第63話良く良く見ると
そう言うとアイリスはシャーリーとは違いまるで満開な花畑の様な笑顔でコテンと首を傾げ俺を見つめてくる。
その純粋無垢な笑顔を俺は好きになったのだ。
この笑顔に為ならば俺は何だって出来るし、やってみせる。
「アイリス、愛してる」
「………私もよ?シュバルツ殿下」
いつもならば直ぐに『愛してる』と返してくれるのだが、少し返事が遅れた気がしたのだが気のせいであろう。
アイリスが俺以外の男性へ心変わり等する筈がない。
シャーリーの様な女性とは違うのだ。
「ああ、ありがとうアイリス。俺は君の為にシャーリーの元へ行く事にした。だからアイリス、お前も───」
「そうなの?行ってらっしゃい。私の為に頑張ってね?」
「え?いや、俺と一緒に───」
「シュバルツ殿下が王様になって私を迎えに来てくれるの、楽しみにしてるね?頑張ってねっ!」
何を俺はやっているんだ。
アイリスのおかげで目が覚めた。
男ならば愛する女性を巻き込んではいけない。
何故かいつも息が合う俺たち何がこの場面でいきなり息が合わなくなるのか、その理由が分かれば何のことはない。
愛する女性を過酷な旅路に同行させるなど言語道断である。
「では、俺は一人でシャーリーの元へ行って来るよ。寂しくなるとは思うがなに、少しの間だけだ。アイリスには申し訳ないがこの王宮で待っていてくれ」
「うんっ!私いつまでも待っているからねっ!絶対成果を上げて帰って来てねっ!」
「愛してるよ」
「私も」
間違いだと分かってからはこんなにもアイリスと息が合うではないか。
やはり俺の考えは正しかったみたいである。
そして俺は愛するアイリスを王宮へ一人置いて王宮を出る。
いざ旅する覚悟で王宮を出ると心に決めてから門を潜ってから振り返り見る王城は、いつもと違ってなんだか悲しそうな、それでいて必ず帰ってこいと言われている様な、そんな気がした。
「何すんのよっ!お前如き平民がこの国の未来の王妃であるこのアイリス様を気安く触ってるんじゃないよっ!下民がっ!!」
そう思いなが王城を眺めていると聞くに耐えない金切り声の様な叫び声が聞こえ、徐々に近づいて来ると思った瞬間、何かがドシャリと俺の前に放られて来たではないか。
その何かを良く良く見るとアイリスではないか。
「おいっ!痛いじゃないのよっ!そんな事をしてただで済むと思ってんじゃないわよっ!!」
「アイリス………?」
まさか、先程の金切り声もアイリスではないのか?
「………い、痛ーいっ!殿下、痛いですぅー」
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