第30話 王女からの忠告
なんで、アベルまで選ばれたかと言うとあの後、結局アベルともヴェルデ先生はバトルを行ったようだ。しかし、何故か、クラス代表が決まってから、アリサ姫から、放課後呼び出しを受けていた。集まるのは最近ではお決まりになりつつある、校長の魔法空間だ。
「でも、クラス代表に決まったらからって何かあるんだろうか」
「軽い注意ぐらいじゃないか」
「なら、いいんだけど」
アベルの言う通り、アリサ姫が来たのは軽い注意の為だった。
「いいですか、今回の武芸大会では、なんでもありの勝負ですが、くれぐれも神力や精霊を使わないでね」
「神力や精霊って普通の人には見えないんじゃないんですか?」
「普通はそうですが、特殊な器具を使えば、普通の人間にも神力や精霊を見ることはできます」
「つまり、大体、国のトップの人間はそれを持っていると?」
「察しが良くて助かります、そうです、なのでくれぐれも神力や精霊を使わず、戦ってください」
「なるほど、わかりました」
わざわざ、アリサ姫が注意しにきた理由は分かった。
「所で、アリサ姫も武芸大会に参加するんですよね」
「もちろん、そうです」
「なるほど、それだけで大丈夫です」
「何が大丈夫なんでしょうか?」
フェリクスはこの前、アリサ姫にいいようにされたので、今回の武芸大会ならやり返せると思っていた。
しかし、この認識をフェリクスは改めることになる。
「フェリクス、参加することは決まってしまったから、仕方がないとして、どうやって戦うんだ?あまり、手札を晒したくないと言っていたが」
「ああ、それなら、簡単な方法を一つだけ考えてある」
「その案とは?」
「最速最短で敵を倒す」
「単純だな」
「単純だから、いいんじゃないか、そういうアベルは全力出して問題ないのか」
「自国の武勇を示すと言う意味では、全然問題ない」
「そういうもんなんだな」
「私からは他に何もありません、後は存分に武芸大会に励んでくださいと言いたい所ですが、そこまでフェリクス君は頑張るつもりはないですか、残念です」
「別に負けるとは言っていませんよ、あの先生のこともありますし、わざと負けたらどんな目に合うか、考えるだけでも嫌です」
「つまり、どういうことなんです?」
「本気を出さずに勝つってことですかね」
「それもそれで不謹慎なのでは?」
「あの先生の出した条件がそれなので、後は何と言われようが知ったことじゃないですね」
「・・・もうそれについて、私は何も言わないことにします」
アリサ姫はフェリクスの態度に頭が痛い様子だったが、そのまま魔法空間を後にした。
「じゃあ、俺たちも帰るとしようか、フェリクス」
「ごめん、今日は用事があるから、アベルは先に帰っといて」
「そうか、わかった」
アベルと別れたフェリクスは王都のクレソン商会に来ていた。
「マリアンヌさん、例の件、調べ終わっている?」
「はい、資料は奥の執務室に置いてあるので、ご確認下さい」
「ありがと、確認してくるよ」
マリアンヌにお礼を言うとフェリクスは奥の執務室に入っていった。
執務室の一番奥の机にはマリアンヌが言っていた数枚の紙が置いてあった。その紙の一番上にはテロが実行可能なリストと書いてあった。実はフェリクスはこの前のテロについてまだ調べていたのだ。宝石や精霊使いを使用できる者はある程度、限られてくる。フェリクスはその条件に当てはまる人物のリストをマリアンヌさんに調べてもらうように頼んでいた。
そのリストには実行できる人物、そして、技術を提供できる人物などが詳細に記してあった。
「この中から、王女を狙う動機がある人物はっと」
それにより候補はかなり減って、片手で数えるほどになった。しかし、今度の武芸大会にこの候補たちの数人がいるのは間違いなかった。そうなると、王女を狙う側からしたら、武芸大会は絶好の機会だ。この前は王女を殺し損ねているので、今度こそと狙って来るはずだ。
「全く、面倒な武芸大会になりそう」
頭の中にすべてを入れたフェリクスはリストを炎魔法で燃やすと寮へ帰って行った。
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