第3話 終わらない受難
「………………………………へ?」
「いつまで呆けたツラしてやがる。聞こえてんならさっさと動け。」
「え……えぇ!?何でですか!?急すぎません!?」
「うるせぇガキ。さっさと用意しろ。」
「そんなご無体な……」
ともかくなんとか首は繋がったらしい。あの剣呑な殺意がどうしてこうなったのか私にはわからないけど…とりあえず今は従うしか無さそうだ。取り落としたダガーとバックパックの中身を急いで確認してジンさんに着いていく。
「狩りに行くって…何を?どこに狩りに」
「黙って着いてこい」
「ハイ」
ザ・暴君である。教えてもらうどころか会話すら成り立ってるのか怪しいレベルである。ともかく置いていかれては元も子もないのでもう遠くに見えるジンさんの背中に向かって駆け出すことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「────────────どこですかここ」
「見てわかんねぇのかガキが」
「そりゃ一面砂ですもんあとガキって言い過ぎじゃないですか!?」
私とジンさんは今指定された狩猟区…有り体に言ってしまえば超広い砂漠に来ている。私たちのギルドのある市街地【ネスト】から私が以前失敗したクエストの目的地だった【アルカ森林】とは逆方向にある極端に広い砂漠【ハルテア砂漠】である。私みたいな素人には決して入区の許されない危険地域。【大蛇鶏】よりもかなり危険な怪物がそこかしこに潜んでいる。もちろん移動は徒歩ではなく、なんと馬車である。遠い狩猟区に出向くには必須だけど何せ数の少ない馬である。信頼と実績のある狩人にしか貸し出されないのは知っていたが、まさか乗る日が来るとは夢にも思っていなかった。
「朝失敗して帰ってきて昼にはもう砂漠って…」
「ウダウダ抜かすなさっきから」
「ハーイソーデスネシャベリマセンヨー」
片道2時間ほどの旅路ではあったがその中で私のジンさんに対する印象は最悪で固定された。会話はしないわ罵るわ。この人ほんとにペア探してたんですかね。とりあえず殺されることはなさそうなのでそれなりに口答えくらいはしている。
「……で、ここで何を狩るんですか?」
「お前の装備と用意、見せてみろ」
馬車の速度を落としながら急にジンさんが私に尋ねた。
「へ?装備ですか?」
「早くしろ」
ほんとに人の話聞かないなこの人は。私はしぶしぶと言った感じでバックパックとダガーを手渡す。…と、次の瞬間。胸に鈍い衝撃と痛みが走り体が宙に浮いたのを感じた。数秒間唖然として、細かい砂が体を受け止めたところで現状を把握する。
「ツッ……ゲホッ、何するん……」
「3時間。そこで1人で生き残れ。」
「うぅ…………え?」
まだ状況の飲み込めない私にジンさんは酷薄な笑みを浮かべて言った。
「俺に師事したいんだろ?なら最低限ここでそのくらい生き延びてみろよ。」
「え……えぇ!?そ、装備!!装備返してください!!」
「ダメだやらねぇ。ほら、早く離れねぇと馬車の痕辿ってヤツらが湧くぞ。」
そう言うとジンさんは鞭をふるい、砂煙を上げて行ってしまった。
「……嘘でしょ?」
私の腰元には最低限の水、鉄製の装備がジリジリと日を集め体を焼く。
もはや試験とも呼べぬ最悪のサバイバルが始まってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少し離れた場所に立つ石柱の影に馬車を止めたジン。彼はつい先程の事を反芻していた。殺すとまでは行かなくとも顎くらいは砕くつもりで放った1度目の蹴り。2度目は首を引きちぎるつもりで放った。……しかし双方爪先は空を切った。
「二発連続は偶然とは思えねェ」
酷薄な笑みを深めジンは1人呟いた。
「ようやく見つけた…」
誰も聞かない独り言を乾いた熱風が攫って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます