第19話 宴は突然に。説明を求める。



「は?何がどうなってるんだ?」


上田と亜香里と共に体育館入りした俺は、思わず立ち尽くしてしまう。


バスケ部コートの二階のギャラリーが制服姿の生徒で埋まっている。


その異様な熱気に呆然としていると、望美がこっちに走ってきた。


「お?やる気が漲ってますね?似合ってるよ!」


「何の話だ?今から何かやるのか?」


「わたしが主将たちと話し合って、練習試合することにしたから」


なんですと!?


「宜しくね、キャプテン!」


望美が笑顔で一枚の紙を差し出してくる。


「これ何だ?」


「メンバー表だよ。勝とうね!颯人!」


俺は望美の持っていた紙を見た。


メンバー構成はこうだ。



チーム水谷

PG(ポイントガード)二年水谷←え?俺!?

SG (シューティングガード)一年上田←坊主

SF (スモールフォワード)二年五橋←望美

PF (パワーフォワード)三年金森←主将

C (センター)二年神崎←俺の記憶が確かなら推薦希望アルバイター


チーム竜ヶ崎

PG 二年志多←俺がオフェンスチャージしたやつ

SG 三年竜ヶ崎←問答無用の敵!ん?先輩のポジションやけに中途半端だな・・・

SF 二年月城←沙耶香

PF 三年斑目←知らん女の人

C 三年菊池←知らん男の人


なんじゃこりゃあああ!!!!


うちのチーム、完全身内だわ。大丈夫かぁ?特に神崎、身長高いのはいいけど、経験者か?


足元から突然、声がする。


「全く、五橋さんのゴリ押しには参ったよ」


まさかの人選に俺は驚きまくっている。


貧乏アルバイターの神崎がいるではないか!


「おまえ、バイトで忙しいんじゃないのか?」


「僕がバイト無い日で良かったね、水谷。小学生の時にミニバスやってた程度だけど、宜しくね」


金髪イケメンが靴紐を結んでニカッと笑っている。神崎、普通に混じっててバスケ部みたいに見えるわ。


「うおおい!全然大丈夫だ。俺の身内だけじゃあ、身長高いやついなかったから、ほんと助かる!」


「うん、この借りたバッシュも問題ないな。おもしろい試合に混ぜてもらえて光栄だよ。攻撃で役に立てるかわからないけど、頑張ってみる」


「宜しくな!」


俺はガッチリ握手を交わす。


ギャラリーの方から男の声がする。


「おーい!颯人!俺、めっちゃ人集めてきたから。早くやれよ!部活行きたいんだ」


「え?薫が!?どうやって人を集めてきたんだよ」


おまえ友達いなかったんじゃねーのか!?


「俺はちょっと噂を流しただけだよ!いいから頑張れよ?あっ、月城さあああん、弁当めちゃくちゃおいしかったですぅぅぅ」


「水谷くん、宜しくねぇ?」


「月城・・・」


「ほんとはねぇ?水谷くんのチームに入っても良かったの」


「でも望美と戦いたかったんだろ?」


「そうよぉ?正々堂々と戦う機会はそんなに無いものぉ。個人的には水谷くんを応援してるんだけど、今回はヒールを演じるわぁ」


こりゃあ、望美にたくさんパスをやらないとな。


「あ、真打ちが来たので、それでは試合でねぇ、水谷くん」


「おう。またな」


月城が俺から離れる。


「来たのか、水谷颯人くん」


俺が振り向くと、そこには竜ヶ崎先輩が立っていた。


「竜ヶ崎先輩、何回俺を驚かせれば気が済むんですか?明日の勝負じゃダメだったんですか?」


「僕が五橋の提案を断ると思うかい?」


「断ってくださいよ。望美に被害が来た昨日の件だって、まだ片付いてないんですよ?」


「僕は五橋に謝った。彼女は僕たちバスケ部に見返りを求めた。それの見返りがこれだ」


うん。





あー、もう。随分と大規模に人を動かしやがる。


望美の悪戯が誰にも止められないレベルにまで達してしまっている。


いつからだろう?あいつが俺を無意識に困らせるようになったのは。


今はそんなこと考えてる場合じゃ無いか。


「そうですか。まぁ、軽くやりますかね」


「そうだね。明日のこともある。体力を残しておくと良いよ」


こんのっ先輩うぜええええ!!!


やっぱダメだ。全力で行く!!

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