第108話:責任と不安・クラリス視点
アレックス陛下が精力的に政務に取り組んでおられます。
つい見惚れてしまうほど凛々しい御姿です。
普段はできるだけ責任を背負わなくて済むように逃げられます。
ですがどうしても責任を背負わなければいけなくなると、誰にも負けないほど熱心に寝食を忘れて責任を果たされます。
その代わり、今までやってきたなかで不用なモノはスッパリ切り捨てられます。
特に自分の趣味嗜好のモノは顧みることもなく切り捨てられます。
引き続き行われることは、他人に影響を与える事だけです。
それも誰かに移譲できない事だけです。
普段は一旦やりだしたら全部自分でやらなければ気が済まないアレックス陛下ですが、重要な事があるときれいさっぱり切り替えられるのです。
それは教団に対することも同じでした。
私の事をとても大切にしてくださるアレックス陛下ですが、国王としての責任、ノブレス・オブリージュを優先されました。
教皇と枢機卿団に懲罰を与える事よりも、国民が安心して暮らせる国づくりを優先されたのです。
少々寂しい気持ちにはなりましたが、うれしく誇り高い気持ちの方が強いです。
英邁で高貴な心を持った方に愛されているという自覚があるからです。
それに、サクラの身体の中にいれば何の心配もありません。
教皇や枢機卿団がどのような攻撃をしてきても跳ね返してくれます。
恨みを増幅させるような魔法具があったとしても大丈夫です。
サクラが護ってくれると信じています。
「陛下、この国の制度をどうされるお心算ですか」
私は思いきってアレックス陛下に聞いてみました。
自分が女王に戴冠するのを拒否したのに、政治に口出しするなど身勝手です。
それは分かっているのですが、心配になってしまったのです。
アレックス陛下の代は今のままで大丈夫です。
アレックス陛下の支配下にあるサクラが全てをやってくれます。
ですが問題は次代になってからです。
アレックス陛下と私の子供がリークン王家を継ぐことになります。
その時にサクラが今と同じように働いてくれるとは限りません。
アレックス陛下の遺命に従ってリークン王家を護ってくれればいいです。
ですがそうでない可能性の方が高いと思うのです。
サクラに去られた後のリークン王家は大きく力を落とすことになります。
手懐けられない強力なゴブリンやオークも処分している事でしょう。
普通の国になったリークン王国は周辺国から報復される可能性が高いのです。
今からその時の事を考えて政治体制を築いて行かなければいけません。
そんな事はアレックス陛下が誰よりもよく理解されているでしょう。
どんな答えをしてくださるのでしょうか。
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