第154話日本語の勉強
ただ、わたくしは本日より日本国民となったのだが、だからこそ日本語を勉強しようと心に刻むと同時に、手始めに『にほん』を『漢字』というこの国で使われている文字で書く場合は『日本』と書く事だけは覚えて帰ろうと思う。
そして、思えば吉日という訳で今日の夜からは日本語の勉強をしようと思うのだが、つい最近まで行っていたシュバルツ殿下の妃となるべく行っていた勉強の数々、そのどれとも違い、今から日本語の勉強をするのが楽しみだと思えてくると同時に、勉強するのが楽しみだと思えるとは変な気分ではあるものの嫌な気分では無く、むしろワクワクとした好奇心の様な高揚感を感じるのであった。
◆
「ふむ、日本語の勉強ねぇ……」
「だ、ダメでしょうか?」
そして帰りの車内、流行る気持ちを抑えきれずわたくしは旦那様へと相談する。
勉強するにしても講師から教材からと何かと入用はある為、それらには当然の如くお金が支払われる事くらい、いくら箱入り娘であったわたくしと言えども理解はしている。
しかしそうなると当然出費はシノミヤ家であり、シノミヤ家の当主は旦那様である為許しを請う必要が出て来る。
「いや、ダメとかでは無く日本語はかなり難しい部類に入るから無理に覚える必要は無いと思うのだが………どうやら本気みたいだな。それでは帰りに数多の外国人が日本語の勉強に用意している最高の教材を買って帰るか」
恐らく、以前までであれば「シュバルツ殿下の妃にとして必要ない物など無駄でしかない」と一蹴されていただろう。
流石にそのような理由で断れる事は無いと分かっていても骨まで染みついた公爵家、そしてシュバルツ殿下の婚約者というあの頃の扱いは一週間やそこらくらいでは無くなったりはしてくれなかった様で、やはり不安に思ってしまう。
それでも旦那様の目は反らさず、見つめていると、旦那様はわたくしの為に日本語の教材を買って帰ってくれるとの事。
今までわたくしがやりたい事が許可された経験が無く、思わず今まで我慢して来た気持ちが一気に涙が溢れ出してくるではないか。
「あ、ありがとうございますわっ!!」
「泣くほどの事でもないだろうに」
ただ、わたくしがやりたい事があると言って、旦那様が許してくれただけである。
それに、旦那様ならば断わらないだろうとも思っていた。
しかしながら、それでもわたくしはわたくしが思っている以上に嬉しかったのだ。
「だってっ、今までっ、わたくしっ────」
「あぁー………、そっか。そうだよな。シャーリーは良く頑張った。偉いな」
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