すげえ絡んでくる


「なぁなぁ。治んのかぁ?走れんのかぁ?」


「こっち来んなよ。つーか座るなよ」


「いいじゃんかよぉ?暇だろー?ちょっと話しようぜぇ?」


隣のベンチから須藤がやってきた。こいつは俺を見下すわけでも憐れむでもなく、俺のテーピングが終わるのをただ待っている感じだ。


「意外に巻くのうめぇなぁ。おまえ、マネージャーじゃねーんだろ?」


「なんであなたがここにいるの?」


望美は持ってる氷袋を今にも須藤に投げそうな感じの臨戦態勢だ。


「おー、怖い。見舞いに来ただけなのにつれねぇなー」


「おい、須藤。そうやって望美の胸の谷間見るのをやめろ」


「ああん?見てねーよぉ」


「そこからだとよく見えるだろーが」


「ひゃっひゃっひゃっ!!見ねーしそこのチビに見張られてるから余計なことはしねぇよ」


亜香里が暗黒面で俺と須藤の顔を見てくる。


須藤に関する牽制というか、自分のコンプレック・・・ゲフンゲフン。まぁ、亜香里が見張ってるなら大丈夫か。


「男はどいつもこいつも胸ばかり」


「おい彼氏。勝手に落ち込んでんぞぉ?なんとかしろや」


「亜香里もちゃんと胸元隠せよ」


「お姉と比べてスカスカだから中がよく見える」


「見せんでいい」


「あのさ、バカ話したいんなら後でしてよ。集中できないから・・・」


クイッとTシャツの胸元を上に引き上げる望美。


須藤が来てからずっと不機嫌になってらっしゃる。


「骨は異常ないんだよなぁ?」


「ああ、大丈夫みたいだ」


「じゃあ今から出ろよぉ。俺もすぐ出るぜ」


「俺に気にせず出ればいいじゃねーか。負けてんだぞおまえら」


「常勝チームが初戦で苦戦してる時点で終わりだよなぁ?」


「そっちの事情は知らん。こっちだって真剣にやってんだぞ」


「真剣にやって上手くなるなら世話ねぇわ。俺はもう、弱い奴を叩き潰すのに飽きたー」


「そんなもんなのか・・・?」


一時的に俺が須藤を上回ったからって、近づいて来ないでほしいわ。望美も亜香里も警戒してるし。人の陣地に飛び込んで来るなよ。


「おまえもそのうちわかるよぉ。つーか名前、なんつーんだ?」


「水谷だ」


言ってなかったっけ?まぁ、試合前に名乗っても、こいつは無名の俺なんて覚える気無さそうだな。


「強い奴じゃねーと、すぐ忘れるからな。望美ってやつは覚えたぜ?」


「颯人が嫉妬するからやめてくれる?」


「おまえ、嫉妬してばかりで全然器じゃねぇなぁ」


「嫉妬が役に立つこともあるぞ」


「煽りがいがあるぜ」


どうやら、俺の力の引き出し方を須藤はわかってしまったらしい。頭のキレるやつだ。正直、相手をするのが面倒くさい。


だが、こいつが相手じゃないと、物足りないと思ってしまう俺がいる。まだ自分の体が全力に慣れてない感じだけど、気持ちだけならいくらでも戦えるのに。少し体が冷えてきて、既に軽い疲労感を感じていた。


「出れても、本気出すのは最後の第4クォーターだけだぞ?」


「さっきまで、出たくて仕方ないって顔してたのになぁ?」


「今はちょっと冷静になった。暇なら、上田と遊んでこいよ。あいつ、俺の真似しようとしてる。ガードか。志多じゃあポカするからなぁ」


「いいのかぁ?俺が出たら、一方的な試合になって負けるぞぉ?」


「うるせえよ。俺が戻るまで、10点差までならイケるだろ」


「ひゃっひゃっひゃっ!随分とお気楽じゃねーか。いいぜぇ?気が変わった。遊んで待っててやるよぉ!」

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