第15話サイン
他人はその部分をマイナスで捉える人もいるのだろうが、俺は寧ろそこが彼マルコらしさでありプラスの部分でもあると思っているからである。
因みにこのマルコは若者の様に喋っているし顔も良く見た目も若く見られがちなのだが実際は三十一歳のオッサンである。
しかしそれを言うと『ご主人様程じゃねーよ』と毎回返されるのだが、この俺の大人の醸し出す熟練された雰囲気を感じ取れない様ではまだまだであると言えよう。
「何でって旦那様、今日は旦那様と結婚した奥方様がこの別荘にやってくる日だろう? 妻を娶ったから旦那様って呼ぶのが普通なのでは? 因みにこの屋敷で働いている者全て今日から旦那様呼びへと切り替えるらしいよー?」
「は? 俺は結婚をした覚えも妻を娶った覚えも、お見合いをした覚えも無ければ恋愛をして恋人を作った覚えも無いのだが? 流石にこの嘘はマルコにしては分かりやすいんじゃ無いのか?」
そして俺がマルコの穴だらけの悪戯に対して流石にバレバレであると告げるた瞬間、周囲の空気が冷え固まった気がした。
「ま、マジで言ってんの? 旦那様」
いつも緊張という言葉を何処かへ捨てて来た様な男が、顔が青ざめて行き、震えながら緊張した面持ちで聞き返して来る。
そしてその光景を家政婦もかくやという表情で固唾を飲み見守るメイド達の姿が視界に入って来るでは無いか。
「……………寧ろ逆にマジなの? この俺が?」
「いやいやいや、国王様からの手紙に了承のサインを書いてましたよね? ハンコも押して、シノミヤ家の家紋が入ったシーリングスタンプで封をして国王陛下に返してましたよね?」
「いやしかし、確かに国王陛下から手紙は貰ったから返事は書いたのだが、そもそもあの手紙には『可哀想な娘を一人助けてやってくれないか?』という様な内容だったぞ?その内容に同意するのであれば別用紙にサインと判子も………まさかっ!?」
俺はここまで話すと嫌な予感が過り、思わず言葉を噤んでしまう。
そしてそんな俺を観てマルコは深い溜息を吐きながら『そうだった。 旦那様は偶に常識が通用しない時があるのを忘れてた』と、可哀想な者を見る様な視線を向けて来る。
「良いか? 旦那。旦那がサインした書類はな、国王陛下が仲人となり結婚を了承すると書かれていたと思うんだが……まさか最後まで読んでないのか?」
「……その日は疲れてたのもあって、新しくこの屋敷で人を雇って欲しいという内容かと早とちりして確認せずにサインしてしまった。 普段ならば確認はした筈だが相手が国王陛下だから詐欺とかではないのは間違い無かったしな」
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新たに新作【JK、サラリーマンを拾う】を書き始めました∩^ω^∩
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