シオンは乗り物を手に入れた!

「お嬢様!獣人達の手当てが終わりました~」


50人もの獣人達の戦士を回復魔法を掛けて治したのだ。


「なんと!?50人はいた者達に治癒魔法を掛けたのか!?なんという魔法力じゃ!?」

「流石は虐殺姫の従者……」


クルスも小さい時からお母様に魔法を習っていたからね。


「ありがとう!クルス、助かったわ!」


私は回復魔法が苦手なのよねー!


あっ!そこの君!やっぱりって思ったでしょう?良いのよ!別に、相手をブッ飛ばせればね♪



グオォォォォォォオオオ!!!!!


一息落ち着いた時に、大きな叫び声が響いた。


「………煩いわね。何なのかしら?」

「これは!まさか!?」


慌てて族長は空を見上げた。そこには龍の亜種、ワイバーンが飛んでいた!


「何てタイミングで来るのじゃ!あやつは最近この辺りを荒らしているワイバーンです!空を自由に飛ぶあやつはには、ほとほと手を焼いておりました」


「ふーん………」


おかしいとは思っていたのよね。怪しい奴が来たと、いきなり50人もの武装した獣人達が出てきた訳がこれか……


ワイバーンは広場で横になっている獣人族に襲い掛かった!治療したとはいえ、完全回復している訳ではなく、動けない獣人を食べようというのだろう。


「いかん!!!!!」


族長が叫んだ!


ガッキーーーーン!!!!!


堅い金属にぶつかったような音がして、ワイバーンは弾け飛んだ。そしてホバーリングをするようにその場で羽ばたいて上昇した。


「いったい何が?」

「ああ、クルスが結界を張ったのよ」


従者の方を見ると、手を前に出し魔法を使っているクルスの姿があった。


「あの一瞬で結界魔法を!?」


獣人族は魔法は苦手だが、魔法には詠唱が必要だというのは常識である。ワイバーンの急降下の攻撃を跳ね返す程の強力な結界を瞬時に張れるクルスに驚いても無理はない。


「とはいえ、確かに空中を飛び回るのは面倒ね」

「ワイバーンは龍の種類でも飛行性にすぐれてなかなか弓矢も当たりません!」


ふむ………シオンはおもむろに地面にあった拳大の【石】を掴んだ。


「どうなさいました?その石が何か?」

「空をにいるカトンボを落とします!」


シオンは空中で旋回しているワイバーン目掛けて石を投げた。


「そんなもので弓矢すら弾くワイバーンの鱗にダメージなど!?」


族長の意見は最もであったが、シオンの石はワイバーンの翼に当たり貫通し、ワイバーンはそのまま堕ちてきた。


「「「はっ!???」」」


族長以外の獣人族もこの光景には唖然とした。


ドッゴーーーーン!!!!!


翼を傷付けられてワイバーンは地面に衝突したが、それほどダメージは追っていなかった。


グオォォォォォォオオオ!!!!


叫び声を放ち、怒りに心頭の様子である。


「お嬢様!ワイバーンにしては色が違います。おそらく歴戦の個体かワイバーンの亜種かと思われます!」


ワイバーンは基本的に黒っぽい色をしている。しかし、ごく稀に【進化】して強力な個体に変容する魔物がいた。通常よりも遥かに強い個体は倒すのが難しい。あの弱い魔物の代名詞でるゴブリンですら、【進化】してゴブリンキングなどになるとBランク冒険者やAランク冒険者レベルでないと対処出来なくなるのだ。


「いくら強いと言っても翼は柔らかいわね。まぁ、翼が柔軟性がないと飛べないものね」


ワイバーンはおもむろに口を開くと炎を吐いてきた。


「なっ!?ワイバーンが炎を吐くなんて!逃げて下さい!お嬢様!」


ワイバーンは吐いた炎はシオンに直撃した!しかし─


「まぁ、ワイバーンが炎を吐くなんて珍しいですが、こんなものね。はっ!」


シオンが気合いを入れると炎が弾け飛んだ。


「なっ!【闘気】で吹き飛ばした!?」


ワイバーンも驚いたのか動けなかった。


「では、トカゲ退治といきましょう。空の飛べないワイバーンがどれだけのものか見せてみなさい!」


ワイバーンは二本の足で地面を蹴りながら襲ってきた。意外と速い!

ワイバーンが鋭い口でシオンを噛み殺す所でシオンの拳が下から上にアッパーで決まった。


「ふふふっ、確かに堅いわね。これなら楽しめそうよ♪」


バキバキ!シュシュ!ボコボコ!


獣人族と戦った時より激しく殴り続ける!頭だけではなく、お腹や背中など大ジャンプをして余す所なく拳を叩き付けた。


ガタガタブルブル………


その場にいた獣人族の全てがシオンに恐怖し、絶対に逆らわないと決めた瞬間であった。


バターーーーン!!!!!


ワイバーンが倒れまでそう時間は掛からなかった。


グルルルル………


弱々しい声で鳴くワイバーンにトドメを刺そうとした時、ワイバーンは最後の力を振り絞りシオンに頭を下げた。服従したのである。流石のシオンも服従したものにトドメを刺す気もなく、クルスに治療を命じた。


「ちょうど、大樹海を廻る所だったし徒歩よりも空の方が楽よね♪良い乗り物が手に入ったわ!」


凶悪なワイバーンを素手でボコボコにして、あまつさえ乗り物扱いのシオンに、虐殺姫以上に【魔王】と言う言葉がふさわしいと思う獣人族だった。



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