第9話 『最強』の女性との出会いを待つ青年

 しかし、『最強』と言う名をほしいままにしたクバルカ・ラン中佐はその担当者をして『変な気を起こして』、三年前に発足した司法局実働部隊のパイロットをまとめる仕事についているという。


 それ以上の説明を人事の担当者が拒んだので、誠が彼女について知っていることはそれだけだった。


 『最強』と呼ばれるエースがいるのに『特殊な部隊』扱いされている司法局実働部隊と言う存在に誠はあまり期待をしないことにしていた。


「クバルカ・ラン中佐か……」


 誠はあまり期待できない司法局実働部隊のことを考えるよりも、『最強』の女性エースのことを考えることに決めた。


 誠はこの時、せめて写真ぐらい見せてもらっても良かったのではないかと後悔した。


 これは誠の得意の妄想力でそのエース女性パイロットを想像して、それらしい人に声を掛けてみるほかはない。そう考え、誠は自分の想像するクバルカ・ラン中佐像を作り上げることにした。


「十年前の戦争でエース……ってことは、当時二十歳前後ってことだから、今は三十歳より上のお姉さんってことか……『最強』のエースって言うぐらいだからがっちりとした大柄の人なんだろうな……」


 まあ、ここまでは普通の想像である。だが、誠は人より少し、想像力が豊かだった。


「美人だと良いな……すっごい美人だっからな……もしかして……巨乳だったりする?」


 自分の妄想に取りつかれだらしない顔でニヤニヤしながら誠はぼんやりと低い天井を眺めていた。

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