第2話

前世がかぐや姫らしい人と別れた俺は、1人でノコノコと下駄箱へ向かう。

 前世が童話の住人なんて奴初めて見た。そんな人もいるんだな。てことはゲームとかアニメのキャラが前世だったやつもいるのかな?もしかしたら俺の前世は、めちゃくちゃイケメンな俺TUEEEE無双主人公キャラかもしれない。それだったら、前世いい思いをしすぎたから、今世がこんなんだって納得がいく。そうであってくれ。

 そんな馬鹿なことを考えながら、入学式ということもあって自分の名前が書かれた教室を探し出さなければ行けないというミッションをなんとか完了し、自分の席へ速やかに着く。

 教室では、既にクラスメイトは友達作りに励んでいるが、毎年ぼっちの俺にはそんなイベントは存在しない。ここは秘技寝たフリをかますのが丁度いいだろう。

 俺は大きく伸びをし机に突っ伏そうとしたら、足に何かが当たる感覚がした。

 俺は何が当たったのか気になり、机の下をのぞいてみる。

 あれは·····消しゴムか?俺は手を伸ばし、なんとなく消しゴムを持ってみる。

 うーん、どうしたものか。大声で「この消しゴム誰のですかー?」なんて言う勇気もないし、そこまでしなくても俺の席周辺の奴らに「この消しゴム誰の?」なんて聞くこともできない。

 ここは無難に先生の机の上に置いておくべきか。

 俺はのっそり席を立ち上がって、教卓に足を進める。

 しかし、誰かに肩を叩かれて俺は反射的に後ろを振り返っていた。

 振り向いた先にいたのは、薄いミルクティーのような綺麗な髪を二つに結った女の子。顔は小さく幼い顔立ちなのに、胸の主張が激しい。間違いなく絶世の美女だ。

 俺はこんな可愛い子に肩をトントンと叩かれたという事実に頭がついてこず、言葉が出てこなかった。

 

 「あ、あの·····その消しゴム私のなんだ。拾ってくれてありがとう」

 

 ありがとうと言ったと同時にツインテールの彼女は、俺の目を見てニコっと笑う。

 俺はその笑顔だけで射抜かれてしまった。かわいい。かわいすぎる。この笑顔はこの世のものじゃない。

 

 「·····?」

 

 俺が彼女に見とれていると、彼女は不思議そうに首を傾げている。

 

 「あ、け、消しゴムだよね。はい」

 

 こんなに可愛い子に喋りかけられたことなんて人生で1回だってないから、自分でも引くほどキョドってしまった。恥ずかしいし情けない。仕方がないだろ、童貞なんだから。

 はーあ。こんなに可愛いんだからこの子の前世は小野小町とかクレオパトラだろうな。

 俺はまた、目を凝らして彼女の前世を覗いてみる。

 さあ、なんだ?美少女ロリの前世は。

 すると俺の頭の中にイメージが湧いてきた。ここは森の中か。木の影にいるのは·····狼?狼の視線の先には、レトロなワンピースに身を包んだ赤い頭巾を被った女の子がいる。

 

 これって超有名童話の赤ずきんだよな·····?

 

 1日で2人も異色な前世の持ち主を見つけるなんて、なにか起きるんじゃねえか?

 

 「·····そんなわけないか」

 

 この時、俺はしっかりフラグを立ててしまったことを後になってから気づいた。

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