第5話:スライムとの絆を検証

 俺はある一つの仮説を立てて検証してみた。

 それはスライムは物忘れが激しいが、俺もその影響を受けるかという事だった。

 スライムはノア達の攻撃を繰り返し受けたことで、剣術や槍術のスキルを得た。

 スライムは覚えたスキルも反復練習させなければ、普通なら簡単に忘れてしまう。

 だがスライムではなく俺が反復して使う事で、剣術と槍術を覚えていることができるのか、とても気になったのだ。


「君は槍術の反復練習を繰り返してくれ、俺は剣術を反復練習する」


 移動中のスライムに、遭遇する魔獣を槍術で攻撃させて反復練習させた。

 俺でも斃せる魔獣を選んで、俺は剣術で斃した。

 俺が剣術を選んだ理由は簡単な話で、実戦では剣よりも槍の方が役に立つからだ。

 役に立つ槍術の方を確実に残すために、スライムの身体の一部を人間の腕のように変化させて、槍を振るわせている。

 公爵家の長男として領城にいた時は、どうしてもやれることに限りがあった。

 自由になった今だからこそ、全ての行動に命がかかっている今だからこそ、早急にスライムの能力を知る必要がある。


「今日はここに野営しようか」


 最初は俺を殺そうとした4人を直ぐに開放する心算だったのだが、しばらく連れまわすことにした。

 リークン公爵領からできるだけ離れた場所で開放したかったのもあるし、もし俺の検証実験が失敗した場合に、もう1度4人に攻撃させて剣術を覚えさせたかった。

 ヒュージスライムやビッグスライムの状態になっていなくても、レベル10の成体スライムならば、複数の手を創り出して剣や槍を振るうことができる。

 それが木刀や木槍であろうと、本来なら弱いスライムの身体を護る武具になる。


「一番の問題はレベルと頭数なんだよな」


 つい独り言を口にしてしまうが、会話を忘れないためにはそれも仕方がない。

 一方的に話すだけで、会話にはならないだろうが、スライムに話しかけ続ける。

 もしかしたらスライムが言葉を覚えてくれるかもしれない。

 まあ、流石にそれは期待し過ぎだが、最初から諦めていては何も始まらない。

 だから意識的にスライムに話し続けることを今ここに誓う。


「レベル10のスライムが10匹いれば、合体統合させてビックスライムに成長させることができるのか、それがとても気になるのだよ。

 それと、この世界にいる全てのビックスライムが合体統合した存在なのか、それとも1匹の成体スライムがレベル100になってビックスライムに進化したのか、それも確かめたいのだよ。

 それを確かめるための検証実験に付き合ってくれよな」

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