mc2020.11.19 フェアリー族の少女が来店

 今日は、とても珍しいお客様が来てくれた。

 フェアリー族―――いわゆる妖精族の女の子だ。

 透明な羽根に光の粉を振りまく彼女は俺の手のひらに乗るくらい小さくて、見たまんま人形のように美しい少女の妖精だった。


 朝早くお店のドアをノックされたので出てみれば、小柄で可愛らしいお客様に驚いた。

 どうやら魔界側に伸びる林道の先には、魔力が溢れる生命の泉?のようなものがあって、その近くに妖精族の村があるのだとか。

 彼女をお店に招き入れると、光を撒き散らしながら店内を飛び回り、楽しそうにして、あれは何?これは何?と質問をぶつけてきたので一つ一つ丁寧に答えてあげた。

 魔力が濃い場所ではないと生きていけない妖精族は、魔界グリモワールからそう遠くない場所までしか移動が出来ないようで、彼女も遠出もしたことがなく、人間界の品物のみならず魔界で仕入れた品物にも興味をもっていた。


 ついでに、お決まりの自慢のコーヒーも出したけど、苦くて飲めないと目をバッテンにされてしまった……。

 だから砂糖とクリームをたっぷり入れたあげると、美味しいと言って飲んでくれた!

 これは重点メモだ。

 個体差にもよるかもだけど、今度、妖精が来たら甘い飲み物を差し出そうと思う。


 その後、一通り商品を見終わった彼女は、ほどなくして店から出て行ったが……今日は売上げはなかったね、うん。

 なんだろう、やっぱりこの場所にお店を出したのは失敗だった気が。


 ぐぬぬ、開店一か月目で閉店の未来が見えてきた……震える。


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