美少年の庭

小波ここな

美少年の庭


 きみには素質がある

 おもうままの金貨を述べたまえ

 ようこそ


 美少年の庭へ


 美少年の庭の管理人ミカエルが

 新人のロミオを館に招待した。


 ロミオは貧しい家庭から追い出された幼い男の子だった。

 美少年の庭という男子だけを支援する館を知り、たずねたところ

 即日採用された。



 美少年の庭の仕事は単純作業で、金貨で衣装を購入し、戦士や魔法使いの傍らに立ち、応援するだけだった。


 ロミオの先輩にあたるノエルから様々な店や、商売に繋がる人脈を紹介されながら、ロミオは美少年の庭で頭角を表していった。


 ノエル

 おめでとう

 今日からはおまえは

 アイアンクラス(鉄クズ)だ

 金貨の枚数は1000枚から

 5枚とする。


 ミカエルがノエルに冷たく告げた。

 美少年の庭は16歳で卒業となる。

 13歳がゴールドクラス。

 14歳がプラチナクラス。

 15歳がアイアンクラス。

 16歳で荒野に放逐される。

 放逐。つまり捨てられてしまう。


 ノエルはミカエルのもとを離れ、美少年の庭の仕組みが分からないロミオから祝辞を告げられたので、無視して通り過ぎた。


 ロミオはノエルが冷たくなっていくのを感じ悩みながらも、1歳年をとり..



 ミカエルからプラチナクラスへの昇格祝いを告げられた。

 金貨10枚から金貨1000枚に。


 ロミオは喜びのあまり、ミカエルを抱きしめた。

 ミカエルはロミオに


『 永遠の僕の花の妖精 』

 耳もとに甘く囁いた。


 これを見たノエルがミカエルに歩み寄り怒鳴りつけたため、ロミオはノエルに対して激しく怒鳴った。


 ミカエルはノエルに対して仕事の成果を聞き、不完全なところがあるとして、金貨を減額した。



 ロミオに複数の後輩が出来て、金貨を湯水の様に使いながら1年が経過し



 ロミオ。

 アイアンクラスへの昇格

 おめでとう。

 今日からおまえは金貨5枚だ。



 ロミオは様々な店舗に借金があり、顔の知名度だけで店主が貸してくれていた。

 更に、今回の支払いが金貨5枚では全く足らない。

 普段優しいミカエルに金貨を貸してくれと頼んだら



 お前は年寄りだ。

 何の値打ちもない。

 しかし..唯一方法は..ある

 ロミオ...


 にやにや笑うミカエルの顔が醜く歪み、初めて騙されたことをロミオは知った。


 ミカエルが指差した場所に

 

【 美少年の彫像があった 】


 ロミオ。

 石化の魔法で永遠の美少年になるといい。

 16歳になるまで金貨を好きなだけ使えばいいから。

 【 可愛い僕だけの花の妖精ちゃん..いつまでも可愛がってあげるから.. 】



 ロミオは外へ飛び出した!

 人混みをかき分け

 あっちへこっちへ


 どの人にも金貨の支払いがあり、逃げる様に...王宮の近くにたどり着いた。


 極めて美しい少年を見つけた騎士団長が、従者を伴い、ロミオの側に来た。


 ロミオが仕事を求めたところ、騎士団長は思案したあとロミオを待たせて


 日が落ちる頃に、兵士から来いと命令されて、調理場に連れて行かれた。


 調理場には背が高いがっしりした黒い肌の男がいた。


 ロミオは調理補助として、朝から晩まで休みなく働かされ、給金は町の民の借金に当てられた。


 

 ある日、大臣が調理場に来た。

 大臣はロミオを見て、こいつは悪魔ではないかと調理場のコックに追い出せと命じた。


 ロミオは馬に引きずられて、荒野に投げ出された。


 

 数年たち


 ロミオは盗賊団の靴磨きをして暮らしていた。

 警笛が鳴り響き、騎士団による、盗賊狩りを知った盗賊団はあわてふためき逃げ出した。


 逃げ遅れたロミオは騎士団長に捕縛され、極刑命令が出された。


 しかし一羽の鳥が翔ぶのを見たロミオが顎先を上げたとき


 騎士団長が捕えた盗賊がロミオだと気づいた。

 極刑命令が停止されロミオは騎士団長が保護し、自身の屋敷にかくまった。


 騎士団長がロミオの休憩が終わる頃に、ひとつ提案をした。



 『 やはり 大臣が国を破滅させようとしています 』


 ロミオは密偵として動き、騎士団長に説明しながら


 ある日のこと


 汗がしたたり落ちる騎士団長の軍靴にロミオの顔が踏まれていた。



 大臣は反逆者の騎士団長を赦す代わりに、ロミオをなぶり続ける様に命じた。


 騎士団が数をかぞえる度に

 騎士団長はロミオを踏みつける。



 そして、ロミオが呻き声も出せなくなったとき

 彼は現れた


 彼は刑罰場に踏み込み

 大臣の命令で襲いかかる騎士団を拳で打ち、剣を奪い、切り捨てて


 騎士団長に詰め寄った。


 騎士団長が助かったと彼の手を取ろうとすると


【 卑怯者は消す 】


 騎士団長は剣の柄で打ち据えられて絶命した。


 大臣は調理場のコックの腕前を知り、部下にしてやると言った。


 ロミオを肩に背負いコックは立ち去った。


 しかし大臣は捨て置かず


 正体を現した。


 【 悪魔の姿に 】


 その姿はまさしくミカエルだった。


 ミカエルはコックにロミオを渡せば命を救けてやると告げた。


 コックは拒否し..心臓を

 伸びたミカエルの腕で貫かれた。



 コックは絶命し

 ミカエルが笑いながらロミオに近づいた。


 『 ロミオ..にょいほーい 』


 何かがロミオに語りかけた..


 彼はちからを得て、ボロボロの姿のまま、ミカエルに向き合った。


 ミカエルがロミオを捕まえようとした時


 『 さようなら。 お父さん 』


 涙するロミオを見たミカエルの手が止まり


 その姿は崩れて消えて行った。


 ロミオは涙をながし続けた。

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