第27話もう一度婚約者にすれば

「一体どういう事だっ!! この俺様の言う事が聞けないという事かっ!? そんなに罰して欲しいなら望み通り罰してやるよっ!! オイッ!! 誰かこいつを捕まえろっ!!」


 未来の国王であるこの俺様の命令を聞かないどころか、俺様に向かって『バカ』と申したこのメイドには一度痛い目を見てどちらが主人であるかという事を分からせる必要がある。


 泣いて謝り我の足を舐め庇護を請う様になるまで苛め抜いてやるわ。


 そう意気込む俺なのだが周りにいる衛兵たちは一向に動こうとしない。


「オイッ!! どうした貴様らっ!? 貴様らも罰が必要とでも言いたいのかっ!?」


 そう怒鳴り散らしても、まるで動こうとしない衛兵達の姿を見て背中から嫌な汗が大量に流れ始め、嫌な予感が襲ってくる。


「お気づきになられませんか? シュバルツ殿下、いえ、シュバルツ様」

「い、一体何の事だっ!? 何が起きているっ!? 俺にも分かるように説明しろよこのグズがっ!! あと俺は殿下だっ!! 次言い間違えるとただじゃおかねぇぞっ!!」


 無礼も無礼、このメイドは徹底的に躾という罰をする必要があるらしい。


 しかしそのメイドは俺の目を睨み返し、まるでゴミを見るかのような目を向けてくるではないか。


「馬鹿にも分かるように教えるほど難しい事は無いんですけどね、いえ、これでは馬鹿に失礼でした。 シュバルツ様という猿に教えるのは馬鹿に教えるよりも難しいんですけどね、良いでしょう。 そんなシュバルツ様にも分かるようにお教えいたします。 現国王であるラインハルト陛下より『一方的な婚約破棄に止まらず選りにも選ってあの家が関わっている『チョコレート』に手を出そうとするほどの馬鹿息子に国を任せられる筈が無い。本日付で王位継承権を剥奪する。 そもそもシャーリーと一方的な婚約破棄をした時点で王位継承権を剥奪する事は決定事項であり、おいおい発表しようと思っていたのだが時期を待っている間にまた何か馬鹿な事をやらかされてはたまったモノではないわっ!!』という有難きお言葉と共に本日付でシュバルツ様の王位継承権はつい先ほど無くなりました。 今頃恐らくその手続きと各貴族達へその旨の内容が書かれた手紙を用意している所でしょう。 ちなみにこの部屋の映像は私の目を通してリアルタイムでラインハルト陛下が観られるようにしてあります。 念話スキルで飛んでくる怒号たるや、眩暈がしそうな程でございます。 それでは、ただのシュバルツ様、ごきげんよう」


 は? このメイドが言っている事が何一つ理解できない。


 一体このメイドは何を言っているというのか。


「大丈夫ですよ、シュバルツ殿下ぁ~。 あのシャーリーをもう一度婚約者にすれば丸く収まります。 私は本当は嫌だけどぉ、愛するシュバルツ殿下の為なら我慢しますっ!!」

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