とある作品の下書き

Noacht

第1部 異世界の月

序章

天上の蒼い星

 少年は、眼前の『蒼く輝く星』に、ただただ心を奪われていた。

 直前まで消滅の危機にあった少年だ。

 だが今は、そんなことは些事と言わんばかりに、空を食い入るように見つめていた。 

 地平線の彼方まで続く、見渡す限りの白磁の荒野。

 雲ひとつない深蒼しんそうの空には、無数の星々が絶え間なくまたたく。

 一際大きく輝く天体は、光条を走らせ日暈ひがさをまとっている。

 しかし、少年の意識はそこにはない。

 蒼い宝石のように見える星が、心を掴んで離さないのだ。

 外周部を陽光が覆い、新たに生まれ変わろうとしているかのような煌めき。

 神秘の誕生に立ち会うかのような、得も言われぬ高揚感。

 人類史上、いまだ一握りの存在しか成しえていない快挙。

 まさに、『月面から地球と太陽を見ている』ような視点だった。

 隣に立つ白衣の男性が微笑みを浮かべ、何事かを語りかけている。

 しかし少年はそちらに意識を向けることなく、ただ一重に蒼い星を眺めているのだった。

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