さん?」
なんだ、なぜ俺の名を。知っている。まさか…俺たち…入れ替わっt
「来る前に字は読んだんですけど…お名前聞いてもいいですか?」
なんだ、驚かせやがって。このままだと隕石でも降ってきて君の前前前世から会いたくて会いたくて震えて君を思うようになるところだったじゃないか。息子も先走り体操第一まで終わらせてしまったぞ。
「こどくろうだ、れんれんぼ、こどくろう。恋恋慕蟲毒苦郎ってな」
酷い名前だ。
「酷い名前ですね」
やかまし。
ミナミの入れてくれた風呂から出ると引き留められた。今後の話をするらしいがプリコネの周回で忙しいのでまた適当に聞いていた。またこの「プリンセスですわw」さんがランキング1位かよこの廃課金が……
「まず明日から私の通っている国家機密の聖Haze Disappear Phantom女学院に通ってもらいます」
もうちょっと何とかならなかったのか学院名。
「って女学院?」
「ハイ、俗世における耐性をつけるためとかなんとか」
なんと。それなんてエロゲだよ俺はひめでも祖母を亡くした男の娘でもないぞ。オトメのドメインをLOVING TRIPしてもいいと言うのか。
あっという間にココロが奪われてしまった。ボトラーお嬢様の小水管理ができるようになるなんて夢みたいだ。無防備なその笑顔へとめぐりめぐる世界へドキリモードになっているとミナミの冷ややかな視線を感じた。
「とにかく!明日から向かって貰います!朝ごはんは作ってあげますが寝坊したら置いていきますから!」
ぷりぷりしている。俺また何かやっちゃいました?
「あとさっきも言いましたが生活資金もあります、お小遣いもちょっとは出てますが無駄遣いしないように!」
ハーイ。出所は聞かんとこ、怖いし。
「じゃあ私もお風呂入ってきます、絶対覗かないで下さいね!」
ぴしゃん、と出て行ってしまった。さーてパンツでも漁りに行くか。今すぐ行くとバレるから持ち物の方漁ったろ。替えの二、三枚あるやろ。
「お茶飲めば、妹寝るなり安眠茶ってね」
中々趣味のいい葛籠を漁る。いつの間にか居間と玄関に数個置かれていた。僅かなおしろいの香りで今は亡き祖母を思い出し思いとどまる。さーてどれどれこれは割烹着に三角巾か…さっきも見たな。中々似合ってはいたがやはり地味だった。さながらジェネリック吹雪である。歯ブラシ、手鏡ときて遂に最下層に見つけた。残念ながら想像通り白パンツだ。二枚あったのでとりあえず被りもう一枚を観察する。うーん地味だが使用感溢れ素晴らしい。80点をあげよう。ひとしきり観察したあとは素早く後始末する。この素早さこそが神速のソニックとまで言われた俺の
「誤血鬱去家流暗殺拳秘奥義!壱ノ型 来来来牙竜打!!!!」
「そげぶブオティーイブエスンユイスアウクウバイトゥウワアウムイスンクエウアンウクイ!!!!!!!」
あいつは俺の事をワニワニパニックか何かだと思っているに違いない、気が付けば朝だった。
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