第35話何か、忘れている様な
そして辺りを見渡すと焼き魚と白ご飯を一緒に食べている人がチラホラと見えた為わたくしも真似て食べて見る。
あぁ、この料理の最適解がここに御座いましたわ。
今までは足し算の方程式で味を変化していった為、ここで白ご飯という食べ物で引き算をすることによりちょうど良い味加減へと変化すと共に穀物特有のほのかな甘さが加わり、ただ水で薄めるという様な感覚では無く料理の味に奥深さも加わっている事が分かる。
何が言いたいかといいますとナイフとフォークが止まりませんわっ!
わたくしは魚より肉の方が好きだと思っていたのだけれども、今日この日をもって魚の方が好きになりましたわっ!
そしてわたくしは焼き魚と白ご飯を全て平らげた後『卵焼き』という料理へフォークを入れる。
卵焼きというくらいであるのだから卵料理であるとは思うのだが、この様な卵料理は初めて見る。
似てる料理といえばオムレツであろうか?
しかし一口食べてみると、卵特有の柔らかさと風味、そしてオムレツとは似ても似つかぬ味が口いっぱいに広がっていた。
あ、甘い………? でもお菓子などでは無くしっかりとおかずとして主張して来る。
そして何よりも美味しいのである。
そう、この瞬間わたくしの好きな食べ物上位に食い込むくらいにはこの卵焼きという料理のポテンシャルは秘めている。
リンダさんは間違いなく貴族間、いや王宮で勤めているどのシェフよりも腕が良いと思える程の調理技術であるのだが、それ程の実力を持っているにも関わらず王宮に仕える事はせずシノミヤ家に仕えている所を見るとお金ではなく忠誠で動くタイプの人間なのかもしれない。
そんな事をシュバルツ殿下の元婚約者故の悪い癖であるとは思いつつも頭に中で推測しながらわたくしは黒い紙の様な物をパリパリと食べ、スープを飲み始めていた。
コレもコレで美味しいですわね。
主張こそして来ませんが、この黒い紙を食べる手が止まりませんわっ! そしてこのスープ………何だかとっても落ち着きます………。
「はふぅー………」
そしてわたくしは全てにおいて初めての味でかつその全てが美味しい料理に舌鼓を打った後は『たくあん』という料理をポリポリと食べながら一息つく。
何か、忘れている様な………って、そうでしたわっ!生卵ですわっ!
天国から地獄とはこの事か。
視界に入らない様に極力食事をして来たのだが一度視界に入れてしまうと『早く食べなさいよっ! 貴女がご自分で食べるって言ったのでしょうっ!?』主張して来ている様に見え、視界から消えてくれない。
一体全体この生卵はどの様にして食べるのか? まさかそのままコップか何かに入れて飲むという事では無いですわよね?
と恐る恐る周りを見渡して見ると小さな子供の使用人達が白ご飯に生卵と黒い水をかけた後、混ぜてからスプーンでそれはそれは美味しそうに食べている光景が目に入って来る。
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