第72話 魔法練習
フェリクスとアベルは魔術コンテストの為、グラウンドで魔法の練習をしていた。
「練習に付き合わせて悪いな、フェリクス」
「俺も最低限しないといけないから、気にしなくていいよ・・・」
フェリクスは、そうは言ったが、背中からは哀愁が漂っていた。
「まぁ、出ると決まったからにはちゃんとやらんとな」
「確か、難しい魔法が評価されるとか言っていたね」
「そうだな、今回の魔術コンテストは魔術の威力が高ければいいと言う事ではなく、難しい魔術を発動させられるかと言う事が評価に関わってくるらしいな」
「なんか、抽象的な表現だなぁ」
「何か、不安な事でもあるのか?フェリクス」
「いや、他の貴族たちが、邪魔してきそうだなぁと思って」
この前の武芸大会でもフェリクスはかなりの貴族の怒りを買っている自覚があった。そんな中、妨害工作がたくさん出来そうな今回の行事、フェリクスの胸には不安が広がっていた。
「・・・ないとは言えんな」
「やっぱり、今から出ないって選択肢ってない?」
「それは俺ではなくヴェルデ先生に言ってくれ」
「だよなー」
言っても聞いてくれ無さそうな人物を思い浮かべ、フェリクスはガックリと頭を落とす。
「しかし、難易度の高い魔法か、俺が使える最高の魔法はブレイズ・ライオンなんだが、魔術コンテストに出すのには何か違う気がするな」
「あの俺との対戦で使った魔法か、あれは攻撃に重きを置いているからな、それにしても、もっと採点基準を明確にしてほしいものんだ」
「観客も入ることらしいが、観客を盛り上げるような魔法が良いのだろうか?」
「まぁ、どっちも出来るような魔法が良いんじゃないか?」
「だとしても、どんな魔法をすればいいんだ?」
「でも、アベルは炎の魔法が得意なんだろ?」
「まぁ、そうだな」
「だったら、それを起点に考えれば良いんじゃないか」
「出来ることから考えるか、悪くない考えだ、そうするとしよう」
アベルはそうと決まると自分の出来る魔法を使い始め、色々なパターンを考え始めた。そんなアベルを見て、フェリクスも自分は何の魔法を使おうか、思考を始めていた。
(確かに、観客を盛り上げられるような魔法の方がいいという方向はいいと思うが、俺は得意魔法とか無いからな。なんにするか、そういや、一人の持ち時間が5分と決められていたな。5分も魔法発動し続けるのは、めんどくさそうだなぁ)
今、一般的に広がっている魔法形態は、瞬間火力を出すものが多い、そんなものを5分も出し続けたら、普通の人物なら魔力枯渇になってしまう事だろう。そう考えると魔術コンテストに威力は関係ないと言うのは本当なのだろう。
(でもなぁ~、難しい魔法術式を組んでも5分も制御がめんどそう、なら・・・)
考えが決まったフェリクスも魔法を使用して、練習を始めた。
「ふぅ、フェリクスどうだ?魔術コンテストに出す魔法は完成したか・」
自分も一息ついた所で、アベルはフェリクスに声を掛けた。
「ああ、俺はもうコンテストに出す魔法は完成したよ」
「それは楽しみだ」
本番で魔法が見たいとアベルは思っていたのでフェリクスの方を全く見なかった。
「まぁ適度にやるさ、俺よりも頑張ってくれ、アベル」
「俺としてはフェリクスにも頑張ってほしいがな」
練習が終わったという事で2人は寮に返っていった。その後ろを食い入る様に見ている貴族集団が複数合った。
「いつまでもあいつらにいい顔はさせんぞ」
「そうだ、我らも、そろそろ我慢の限界だ」
「まぁまぁ、待ちたまえ諸君、魔術コンテストがあるではないか」
「確かにそうだ、ではその時に・・」
貴族の集団はとある教室に集まり、フェリクス達への妨害を沸々と考えていた。その対象に隣の国とは言え、王族のアベルが入っている事から、ただの気に入らないだけでやっているのが明白だった。そんな下らないだけフェリクスに手を出すのは、出したものからすると愚の骨頂だった。
そうして、あっという間に魔術コンテスト当日が来るのだった。
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